自動車大手が電気自動車(EV)戦略を相次いで見直している。世界的な市場の伸び悩みに加え、トランプ米政権の環境規制の見直しや支援策の廃止により、米国市場での販売が見通せないためだ。当面はハイブリッド車(HV)に注力する構えだが、将来的にEV市場は拡大するとみられ、難しい投資判断を迫られている。(奈良橋大輔) 「EV市場がスローダウンしている。本格的なEV投資の時期を遅らせることが適当だ」。SUBARU(スバル)の大崎篤社長は10日の決算記者会見で、2030年までに1.5兆円を計画していた電動化投資の見直しを表明した。投資先を決めた3000億円を除き、1.2兆円はHVやガソリン車にも振り向け、28年までに開発予定だったEV4車種の投入も遅らせる。 他社もEV戦略の修正を急いでおり、ホンダは計10兆円を計画していた関連投資を7兆円に減額。日産自動車は28年に予定していた新型EV生産を延期する。 世界的にEV販売は、充電施設の整備の遅れなどから低迷している。米国では環境対策に消極的なトランプ大統領の登場で、その傾向に拍車がかかっている。 トランプ政権は9月、最大7500ドル(約120万円)のEV向け税制支援策を廃止した。米調査会社コックス・オートモーティブの推計では、米国内の10月のEV販売は前年同月比30%減となり、駆け込み需要があった9月から半減した。 米国でEVが最も売れるカリフォルニア州は、35年までにガソリン車の販売を禁止する規制を導入していたが、トランプ氏は6月、規制を無効にする連邦議会決議に署名した。 各社は同州の規制に照準を合わせて開発を進めてきたため、大手幹部は「稼ぎの少ないEVを無理に作る必要もなくなった」と話す。…