市場規模と成長予測 日本のアクティブウェア市場は、2025年時点で218億3,000万米ドル規模に達しており、2026年から2035年の予測期間には年平均成長率(CAGR)約6.70%で拡大し、2035年には417億5,000万米ドルに達すると見込まれています。 市場成長を支える主要因 市場成長の主な要因としては、健康志向の高まり、アスレジャーの一般化、都市部を中心としたスポーツ参加の増加、旗艦店やオムニチャネル型小売の拡大、女性向け市場の成長、サステナブル素材の採用、機能性ウェアの技術革新などが挙げられます。特に、スポーツウェアをジムや競技場だけでなく日常着として着用する消費行動が広がり、アクティブウェア市場の対象層が従来のスポーツ愛好家から幅広い一般消費者へと拡大しています。 日本では、健康、運動、ファッションという複数のトレンドが重なり合うことで市場が成長しています。消費者は、トレーニング時だけでなく、通勤、買い物、旅行、日常の外出などにも着用できる衣料を求めるようになっており、機能性とファッション性を兼ね備えたアスレジャーの需要が拡大しています。 ASICS、Mizuno、Goldwinといった日本のブランドに加え、Nike、Adidas、PUMAなどのグローバルブランドも日本向けの商品設計やマーケティングを強化しており、国内外ブランドの競争が市場全体の活性化につながっています。若年層やミレニアル世代が積極的な購買層となる一方、高齢者層でも快適性や動きやすさを重視した機能性ウェアの需要が高まっています。 都市部では、スポーツウェアを日常のカジュアルファッションとして取り入れる傾向が特に強く見られます。東京、大阪、名古屋などの大都市圏では、ランニング、ヨガ、ピラティス、ジム通い、アウトドア活動などへの参加者が増加しており、スポーツブランドがファッションブランドに近い役割を担うようになっています。2024年10月にはユニクロが東京・新宿にグローバル旗艦店を開業し、パフォーマンス志向のライフスタイル衣料を幅広く展開した事例も報告されています。このような大型小売投資は、スポーツと日常着の境界が曖昧になっていることを象徴していると言えるでしょう。 市場の課題とサステナビリティへの移行 一方で、2026年初頭には原油価格や物流コストの上昇がアクティブウェア市場に大きなコスト圧力を与えているとされています。アクティブウェアにはポリエステル、ナイロン、スパンデックスなど石油化学由来の素材が多く使用されるため、原油価格上昇は原材料費へ直接波及しやすい傾向です。特に2026年初頭の国際情勢悪化により、ブレント原油価格が1バレル120米ドルを超える水準まで上昇したことで、合成繊維の生産コストが増大したとされています。日本は原油の大半を中東に依存しており、海上輸送の混乱も影響を及ぼしています。 原材料価格上昇は、結果としてサステナブル素材への移行を促す要因にもなっています。再生ポリエステル、バイオベース繊維、海洋プラスチック由来素材などは、従来は環境対応が中心でしたが、石油由来のバージン原料が高騰するなかではコスト安定化の手段としても注目されるようになっています。日本のブランドにとって、持続可能な素材への切り替えはブランドイメージ向上だけでなく、地政学リスクや原料価格変動に対する供給網の強靱化にもつながります。 サステナビリティと倫理的調達は、今後のブランド差別化において重要な要素となっています。2025年6月にはMizunoがスポーツシューズで使用してきたカンガルー皮革を段階的に廃止する方針を示し、AdidasやASICSも同様の取り組みを進めたと報告されています。今後は再生繊維、バイオベースフォーム、海洋プラスチック由来繊維などの採用がさらに拡大するとみられています。 エンドユーザー別の市場動向 エンドユーザー別では、男性、女性、子どもに分類されます。このうち女性向けが市場全体で最大の収益カテゴリーとなっており、2025年時点で50%を超えるシェアを占めるとされています。また、2026年から2035年のCAGRは7.6%と、3つの主要カテゴリーの中で最も高い成長が見込まれています。 女性向け市場が急拡大している背景には、ヨガ、ピラティス、フィットネスジム、レクリエーションランニングなどに参加する女性が増加していることがあります。従来のスポーツウェアは競技機能を中心に設計されていましたが、現在ではサイズの多様性、身体に合ったフィット感、ファッション性、着心地、日常での使いやすさなどが重視される傾向です。2025年9月にはNikeとSKIMSが「NikeSKIMS」ブランドを共同展開し、日本もグローバル展開対象地域に含まれています。 男性向けでは、ランニング、トレーニング、駅伝、野球、サッカーなどのスポーツ用途を中心に安定した需要があります。特に日本では駅伝やマラソン文化が根強いため、ランニングシューズ、ランニングウェア、コンプレッションウェアなどの高機能製品が重要な市場を形成しています。 子ども向け市場では、耐久性、環境配慮、安全性、動きやすさなどが重視されます。学校体育、野球、サッカー、陸上などへの参加が需要を支えており、保護者が長期間使用できる品質の高い製品や、再生素材を利用した環境配慮型商品を選ぶ傾向が強まっています。 流通チャネルの進化 流通チャネル別では、オンラインとオフラインに分類されます。現時点ではオフライン店舗が大きな売上シェアを維持していますが、オンラインは2026年から2035年にCAGR 9.6%で成長すると予測され、市場全体の6.7%を大きく上回る伸びが期待されています。 オンライン成長を支えるのは、ブランド直販のDTCサイト、ZOZOTOWN、楽天などのECプラットフォーム、さらにNike SNKRSやAdidas CONFIRMEDのようなアプリを利用した限定販売です。一方、オフライン店舗も単なる販売場所ではなく、ブランド体験を提供する拠点として進化しています。東京の銀座、原宿、渋谷などにはNike、Adidas、On、PUMAなどの旗艦店が集中しており、店舗内でランニングイベント、商品試着、コミュニティプログラムなどを展開しています。 2025年9月には、スイスのスポーツブランドOnが銀座並木通りに「On Flagship Store Tokyo Ginza」を開設しました。同店は世界で2番目に大きいOnの旗艦店で、隣接する「On Labs Tokyo」ではロボットを活用したシューズ製造技術「LightSpray」の展示も行われています。このような店舗とオンラインを組み合わせるオムニチャネル戦略が、日本市場では特に重要になっています。 商品開発とアスレジャー市場の拡大 商品開発では、ランニングを中心としたパフォーマンステクノロジーが引き続き重要です。2025年に東京で開催された世界陸上を契機として、各ブランドが日本向けの高性能商品を相次いで投入しました。ASICSは2025年8月に新開発のミッドソールフォームを採用した「TOKYO Collection」を発表し、2026年1月にはPureGEL技術やFF BLAST PLUSクッションを採用し、軽量化を実現した「GEL-NIMBUS 28」を発表しています。日本市場は、世界的スポーツブランドが新技術や新製品を披露する重要なショーケースとして位置付けられていると言えるでしょう。 アスレジャー市場では、スポーツ以外の文化とのコラボレーションも成長を支えています。ブランドは音楽、ファッション、ストリートカルチャー、ライフスタイルブランドと連携し、アクティブウェアを競技用衣料ではなく日常的なカルチャーアイテムとして位置付けています。2025年9月にはAdidas OriginalsがOasis LIVE ’25 Collectionを日本で発売し、日本限定スニーカーなどを展開した事例が報告されています。 地域別の市場動向 地域別では、関東、関西・近畿、中部・東海、東北、九州・沖縄、北海道、中国、四国に分類されます。このうち関東、特に東京圏が日本のアクティブウェア市場を牽引する最大の地域です。東京には旗艦店が集中し、ランニング文化、企業のウェルネスプログラム、ジム利用、ヨガなどの参加率も高い傾向です。 関西は関東に次ぐ重要市場であり、大阪、京都、神戸を中心に強いスポーツ文化と産業基盤を持っています。神戸にはASICS、大阪にはMizunoが本拠を置いており、日本の代表的なスポーツブランドの研究開発、生産、販売拠点が集まっています。中部ではGoldwinの富山Tech Labなどの実験的ブランド開発が市場の注目度を高めています。北海道、東北、九州などではアウトドアレジャー、マラソン、高齢者の健康維持需要などを背景に成長余地があると考えられます。 競争環境と主要企業の戦略 競争環境では、Nike、Adidas、PUMAなどのグローバル大手と、ASICS、Mizuno、Goldwinなどの日本企業が激しく競争しています。市場は上位ブランドへの集中度が比較的高いものの、中小国内ブランドやライフスタイルブランドも一定の存在感を持っています。 各社の戦略には共通点があり、東京の高級商業エリアへの旗艦店出店、DTC・オムニチャネル強化、新素材や独自フォームを用いた高頻度の商品刷新、音楽・ファッションとのコラボレーション、限定商品の投入などが中心となっています。加えて、サステナビリティや倫理的調達は、もはや差別化要因というよりも市場参入に不可欠な条件になりつつあります。日本の文化や駅伝、東京の都市イメージ、日本のものづくりなどを商品ストーリーへ組み込む動きも増えています。 主要企業には、Adidas AG、Nike Inc.、PUMA SE、ASICS Corp.、VF Corp.、Mizuno Corporation、Goldwin Inc.などが挙げられます。各社はそれぞれ独自の技術やマーケティング戦略を展開し、日本市場での存在感を高めています。 まとめ 日本のアクティブウェア市場は、従来の競技用スポーツウェア市場から、健康、日常着、ファッション、ウェルネス、アウトドアを包含する広範なライフスタイル市場へと拡大しています。特に女性向けカテゴリーはCAGR 7.6%、オンライン販売は9.6%と市場全体の成長率を上回っており、2035年に向けた主要な成長領域になると考えられます。 今後は、原材料・物流コストの上昇という課題を抱えながらも、再生素材、バイオベース素材、機能性繊維、軽量化技術などへの投資が進み、市場の高付加価値化が進むとみられます。また、オンラインと実店舗を連携したオムニチャネル、限定ドロップ、コミュニティ型イベント、スポーツ大会との連携、音楽・ファッションとのコラボレーションなど、販売・マーケティング手法の高度化も重要になるでしょう。日本のアクティブウェア市場は、健康志向とファッション文化を取り込んだ総合的なライフスタイル市場として、2026年から2035年にかけて着実な成長を続けると見込まれています。 本調査レポートに関する詳細情報は、株式会社マーケットリサーチセンターのウェブサイトにてご確認いただけます。…