アメリカの寿司店の定番、カリフォルニアロール。巻かれている赤と白の「カニ」は、たいていスケトウダラなどの魚のすり身から作ったカニカマです。海外の掲示板で「カニカマの原料を獲る網で、本物のカニが死んでいる」という豆知識が話題になりました。カニの代わりに作った食べ物のせいで、本物のカニが犠牲になっているのなら皮肉な話です。ただ、カニカマはそもそも1970年代の日本で生まれた食べ物で、生まれた理由はカニを守るためではありませんでした。発明の経緯と、網と本物のカニの関係が実際どの程度なのかを、日本の製造元と米国の資料で確かめました。 今日の知ってた? 🦀 カリフォルニアロールのカニカマの主な原料はスケトウダラのすり身。米国のスケトウダラはトロール網(船で引く大きな網)で獲られ、その網が海底に触れたときに本物のカニを傷つけて死なせているのではないかと、アラスカのカニ漁業者が訴えている。一方でカニカマ自体は、1972年に石川県七尾市のスギヨが「かにあし」として発売した日本生まれの食べ物。人工のクラゲを作ろうとして失敗したのが始まりだった。 背景:カニカマは能登の「失敗作」から生まれた カニカマを世界で初めて売り出したとしているのは、石川県七尾市の水産練り製品メーカー、スギヨです。同社の創業は1640年とされ、江戸時代の終わりには能登の七尾で網元として「杉與(すぎよ)」の名を使っていました。ちくわを作り始めたのは1907年です。 同社の記念サイトによると、1972年、能登の小さな開発部屋でカニカマの元になる発見がありました。当時、専務の杉野芳人さん(のちの三代目社長)と開発課長の清田稔さんが取り組んでいたのは、カニではなく人工のクラゲでした。海藻に含まれるアルギン酸を使ってクラゲのような食べ物を作ろうとしたものの、最後の段階でどうしてもうまくいかない。その試行錯誤の途中で、できあがった失敗作の食感がカニの身に似ていることに気づいた、というのが同社の説明です。清田さんはすり身の研究と製造機械づくりを受け持ち、カニの脚の形にする機械は、漬物や和菓子を作る機械を手直しして作ったといいます。 こうして1972年、スギヨは「アルギン酸などを使った世界初のかに風味かまぼこ」として「かにあし」を発売しました。同社はカニカマを「戦後の三大食品発明」の一つと位置づけています。売り出すときには、本物のカニと間違えられないよう、包装や宣伝の言葉にも気を配ったそうです。 ただし、「元祖」はスギヨだけではありません。いまスーパーでよく見かける棒状のカニカマは、広島県の大崎水産が1974年9月に売り出したのが最初とされます。日本語版ウィキペディアによると、最初の商品名は「かにスチック」でしたが、カニがほとんど入っていないことを公正取引委員会に指摘され、「フィッシュスチック」に改めました。スギヨは自社の「かにあし」を第一世代、大崎水産の棒状のものを第二世代と呼んでいて、どちらを始まりと見るかで説明が分かれます。どちらにしても、1970年代前半の日本で、北陸のズワイガニに似せた食べ物を作ろうとする動きが重なって生まれた、という点は共通しています。 その後の広がりは急でした。同じ資料によると、大崎水産のカニカマの売上は1976年に5億円、1978年に10億円、1982年には40億円に伸び、1983年には50社以上が作るようになっていました。輸出も同じ年に1万5,000トンを超えています。スギヨは1976年に初めてアメリカへ見本を輸出し、のちに米ワシントン州に工場を構えました。カリフォルニアロールの「カニ」は、こうして日本から渡った食べ物です。 もう少し詳しく 日本では「カニ」と名乗れない。カニカマは日本の品質表示の基準(JAS)で「風味かまぼこ」または「風味かまぼこ(かに風味)」と表示することになっていて、商品名に「かにかま」とあっても分類はかまぼこです。主な原料はスケトウダラのすり身で、凍らせて解かし、また凍らせることでカニの脚のような繊維ができるといいます。外側の赤は紅こうじなどの色素で、カニらしい香りや味は香料やカニのエキスで付けています。ですから「カニカマにカニは入っていない」は身については正しく、風味づけにカニのエキスを使う商品はある、というのが正確なところです。 スケトウダラはアメリカでも指折りの大きな漁業。米海洋大気庁(NOAA)の水産部門によると、2024年にベーリング海とアラスカ湾で水揚げされたスケトウダラは30億ポンド(約136万トン)を超え、金額は約4億3,200万ドルでした。製品のおよそ4分の1がすり身(カニカマ用)、半分近くが切り身、約5分の1が魚卵です。日本でいう「たらこ」もスケトウダラの卵です。資源の状態について、NOAAは主な海域で「獲りすぎではない」と評価しています。 「網がカニを殺す」はどこまで本当か。スケトウダラ漁で使うのは、海底を引きずる底引き網ではなく、円すい形の大きな網を海の中層で引く「中層トロール」です。NOAAは、この網はときどき海底に触れるものの海底の環境への影響は小さいとし、スケトウダラ以外の魚などが網に入る割合(混獲)は全体の1%未満だとしています。NOAAが混獲の問題として主に挙げているのはサケで、カニについての記述はありません。つまり、網に入ったカニが大量に船に揚がる、という話ではありません。問題にされているのは、網が海底に触れたときに、網に入らないまま押しつぶされたり傷ついたりして死ぬカニです。これは船の上で数えられないので「見えない死」と呼ばれます。 アラスカで続く、カニ漁業者とスケトウダラ漁の対立。アラスカの公共放送KUCBによると、ベーリング海のブリストル湾には、タラバガニ(レッドキングクラブ)を守るため1996年に設けられた約4,000平方海里の保護区があり、底引き網は禁止されていますが、中層トロールは認められています。ブリストル湾のレッドキングクラブ漁は2021年から2年続けて中止になり、ズワイガニ漁も2022年に初めて中止されました。2022〜23年の漁の中止による直接の損失は、州の推計で約2億9,000万ドルにのぼります。カニ漁業者の団体は、中層トロールの海底への影響は底引き網と変わらないと主張して保護区の閉鎖を求めました。一方、漁業を管理する北太平洋漁業管理評議会は2024年2月、「影響の大きさは今のところ測れない」として全面閉鎖を見送り、網の改良やカニを避ける仕組みの検討を進めることにしました。網がカニを死なせることがあるのは確かですが、その数がどれほどで、カニの激減にどこまで関わっているのかは、まだ分かっていないというのが現状です。 海外の反応 1. 海外の名無しさん これでも氷山の一角だよ。遠洋の漁業の世界では、表に出ない理不尽がいくらでも起きてる。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) イアン・アービナの『アウトロー・オーシャン』を読むといい。魚の扱いの話から、船員がどれだけひどい目にあってるかまでつながってる。動物の問題と人の問題は地続きなんだって分かる。 ※注:『アウトロー・オーシャン』は、米国のジャーナリスト、イアン・アービナが公海での違法操業や船員の強制労働を取材したノンフィクション。 3. 海外の名無しさん(>>2への返信) 大きな遠洋船団を持ってる国はどこもそれなりに問題を抱えてる。特定の国だけの話にすると、自分の国の船を見なくて済むから気をつけたほうがいい。 4. 海外の名無しさん(>>1への返信) 大学の友だちが釣り好きで、一日中釣りができる仕事に就きたくて海洋保全を専攻したんだ。最初の仕事は漁船に乗って混獲を測る監視員。2年ぶりに会ったらすっかりしょげてて、「魚より網に入るゴミのほうが多い。考えつく限りの生き物が死んでる」とだけ言ってた。 5. 海外の名無しさん(>>1への返信) どこかで読んだんだけど、もし国立公園の上を巨大な飛行機が飛んで、魚を獲るのと同じやり方で鹿や熊をまとめてすくい上げてたら、みんな卒倒するだろうって。 6. 海外の名無しさん(>>5への返信) ぞっとする例えだな。工場式の畜産も相当なものだけど、こっちは野生の魚の話だから、また別の重さがある。 7. 海外の名無しさん カニカマを使うのは単純にカニより安いからで、カニを守るためとかは一切関係ないと思う。 8. 海外の名無しさん(>>7への返信) そりゃそうだ。罠を一つずつ仕掛けて引き上げるより、網で海底をさらって全部持っていくほうが人手がかからない。海底の環境をまるごと壊しながらだけどね。底引き網は本当に嫌い。 9. 海外の名無しさん(>>8への返信) ただ、スケトウダラの網は海底を引きずる底引き網じゃなくて、海の中ほどを引く中層トロールなんだよね。問題は、その「中層」の網がどれくらい海底に触れてるか。アラスカのカニ漁師はそこを怒ってる。 10. 海外の名無しさん(>>7への返信) しかもカニカマの多くは、風味づけに本物のカニのエキスがちょっと入ってたりする。カニの代わりですらない場合があるっていう。 11. 海外の名無しさん トロール網って、要は『ザ・シンプソンズ』でバーンズ社長が使ってた「何でも獲れる網」でしょ? ※注:アメリカのアニメ『ザ・シンプソンズ』で、強欲な社長バーンズが海の生き物を根こそぎすくい上げる巨大な網を使う回がある。 12. 海外の名無しさん(>>11への返信) それ!ちょうど3日前にその回を見たばっかりで笑った。子ども向けのギャグだと思ってたのに、現実のほうが寄せてきてる。 13. 海外の名無しさん カニカマって魚介界のホットドッグだよな。作ってるところは見ないほうがいい。 14. 海外の名無しさん(>>13への返信) いや、スケトウダラのすり身をパスタみたいに押し出して形を作ってるだけだよ。ビーチボールくらいのミートローフは平気で作るのに、鶏や魚がペースト状になった瞬間にみんな青ざめるの、ほんと不思議。 15. 海外の名無しさん(>>14への返信) 日本の工場見学の動画を見たことあるけど、すり身を薄いシートにして筋を入れて巻いて、外側を赤くするだけ。むしろよく考えた食べ物だと思った。もとは日本のかまぼこの一種なんだよね。 16. 海外の名無しさん カニの代わりに作った食べ物の原料を獲るために、本物のカニが死んでるって、皮肉としては出来すぎてる。 17. 海外の名無しさん(>>16への返信) でも網に入ったカニがどっさり揚がるわけじゃないらしいよ。スケトウダラ漁の混獲は全体の1%未満で、一番問題になってるのはサケのほう。カニの場合は、網が海底をこすったときに潰されて、誰にも数えられずに死ぬってところが争点みたい。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) 数えられないから問題なんだよな。「少ない」とも「多い」とも言えない。アラスカのカニ漁が何年も止まってる中で、漁師が網を疑うのは無理もないと思う。 19. 海外の名無しさん トロール網、発明したやつ誰だよ。ほんと許せん。 20. 海外の名無しさん(>>19への返信) 古代のギリシャやエジプトからやってる罠漁に戻せばいいのに。狙った魚の群れを罠に追い込めば、大漁でもほかの生き物はずっと少なく済む。深いところでもある程度はできるやり方なんだ。ただ、儲からないんだよね。 21. 海外の名無しさん(>>20への返信) それしか選べない決まりになれば儲かるよ。結局、買う側が高い魚を受け入れられるかどうか。 22. 海外の名無しさん(>>21への返信) 魚は何でも好きだから、こういう話を聞くと本当にへこむ。皿の上の魚がそういう獲り方をされてないって保証してくれるなら、倍の値段でも喜んで払う。 23. 海外の名無しさん 海に置き去りにされた「幽霊網」はいろんな漁具から出るけど、トロール網もかなりの割合を占めてる。獲るときだけじゃなく、捨てられてからも生き物を殺し続けるのがきつい。 24. 海外の名無しさん(>>23への返信) 細かいことを言うと、置き去りになって漁を続けるのはトロール網より刺し網や罠のほう。トロール網は船に引かれてないと沈むだけだけど、刺し網は浮きが付いてるから、人がいなくても勝手に魚を獲り続ける。 25. 海外の名無しさん カニカマが日本生まれで、しかも人工クラゲの失敗作から生まれたって初めて知った。失敗から世界中の寿司に入る食べ物ができたんだから、発明ってそういうものなんだろうな。 まとめ カニカマは1972年に能登のスギヨが人工クラゲの失敗から生み出し、1974年には広島の大崎水産が棒状のものを売り出した日本生まれの食べ物です。原料のスケトウダラを獲る網が本物のカニを死なせているという話は、網に入るカニの数ではなく、海底に触れたときの「数えられない死」をめぐる争いで、影響の大きさはまだ測れていません。コメント欄は漁業全体への怒りと、「実際はどの程度なのか」と冷静に確かめる声が入り混じり、最後は高くても獲り方の分かる魚を買いたいという声に落ち着きました。 参考資料 スギヨ「スギヨの歴史」(日本語) ウィキペディア日本語版「カニカマ」(日本語) 米海洋大気庁(NOAA)水産部門「スケトウダラ」(英語) KUCB(アラスカの公共放送)「地域の評議会、ブリストル湾のレッドキングクラブ保護区の規制強化を見送り」(2024年・英語) 元ソース: カリフォルニアロールのカニカマはスケトウダラ製が多い。そのスケトウダラを獲るトロール網は、カニカマが真似しているはずの本物のカニまで捕まえて死なせている 投稿 「カニカマの原料を獲る網で、本物のカニが死んでいる」日本生まれのカニカマの意外な皮肉、どこまで本当なのか は みんな知ってた?【海外の反応】 に最初に表示されました。…