1980年5月18日、アメリカ北西部ワシントン州のセントヘレンズ山が大噴火しました。北のふもとにあるスピリット湖には、そのとき山の斜面からはぎ取られた何千本もの木が流れ込み、46年たった今も丸太になって浮いています。NASAによると、2021年の時点でも丸太は湖面の約2割を覆い、風に吹かれて湖の端から端へ行き来しているそうです。海外の掲示板では、タイトルが途中で切れていることへのツッコミから始まり、噴火前の湖を知る人の思い出話や、「なぜ丸太が沈まないのか」という疑問まで集まりました。 ※注:元の投稿のタイトルは、なぜか「Mount St.」(セントヘレンズ山の英語名「Mount St. Helens」の途中)で切れていました。「St.」は「Street(通り)」の略にも使われるため、コメント欄の前半は「マウント通り」のネタが続きます。 今日の知ってた? 🌋 1980年5月18日、米ワシントン州のセントヘレンズ山が噴火。山の北側の斜面が崩れ落ち、記録に残る中で最大の地すべりが起きた。 🪵 ふもとのスピリット湖には、山の斜面からはぎ取られた何千本もの木が入り、噴火直後は湖面の7割以上を丸太が覆った。 🛶 2021年の時点でも湖面の約2割に丸太が浮いている。風向きが変わると、30分から1時間で湖を横切る速さで動く。 🔬 丸太はただの残骸ではない。こすれ合って炭素や窒素を湖に溶かし出し、表面に付いた藻や細菌が空気中の窒素を取り込んで、ニジマスまで続く食物連鎖を支えているとみられている。 背景:スピリット湖とセントヘレンズ山の噴火 セントヘレンズ山は、アメリカ西海岸の北部を南北に走るカスケード山脈の火山です。スピリット湖はその北のふもとにある山あいの湖で、全米アカデミーズ(米国の科学・工学・医学のアカデミー)の2018年の報告書によると、噴火前の面積は約5平方キロメートルでした。湖畔にはロッジが建ち並び、行楽地としてにぎわっていました。 1980年5月18日の朝、マグニチュード5.1の地震をきっかけに、山の北側の斜面が一気に崩れ落ちました。NASAの地球観測サイト「アース・オブザーバトリー」は、これを「記録に残る中で最大の地すべり」と書いています。続いて横向きの爆風と衝撃波が、山の北側一帯を襲いました。2010年の米ナショナル ジオグラフィック誌によると、壊された森は200平方マイル(約520平方キロメートル)を超え、57人が亡くなりました。その中には、湖畔でロッジを営んでいた83歳のハリー・トルーマン(同じ名前の大統領とは別人)も含まれています。 崩れた山の一部は、スピリット湖になだれ込みました。NASAによると、湖の水はいったん押しのけられ、やがて元の盆地に流れ戻りました。こうして湖には、山の斜面からはぎ取られた何千本もの木が浮かぶことになります。全米アカデミーズの報告書によれば、湖に流れ込んだ土砂は約4億3200万立方メートル(東京ドームおよそ350杯分)。湖底が埋まったぶん、湖面は約61メートルも高くなりました。ナショジオは、湖が「2倍の広さになり、深さは半分になった」と書いています。 水そのものも一変しました。同じナショジオの記事によると、噴火後の湖は酸素がなくなって悪臭を放つ「スープ」のようになり、水の透明度は約9メートルから約15センチにまで落ちました。水1ミリリットルあたり数億個もの細菌が増えていたといいます。湖面を埋めた丸太は、この酸素のない湖の上に浮かんでいたことになります。 もう少し詳しく 丸太の筏は、風に吹かれて湖を行き来する。NASAは2021年11月、地球観測衛星ランドサット8号が2018年の春から秋にかけて撮った5枚の画像で、丸太の動きを紹介しました。春から夏は、その土地でいちばんよく吹く向きの風に押されて湖の北端に寄り、秋になると南側へ移ります。1日の中でも形を変え、風がやむ夜には広がり、昼に風が強まると押し固められてひと塊になります。湖を研究しているワシントン大学タコマ校の環境工学者ジム・ガウェル氏は、「風向きが変わると、丸太は30分から1時間で湖を横切る。おかげで研究者がときどき閉じ込められる」と話しています。NASAによると、噴火の爆風が届いた範囲にあるセントヘレンズ湖、キャッスル湖、グリズリー湖にも、丸太がいくらか浮いています。 7割から2割へ。それでも丸太は湖に栄養を足している。ガウェル氏によると、噴火直後は湖面の7割以上を丸太が覆っていました。その多くはやがて沈み、木の残骸として湖底に積もっています。今も浮いているのは湖面の約2割で、この割合はここ数年なかなか変わっていません。NASAの記事は、丸太をただの残骸とは見ていません。風で丸太どうしが強くこすれ合うと、木から炭素や窒素が湖に溶け出し、木そのものも湖底の泥に有機物を足します。丸太の表面に付いた藻や細菌は空気中の窒素を取り込み、ほかの生き物が使える形に変えます。それがニジマスまで続く食物連鎖を支えているとみられていますが、影響の大きさはまだ調べている途中です。そのニジマスにも謎があります。ナショジオによると、今の湖のニジマスは噴火前の倍ほどの長さに育っています。近くのセントヘレンズ湖から洪水で流れてきたという説は、向こうの湖にはレイクトラウトしかいないことから疑問視されています。ワシントン州魚類野生生物局の生物学者ボブ・ルーカス氏は誰かが違法に放流したとみていて、1990年代の終わりには「魚を放したのは私だ」という匿名の電話もあったそうです。米森林局の生態学者チャーリー・クリサフリ氏の予備的な遺伝子調査では、噴火前にいた群れの子孫ではないらしい、という結果が出ています。 出口をふさがれ、人も遠ざけられた湖。噴火の土砂は、湖の水が川へ流れ出る出口もふさぎました。雨や雪どけ水がたまり続ければ、いつか土砂のせきを破りかねません。全米アカデミーズの報告書によると、湖をせき止めた土砂が崩れて下流に大きな洪水や泥流を起こしたことは、過去にもありました。先史時代の泥流では、今のキャッスルロックの町がある場所が数十メートルの深さで埋まっています。そこで1984〜85年、湖の西のハリーズ・リッジという尾根を貫いて、長さ2.6キロメートルの排水トンネルが掘られました。ただ、このトンネルも安泰ではありません。2014年には床が持ち上がって直径が約80センチ狭まり、2016年には10週間閉めて補修しています。一方、湖の周りは1982年に連邦議会が国定火山記念物に指定し、地質や生態系を「できるだけ自然のままに」保つことになりました。ナショジオによると、湖は研究のための立ち入り制限区域の真ん中にあり、一般の人はほとんど近づけません。 日本の磐梯山も、同じ型の噴火だった。1888(明治21)年7月15日、福島県の磐梯山が噴火し、小磐梯山の山頂を含む山の北側が崩れ落ちました。崩れた土砂は岩屑(がんせつ)なだれとなって北のふもとの村々をのみ込み、400人を超す犠牲者を出しています。内閣府の中央防災会議の専門調査会が2005年にまとめた報告書によると、このように山が崩れる噴火はセントヘレンズ山の1980年の噴火でも起きて注目され、それをきっかけに磐梯山の研究が大きく進みました。「岩屑なだれ」という言葉自体、セントヘレンズ山で確認されて名付けられた「デブリ・アバランシェ」の訳語です。規模は、堆積物の広さや量でみると、磐梯山がセントヘレンズ山の5分の1以下とされます。岩屑なだれが川をせき止めてできたのが、今の裏磐梯の桧原湖や五色沼などの湖沼群です。2004年には、京都大学の火山学者・鎌田浩毅教授(当時)が、宮内庁書陵部に残る写真帳から、木が一方向になぎ倒され、枝や葉がむしり取られた噴火直後の写真を見つけました。その中には、それまで暴風雨の被害と解釈されていた写真もありましたが、鎌田教授はセントヘレンズ山の噴火直後の様子とそっくりだったことから、噴火の爆風の跡だと判断しています。 海外の反応 1. 海外の名無しさん わざわざ記事を開かなくていいように教えておくよ。タイトルの続きは「ヘレンズ」だ。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) それにしても、この投稿、見事に“爆発”したな。噴火の話だけに、伸び方まで派手だ。 ※注:原文は「Well, this blew up.」。「blow up」には「爆発する」と「(投稿が)一気に話題になる」の両方の意味がある。 3. 海外の名無しさん(>>1への返信) 先週、飛行機でちょうど上を通ったけど、まだめちゃくちゃなままだったぞ。いつになったら直すんだ? 4. 海外の名無しさん(>>3への返信) 山を元に戻すってこと? 材料がだいぶ遠くまで飛び散っちゃったから、少し時間がかかるかもな。 5. 海外の名無しさん マウント通りが爆発したなんてニュース、まったく覚えてないな。ガス漏れか何か? 6. 海外の名無しさん(>>5への返信) いや、実はマウント通りの真下に火山が眠ってたんだよ。近所の人はみんな腰を抜かしてた。 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) それって1997年のトミー・リー・ジョーンズのドキュメンタリーのやつ? ※注:1997年の映画『ボルケーノ』のこと。ロサンゼルスの街なかで火山が噴火するパニック映画で、もちろんドキュメンタリーではない。 8. 海外の名無しさん(>>7への返信) いや、それは同じ1997年に出た“もうひとつのドキュメンタリー”のほうだろ。 ※注:同じ1997年に公開された火山映画『ダンテズ・ピーク』(ピアース・ブロスナン主演)のこと。 9. 海外の名無しさん 投稿者、「Mount St.」まで打ったところで力尽きたんだな。続きはあの世で打ってくれ。安らかに。 10. 海外の名無しさん 5歳くらいのころ、セントヘレンズ山とその周りの景色にすっかり心を奪われたのを覚えてる。1959年か60年に家族でキャンプしたんだ。大きな湖と、古いロッジ。今は全部なくなった。もうすぐ、あの景色を自分の目で覚えている人は誰もいなくなる。 11. 海外の名無しさん(>>10への返信) 噴火のあと、訪れる人がこんなに減ってるのは意外だった。自分は若いから噴火前の姿は知らないけど、近年大噴火した火山をあんなに間近で見られる場所はそうそうないし、本当にすごいところなのに。 12. 海外の名無しさん(>>11への返信) 山とスピリット湖のあたりは国定記念物になったから、リゾートも、気軽に泊まれるキャンプ場もないんだよ。 ※注:1982年に連邦議会が「セントヘレンズ山国定火山記念物」を設けた。国立公園ではなく、国有林を管理する米森林局が管理している。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) というより、生態系がどう回復していくかを研究するためだね。科学者がそれを一から記録できるなんてめったにない機会だから、記念物の中はなるべく手つかずにしてある。人間は行く先々で散らかすしな。 14. 海外の名無しさん(>>11への返信) 年配の人が覚えている景色は、もうどこにも無いんだ。昔の湖岸は丸ごと湖の底に沈んでる。ロッジも、スカウトのキャンプ場も、湖畔の別荘も、道路もない。日帰りで山歩きをしないなら、見に行くものが何もないんだよ。 15. 海外の名無しさん(>>11への返信) 行くのも楽じゃないしね。火口を正面に望むジョンストン・リッジ天文台への道は、2023年の地すべりで橋が壊れて通れなくなった。そのとき来ていた人は、車を2か月も取りに戻れなかったらしい。ほかの道も傷んでるところがあるし、コールドウォーター見学センターは予算削減で2007年に閉まったまま。中には店もないから、食べ物とガソリンは先に用意していくこと。それでも、噴火から40年以上たった今も噴火の跡がはっきり見える、行く価値のある場所だよ。 16. 海外の名無しさん 子どもの頃、90年代半ばと2000年代に行ったけど、二度の訪問のあいだに辺りがびっくりするほど緑になってた。見学センターや博物館、展望台がいくつもあって、景色も最高。エイプ・ケーブっていう大きな溶岩洞窟もあって、ガイド付きで中に入れるんだ。近くの森の小道沿いにも、小さな溶岩トンネルがあちこちにある。機会があったらぜひ行ってみて。 17. 海外の名無しさん 見たことあるよ! あれは本当にすごい。湖の端から端まで歩いて渡れそうに見えるんだ。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) 歩いて渡るのはやめといたほうがいい。豆知識だけど、丸太の筏はその時々の風向きで湖を動き回るし、動きが速いから、ボートで出ていて周りを丸太に囲まれ、閉じ込められた人もいるんだ。 19. 海外の名無しさん(>>18への返信) NASAの記事にも書いてあった。風向きが変わると、丸太は30分から1時間で湖の反対側まで流れていくらしい。研究者がときどき閉じ込められるんだって。湖の調査は丸太の機嫌しだいってわけだ。 20. 海外の名無しさん 40年以上たっても、丸太が水を吸って沈んでないのが面白い。普通はさっさと沈むか、腐ってなくなるかだと思ってた。英語には“ウォーターログド(水浸しの)”なんて言葉まであるのにな。 ※注:「waterlogged(水浸しの)」という英単語には「log(丸太)」が入っている。 21. 海外の名無しさん(>>20への返信) 浮いてる丸太は、ほぼ全部ダグラスファーなんだって。ヤニを多く出す木だから、そのおかげで水がしみ込みにくかったらしい。ヤニの少ないほかのモミの仲間は、何十年も前に水を吸って湖の底に沈んだそうだ。 ※注:樹種と浮き続ける理由はこのコメント主の説明で、今回確認した資料(NASAの記事など)には記述がなかった。 22. 海外の名無しさん(>>21への返信) 日本に住んでたときに知ったんだけど、ダグラスファーは日本だと「米松(ベイマツ)」って呼ばれて、家の梁なんかによく使われてる。丈夫な木なのは間違いないね。 23. 海外の名無しさん(>>20への返信) 丸太の長生きなら、オレゴン州のクレーター湖も負けてない。「湖の老人」って呼ばれてる丸太があって、縦向きのまま上の端だけ水面から出して、100年以上ぷかぷか浮いてる。風に流されて、湖に浮かぶ島のほうまで行ったりするんだ。 24. 海外の名無しさん(>>23への返信) ドキュメンタリーで見たけど、潜水艇で湖を調べたとき、ふらふら動く丸太がぶつかると危ないから、その老人を岸につないでおいたんだって。そしたら天気が荒れだして、放してやったらぴたりと収まったらしい。 ※注:クレーター湖の言い伝えとして語られる話で、天気との関係が確かめられたわけではない。 25. 海外の名無しさん 福島の裏磐梯に行ったことがある。きれいな湖や沼がたくさんあるんだけど、あれも1888年の磐梯山の噴火で山が崩れて、川がせき止められてできたものなんだって。スピリット湖と同じで、絶景の裏に大災害があるんだよな。 まとめ 1980年のセントヘレンズ山の噴火でスピリット湖に入った丸太は、噴火直後に湖面の7割以上を覆い、2021年の時点でも約2割が浮いたまま、風に吹かれて湖を行き来しています。多くは沈みましたが、浮いている丸太も沈んだ丸太も、湖に栄養を足す存在として研究が続いています。 コメント欄は「マウント通り」のネタで盛り上がったあと、噴火前の湖を覚えている人の思い出や、クレーター湖の「湖の老人」のような“長生きの丸太”の話へと広がっていきました。 参考資料 NASAアース・オブザーバトリー「スピリット湖に浮かぶ丸太」(2021年・英語) ナショナル ジオグラフィック「姿を変えた山」(2010年・英語) 全米アカデミーズ「セントヘレンズ山のスピリット湖・トゥートル川水系を管理するための意思決定の枠組み」第2章(2018年・英語) 中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門調査会「1888 磐梯山噴火 報告書」第1章 噴火現象の科学的解明(PDF)(2005年・日本語) 元ソース: ワシントン州のスピリット湖は、1980年のセントヘレンズ山の噴火で残された巨大な丸太の筏に、今も一部が覆われている 投稿 「昔の湖岸は丸ごと湖の底に沈んでる」セントヘレンズ山の噴火が残した丸太の湖…日本の磐梯山も同じ型の噴火だった は みんな知ってた?【海外の反応】 に最初に表示されました。…