クジラも哺乳類なので、赤ちゃんはお母さんのお乳を飲んで育ちます。ただし授乳の場所は海の中です。牛乳のようにさらさらした乳だったら、口に届く前に海水で薄まって流れてしまいそうですが、クジラの乳は「歯磨き粉くらい濃い」と言われます。海外の掲示板でこの話が1万3千を超える支持を集め、「ギリシャヨーグルトじゃん」「味は?」とコメント欄がにぎわいました。 今日の知ってた? 🐋 クジラの乳はほぼ半分が脂肪で、研究者の説明では「歯磨き粉くらい濃い」。そのため海の中で出しても、すぐには散らばらない 📊 脂肪の割合は種類で大きく違う。ヒゲクジラ類は授乳期の半ばで30〜50%、ハクジラ類(イルカなど)は10〜30%。ヒトの母乳の脂肪は3〜5%ほど 🎥 ハワイでザトウクジラの授乳を水中で撮った研究では、海中に出た乳が約90秒ひとかたまりのまま漂ってから、ゆっくり薄れていった 背景:海に戻った哺乳類の授乳 クジラやイルカの祖先は陸で暮らす哺乳類で、北海道大学などの研究グループの説明によれば、およそ5000万年前に海へ進出しました。そのとき体のつくりは大きく変わりましたが、「子どもを乳で育てる」という哺乳類の基本はそのまま持ち込まれています。問題は、水の中でどうやって乳を飲ませるかです。 ノルウェー科学技術大学(NTNU)のクジラ研究者ソフィア・アニセトさんが科学ニュースサイト「サイエンス・ノルウェー」の取材(2024年)に答えたところでは、クジラには人のような乳首がありません。代わりに乳裂(にゅうれつ)と呼ばれる切れ込みがあり、ふだんは分厚い皮膚のひだに隠れています。子どもが母親の体に触れると乳裂が現れ、母親は乳を子どもの口へ直接噴き出すように与えます。子どもは舌を筒のように丸めて乳を口に導くので、無駄が出にくいそうです。ただしマッコウクジラは口の形が違うため、水中に出た乳を集めて飲む必要がある、とも紹介されています。 同じ記事でアニセトさんは、クジラの乳はほぼ半分が脂肪だと話しています。記事はそこから「言い換えれば、乳は歯磨き粉くらい濃い」とまとめ、乳が水に流されてしまわないのはこの濃さのおかげだと説明しています。今回の海外の投稿の「歯磨き粉」は、この種の説明に出てくるたとえです。粘り気を計った数値ではなく、濃さのイメージを伝える比喩だと受け取るのがよさそうです。 濃い乳は、子どもを急いで大きくするためでもあります。アニセトさんによると、クジラの子どもは1日に最大100キロ体重を増やすことがあり、乳で得たエネルギーで体を温める脂肪の層(ブラバー)も蓄えていきます。 もう少し詳しく ヒゲクジラとハクジラで、乳の中身がかなり違う。哺乳類の乳を研究するオラフ・オフテダル氏は1997年の総説で、それまでに集められたクジラ類の乳のデータをまとめています。シロナガスクジラやザトウクジラなどのヒゲクジラ類の多くは、授乳期間が5〜7か月と比較的短く、その間、母親はほとんど食べません。授乳期の半ばの乳は、水分が40〜53%と少なく、脂肪が30〜50%、タンパク質が9〜15%。一方、イルカやマッコウクジラなどのハクジラ類は授乳が1〜3年と長く、母親は授乳中も餌をとります。乳の水分は60〜77%、脂肪は10〜30%で、ヒゲクジラ類ほど濃くはありません。「クジラの乳は歯磨き粉」と一括りにしがちですが、特に濃いのはヒゲクジラ類の話だと考えたほうが正確です。 短期決戦のヒゲクジラ。オフテダル氏は、乳腺の重さと子どもの成長の速さから、シロナガスクジラの母親が乳として出すエネルギーは1日あたり4000メガジュール程度に達すると見積もっています。妊娠中の母親が餌場で大量に食べてブラバーとして蓄え、出産後はそれを取り崩して濃い乳に変える、という仕組みです。ただし総説自体が、クジラ類の乳のデータは試料の数が少なく、質もあまり良くないと断っています。数値は「目安」として読むのがよいでしょう。 本当に散らばらないのか、撮影した研究がある。ハワイのザトウクジラの繁殖海域で、素潜りで母子を観察したアン・ゾイディス氏らの研究(2017年)は、海中に漂う乳を初めて映像に収めたと報告しています。ある母子のそばでは、乳がひとかたまりのまま約90秒漂いながら水面のほうへ上がり、ゆっくり薄れていきました。別の母子では1分足らずで散っていったそうです。乳は「まったく溶けない」わけではありませんが、子どもが飲むまでの短い時間なら形を保っていられる、ということになります。同じ研究では、子どもが乳を吸う姿勢をとっていた時間は平均約31秒と短く、観察できた5回はすべて母親の右側からでした。子どもはすぐに息継ぎに上がらなければならないので、短い時間で濃い乳を飲む形になっていると考えられています。 日本の研究では、イルカの赤ちゃんが乳の「脂肪の味」を感じている可能性。北海道大学といおワールドかごしま水族館、御蔵島観光協会、三栄源エフ・エフ・アイの研究グループは2024年、ハンドウイルカの仲間の赤ちゃんの舌に、脂肪の味を感じる受容体の遺伝子が働いていることを報告しました。クジラやイルカは餌を丸のみにするため、甘味やうま味などを感じる遺伝子が壊れています。それでも、御蔵島で死んでしまった1歳のミナミハンドウイルカの舌を調べると、赤ちゃんの時期だけにある舌先の突起(乳を絡め取るのに役立つ)や喉側のくぼみに、脂肪味の受容体が見つかりました。かごしま水族館のハンドウイルカの母乳を分析すると、脂肪(中性脂肪)は30%を占め、ヒトの母乳の3〜5%よりはるかに多く、DHAなどの必須脂肪酸も豊富でした。水槽で行った実験では、1歳の赤ちゃんイルカが、母乳が染み出す容器と、同じ濃さに白く濁らせた液体の容器を区別して行動しました。濃い乳は、海の中で「飲みやすい」だけでなく、「見分けやすい」ものでもあるのかもしれません。 味のほうは。サイエンス・ノルウェーの記事は、クジラの乳の味を「油、魚、肝臓、マグネシウムを混ぜたよう」と紹介しています。少なくとも、牛乳の延長で想像するとがっかりする味のようです。 海外の反応 1. 海外の名無しさん 歯磨き粉くらい濃い乳?それ、うちの近所のスーパーでは「ギリシャヨーグルト」って名前で売ってるやつだな。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) おかげで台無しだよ。妻が作ったデザートを冗談で「クジラの乳」って呼んだら、本気で怒られた。 3. 海外の名無しさん 散らばらないことだけが利点じゃないぞ。とにかく脂肪とカロリーが濃いから、子どもが一気に大きくなれるんだ。 4. 海外の名無しさん(>>3への返信) いや、それはクジラに限った話じゃなくて、乳ってそもそもそういうものだろ。赤ちゃんを太らせるための液体なんだから。 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) 方向は同じでも桁が違う。ヒトの母乳の脂肪は3〜5%くらいなのに、ヒゲクジラだと30〜50%って数字が出てる。同じ「乳」でも、もはや別物と言っていい。 6. 海外の名無しさん どんな味なのか気になって調べたら、「油、魚、肝臓、マグネシウムを混ぜたような味」だって。好奇心で調べるんじゃなかった。 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) その説明が書けるってことは、誰かが実際になめてみたってことだよな。研究者の探究心には頭が下がる。 8. 海外の名無しさん(>>6への返信) 魚と油の味なら、ベーグルにスモークサーモンと一緒に塗れば意外といけるのでは。誰か試して報告してくれ。 9. 海外の名無しさん 実は歯磨き粉としても優秀なんだ。塩分のおかげで歯石がよく落ちるし、カルシウムで歯も丈夫になる。……歯医者10人中9人が「こいつの言ってることはでたらめ」と答えています。 10. 海外の名無しさん(>>9への返信) 待って、最後まで読む前にクジラ乳配合の歯磨き粉をどこで買えるか検索しかけた。危ないところだった。 11. 海外の名無しさん 一方そのころクジラの掲示板では、「今日知った。陸の動物の乳は水みたいに薄いらしい。空気中だとペーストは吸いにくいから」って話題になってる。 12. 海外の名無しさん(>>11への返信) 真面目に言うと、陸の哺乳類の赤ちゃんにとって乳は水分補給も兼ねてるから、薄いのにも理由があるんだと思う。日差しと空気にさらされてるわけだし。 13. 海外の名無しさん(>>11への返信) こういう進化の見出しの書き方がいつも気になる。「散らばらないように濃い乳を出す」だと、クジラが自分で決めたみたいだろ。濃い乳のほうが子どもが育ちやすかったから、そういう形が残っただけなのに。 14. 海外の名無しさん こうなると、クジラの乳でチーズやバターが作れるのかが気になってくる。脂肪がそれだけあれば、バターはすぐできそう。 15. 海外の名無しさん(>>14への返信) クジラのチーズ、正直に言って発酵したキャットフードみたいな味がすると思う。魚と肝臓の味がするって話だし。 16. 海外の名無しさん ひれ、頭のてっぺんの鼻の穴、ヒゲ板、そして歯磨き粉みたいな乳。海で暮らすのに都合のいい仕組みが、よくこれだけそろったよな。 17. 海外の名無しさん(>>16への返信) 「そろった」と言っても、進化の時間で見れば何千万年がかりの話だからな。一夜にしてクジラになったわけじゃない。 18. 海外の名無しさん(>>16への返信) 進化って本当にすごい時がある。かと思えば、メスにくっついたまま一生を終えるチョウチンアンコウのオスみたいな仕組みも作るんだけど。 19. 海外の名無しさん 乳が濃いことに驚いたんじゃない。そもそもクジラが乳を出すってことに、今いちばん驚いてる。 20. 海外の名無しさん(>>19への返信) クジラは哺乳類だからね。乳で子どもを育てるのが、哺乳類を哺乳類たらしめている特徴みたいなものだよ。 21. 海外の名無しさん 最近よく流れてくる、子クジラがごくごく乳を飲むAI動画で知った人も多いでしょ。本物の授乳は1回30秒くらいで、すぐ息継ぎに上がるらしいけど。 22. 海外の名無しさん ずっと「甘いジュースと加工食品で子どもを太らせる」方式じゃだめだったのかな。うちの国ではそれで十分育ってるんだけど。 23. 海外の名無しさん 面白い話なのに、想像すると同時にちょっと気持ち悪い。この二つが一緒に来る豆知識って珍しいと思う。 24. 海外の名無しさん これは「今日知りたくなかったこと」のほうの掲示板に転載しておく。歯磨きのたびに思い出しそうだから。 25. 海外の名無しさん 一度知ったことを忘れる方法ってないのかな。明日の朝、歯磨き粉のチューブを絞るのがちょっと怖い。 まとめ クジラの乳はほぼ半分が脂肪で、研究者は「歯磨き粉くらい濃い」とたとえています。とくに濃いのはヒゲクジラ類で、イルカなどのハクジラ類はそこまでではありません。海中に出た乳は1分前後ひとかたまりで漂い、その間に子どもが飲みます。コメント欄は「ギリシャヨーグルト」「味は?」と食べ物の話に流れつつ、進化を「クジラが選んだ」ように書く見出しへの注文や、陸の動物の乳が薄い理由を考える声も出ていました。 参考資料 サイエンス・ノルウェー「クジラは水中でこうして授乳する」(2024年・英語) オフテダル「クジラとイルカの授乳:ヒゲクジラ類とハクジラ類の違い」Journal of Mammary Gland Biology and Neoplasia(1997年・英語) ゾイディス、ロマック=マクネア「水中観察によるザトウクジラの子の吸乳行動と左右の偏り」Animals(2017年・英語) 北海道大学ほか プレスリリース「イルカの赤ちゃんは母乳の味を感じている?」(2024年・日本語) 元ソース: 今日知った話:クジラの乳は歯磨き粉くらい濃く、液体のように水中に散らばらない 投稿 「クジラの乳は歯磨き粉くらい濃い」日本の水族館のイルカの母乳も脂肪30%、ヒトの6倍以上だった…海の中の授乳の話 は みんな知ってた?【海外の反応】 に最初に表示されました。…