走行音が静かな電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)は接近を歩行者に知らせるため、疑似的な音を出しているが、実は各メーカーの音に特色があって微妙に異なっている。国土交通省は音の違いについて、法律や規則の範囲内で問題ないとし、注目されることもあまりない。 だが、視覚障害者にとっては、その音の微妙な違いが切実な問題になっている。また、利用者が急増している電動キックボードは、ほとんど音の出ないものがあるなど、新たな問題にも悩まされている。 ◆「音に気付かず、ひやりは日常茶飯事」 「EVやHVの音に気付かずに、ひやりとすることは日常茶飯事。実際に接触したこともある」。そう語るのは、日本視覚障害者団体連合(東京都新宿区)で常務理事を務める三宅隆さん(52)だ。歩道の点字ブロックを歩いている時に「道沿いの駐車場から、音もなく出てきた車とぶつかったこともあった」と振り返る。 視覚障害者やお年寄りがEVやHVの接近に気付かず、事故に巻き込まれるケースが問題となり、2016年に国内法令が改正された。接近を歩行者に音で知らせる「車両接近通報装置」の搭載が、2020年10月以降に生産された全ての新車に義務付けられた。 速度が上昇していくのに合わせて「ヒューン」「ブーン」といった疑似的な走行音を発生させる。音量や音質などの基準を細かく定め、音を出さないようにする機能を禁止した。 基準の範囲内でも音にはメーカーごとに特徴があってそれぞれ違いがある。あまり分からないような微妙な違いであっても、視覚障害者にとっては、どの音が車両の接近通報音か瞬時に判断しづらくなるという。三宅さんは「一番知りたいのは車が近づいているということ。音の統一は非常に大事」と強調する。…