1: 七波羅探題 ★ KQoQcq0M9 2025-11-18 17:14:00 40代以上のおじさん・おばさんは叩いてオッケーという風潮はなぜ加速したのか…実年齢による制限、差別、偏見にいまだとらわれ続けている日本 集英社11/17 なぜ「新世代型の中高年」は、これほどまでに軽んじられる存在になってしまったのか。 そのきっかけのひとつを作ったのがバブル崩壊後の中高年リストラブームだ。 かの松下幸之助は「一人と言えども解雇したらあかん。会社の都合で人を採用したり、解雇したりでは、働く者も不安を覚えるやろ」と断言し、トヨタ自動車の奥田碩氏もまた、「解雇は企業家の最終手段。株価と天秤にかけるべきは雇用ではない」と警鐘を鳴らしていた。 しかし、階層の最上階に上りつめた平成の経営者たちは、「無駄をなくせ!」をスローガンに、リストラと成果主義という名のコスト削減を推し進めた。それは、階層組織においては能力の上限まで昇進することで誰もが無能レベルに達するという構造を批判した「ピーターの法則」から、逸脱することのない愚行であった。 40代以上のおじさん・おばさんは叩いてオッケーという風潮はなぜ加速したのか…実年齢による制限、差別、偏見にいまだとらわれ続けている日本_1 本来、リストラ(restructuring)とは、事業を再構築することであり、従業員を解雇することではない。だが、このカタカナ言葉は「くび」という直接的な表現を和らげる都合のよい隠れみのとしてさかんに使われた。 厚生労働省「産業労働事情調査」によると、1992~94年にリストラを行った事業所は11.7%だったのに対し、1998~2000年では17.7%に上昇した。日本労働研究機構の「リストラの実態に関する調査」でも、調査に協力した252社のうち30%にあたる76社で、1997~1999年度にリストラによる正規従業員の削減が実施され、実施年度ごとにみると、1997年度20社(8%)、1998年度42社(17%)、1999年度75社(30%)と次第に増加し、複数年度にわたってリストラを継続して行っていた企業は44社だった。 また、従業員数の10~20%程度をリストラした企業は16社、20%以上が5社と大規模なリストラも少なくなかった(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「『リストラ』と雇用調整」2005年5月)。 ここでやめておけばよかったものの、経営者たちは新卒採用を大幅に減らし、低賃金かつ簡単に切れる非正規雇用を増やすなど、即効性のあるコストカットを繰り返した。ついには、 〝追い出し部屋〟なるものまで作ってしまったのだから呆れてしまう。 むろん、これは社員たちがつけた通称だが、その内実は、働く人の尊厳を傷つけ、精神的な不安を強いる非人道的で卑劣なものだった。2012年12月31日、朝日新聞が「赤字にあえぐパナソニックグループに、従業員たちが『追い出し部屋』と呼ぶ部署がある」と報じると、メディアは一斉に「追い出し部屋、許すまじ!」と企業を叩いた。 「おじさんかわいそう報道」の潮目が変わった瞬間 この頃の世間は、おじさんやおばさんの味方だった。リーマンショックによる「派遣切り」もあり、企業への怒りが社会全体に渦巻いていたのだ。 ところが、経営者たちは「追い出し部屋はダメか。ならばこれで!」と、希望退職という名のリストラを拡大させた。これにより「おじさんかわいそう報道」の潮目が変わった。 「希望」という言葉の響きからか、高額な退職金への嫉妬なのか、いつしか「おじさん=気の毒な人」という同情的な空気は激減する。それに変わって台頭したのが「中高年にとって新たなキャリアをスタートするチャンス」「会社に依存しない自立したキャリアが求められる時代になった」といった識者たちの論調だった。 しかし、現実はそんなに単純ではない。 ターゲットにされた人たちは、屈辱感、孤立感、そして不安感に苛まれていた。リストラへの恐怖は逆に会社への依存を高め、長時間労働、過重労働に拍車がかかった。過労死に追い込まれるまで働いてしまう会社員も増えた。 にもかかわらず、「ピーターの法則」にとらわれた高みの見物のような経営者たちは愚行を続け、中高年リストラへの世間の関心も急激に失われていった。 それどころか「リストラやむなし」という風潮から「自己責任」論まで強まってしまったのだ。 そうした世間の流れにお墨付きを与えたのが、2013年1月に設置された政府の諮問機関「産業競争力会議」だ。 ※以下出典先で…