1: 七波羅探題 ★ 7MjeeLX69 2025-11-17 15:22:06 弁護士ドットコムニュース11月17日10時22分 約1600人のうち、わずか1人──割合にして0.06%。 2024年に仮釈放された無期懲役の受刑者が1人にとどまったことが、法務省が公表した最新の「矯正統計年報」でわかった。 日本には社会復帰の可能性を完全に閉ざす「終身刑」は存在しない。しかし、実際には無期懲役囚のほとんどが獄中で人生を終える状況が続いており、その実態が改めて浮き彫りになった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介) ●これからは「無期拘禁刑」に名称変更 日本の刑罰は、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料──と区分されてきた。このうち、期間を定めない懲役刑が「無期懲役刑」であり、死刑に次ぐ重い刑罰である。 国は今年6月、懲役刑と禁固刑を廃止し、「拘禁刑(こうきんけい)」に一本化した。これに伴い、無期懲役は今後「無期拘禁刑」として報じられるケースが増えていく見通しだ。 無期懲役と聞くと「一生死ぬまで刑務所に入る刑」と受け止められることが多いが、刑法28条は、無期懲役の受刑者でも、刑の執行開始から10年を経過し、本人に罪を悔い改める「改悛の情」があれば、仮に釈放することができると定める。 仮釈放後も、生涯にわたり国の指導下に置かれる点には変わりない。 ただし、2005年の法改正で有期刑の上限が20年から30年へ引き上げられたことなどを受け、近年は仮釈放までに30年以上服役する運用が一般的となり、無期受刑者の多くが塀の中で亡くなっている。 こうした運用を指して、「無期懲役が事実上の終身刑化している」との批判もある。 無期懲役受刑者について、仮釈放された数と死亡した数の推移。2024年の死亡者数はまだ公表されていない(クライムインフォのサイトより出力) ●受刑者3.3万人のうち無期は5% 刑が確定すると、受刑者は刑務所や拘置所といった刑事施設に収容されるが、現在どの程度の人数がいるのか。 国は、刑務所に収容されている受刑者の人数や罪名、新たに刑務所に入った人の数などを「矯正統計」として集計しており、月ごとの「月報」と、年ごとの「年報」を公表している。 今年7月に公表された最新版「矯正統計年報」(2024年)によると、2024年末時点で全国の刑事施設に収容されていた受刑者は3万3745人(男3万749人、女2996人)。そのうち無期懲役の受刑者は1650人(男1554人、女96人)で、全体の約5%を占める。 同年に刑事施設を出所した受刑者は1万5069人で、うち5480人が満期出所だった。一方、無期懲役の受刑者で出所(仮釈放)を許されたのはわずか1人だった。 ●無期囚の仮釈放、1975年は112人もいた 約1600人いる無期懲役囚のうち、塀の外に出られたのが1人だけという状況は、どれほど異例なのか。 死刑に関する資料をまとめているNPO「CrimeInfo(クライムインフォ)」のサイトを参考に調べると、記録が残る1966年以降で、仮釈放された無期受刑者が「0?1人」という年は確認できない。 1975年には112人の無期囚が仮釈放され、2001年までは毎年2ケタ台が続いていた。 しかし、2002年に8人に減少して以降、「1ケタの仮釈放」が珍しくなくなり、2ケタ台に乗ったのは、2003年、2005年、2013年、2015年、2017?2020年の8年間だけだ。 近年は、2021年9人、2022年6人、2023年8人と推移。そして2024年は1人まで落ち込んだ。逆に、獄中死する無期囚は増加傾向にあり、2022年41人、2023年30人が服役中に死亡している。 ●仮釈放というわずかな希望「受刑生活を耐える糧になる」 無期刑の終身刑化──。その現実を最も強く感じているのは、本人たちだ。 筆者が手紙のやりとりをしている複数の無期受刑者は、自身の刑を「時間をかけて行われる死刑」「終身刑と同じ」「死刑よりきつい」と表現する。 今年導入された拘禁刑は、1907年(明治40年)の刑法制定以来となる大きな刑罰体系の転換といわれる。 背景には、犯罪を繰り返す「再犯者率」の高止まりなどを踏まえて、これまでの「懲らしめ」から「立ち直り」重視へ方向転換するという国の考えがある。 そうした国の方向とは矛盾した状況に置かれているのが、無期受刑者たちだ。 社会復帰を励みに受刑生活を送る人は多いが、事実上、その希望が実現する可能性は極めて低く、刑務官たちも接し方や指導方法に苦慮しているという。 ある無期囚の男性は、筆者にこんな手紙を送ってきた。 「わずかな希望がこれからの長い受刑生活を耐えていく糧の一つになります」…