気づきにくい性感染症の拡大 若い女性に多い「フィッツ・ヒュー・カーティス症候群」 背中の痛みに関わる内臓の病気はいろいろある。左肩に近い付近の痛みは、心臓の病気に関わることがあり、腰の付近は膵臓や腎臓、右脇腹から背中にかけては肝臓など、さまざまな病気が想定される。若い女性に多く見られる背中の痛みには、意外な病気もあるという。 「肝臓を覆う肝被膜(かんひまく)に炎症が起こる『フィッツ・ヒュー・カーティス症候群』で、背中の痛みを訴える女性の患者さんは少なくありません。原因は、性器クラミジア感染症(別項参照)で、炎症が広がった結果、肝被膜炎を起こすのです」 こう説明するのは、東邦大学医療センター大橋病院消化器内科の渡邉学臨床教授。肝臓病の診断・治療を数多く手掛け、近隣のクリニックから患者を紹介されるケースが多い。その中に、フィッツ・ヒュー・カーティス症候群で背中の痛みを訴える若い女性がいるのだ。 「肝臓に炎症が起こる肝炎なら診断はつきやすいのですが、肝臓を覆う被膜の炎症なので、クリニックでは診断が難しい場合があります。ご本人も性器クラミジア感染症の自覚症状が乏しいため、気づかないのです」 性器クラミジア感染症では、男性は尿道炎などを引き起こすが、女性の場合は、子宮頸管炎などを起こしても自覚症状に乏しいことが多い。潜伏期間も2~3週間と長いため、感染に気づかないことがある。炎症が子宮の外にも及び、骨盤内から腹部の後方の後腹膜に病原体が侵入し、肝臓に到達して肝被膜に炎症を起こすのが、フィッツ・ヒュー・カーティス症候群だ。 「患者さんは、咳をしたり、深呼吸をすると背中が痛いといわれます。飛び跳ねても痛い。筋肉痛とは異なる痛みで心配になってクリニックを受診し、こちらの科へ紹介されるケースが多いです」…