1: Ailuropoda melanoleuca ★ l5FJqi5P9 2025-10-08 11:18:10 2025.10.08 11:00 NEWSポストセブン 昨年8月末にフジテレビを退社した元アナウンサーの渡邊渚さん(28)。2020年の入社後、多くの人気番組を担当したが、2023年7月に体調不良を理由に休業を発表。退社後に、SNSでPTSD(心的外傷後ストレス障害)であったことを公表した。約1年の闘病期間を経て、再び前に踏み出し、NEWSポストセブンのエッセイ連載『ひたむきに咲く』も好評だ。そんな渡邊さんが、「選挙」と「投票」について綴ります。 * * * この夏、東京都議会議員選挙と参議院選挙のために、投票所になっている近所の小学校へ2回行った。小学校へ行くと、自分の学生時代を思い出す。小学生の頃を、ではなく、高校・大学時代を。というのも、高校生になってから、選挙の投票所のアルバイトをしていたからだ。 内容は受付と本人確認、投票用紙の交付、案内、投票所の設営など。6時半から20時半までの長時間ではあるが、休憩時間がしっかりあって、仕事もローテーションするから、それほど退屈しない。時給もいいしお弁当も出るから、ホワイトバイト! 学生時代には大変ありがたいバイトだった。 また、私は選挙権が18歳に引き下げられた年に19歳になった世代だ。初めて選挙に行った日のことは、成人を迎えてお酒を飲めるようになった時より心が湧き立った。 この夏の投票所でも懐かしさを抱きつつ、数年前と今とでは政治の流れはもちろん、自分の政治への思いも変わったことを感じた。 政治のディベートで疎遠になってしまった知人との思い出 最近、学友たちと食事をした時に、政治について議論した。皆ライフステージが変わり、いろんな経験をしたことで、気づいたことも増えた。参院選のことや、こんな政策があったらということまで、幅広く話が弾んだ。 その中で「支持する政党がパートナーと全く違ったらどうする?」というトピックが出てきた。パートナーのことは好きだし、他に嫌いなところはないが、政治的思想だけが違う。政治の話をすると、けんかになる。これを読んでいる皆さんはどうする? 私は高校時代に、超保守的な考えをもつ知人と政治に関するディベートをしてから、疎遠になったことがある。政治的思想の違う彼女と、日本の外交について対立し、まくし立てられ、言い負かされたような気分になった。 私もまだ若かったから、途中で反論するのも理解するのも面倒になって、放棄してしまった。ディベートになっていなかった。そしてその後、私は彼女との関係性も希薄になってしまった。 それから政治について他者と語ることを避けるようになった。余計な摩擦で不快になりたくないし、不仲にもなりたくなかったから。 あれから時が経ち、大人になった今、当時の私と知人に何が足りなかったかを想像する。その答えの一つが、“尊重”だと思う。どちらが正しいとか優れているとかではなく、違いを認めて受け入れる余白があの頃はなかった。 同じ考えである必要はないし、同化しなくていい。自分の考えを押し付けず尊重すること、そして、理解できないからと言って切り捨てず、会話をすること諦めてはいけなかったと省みた。 これはパートナーにも同じことが言えると思う。共に生きていく人と、全く同じ価値観を求めるのではなく、違うことを認め合い、尊重することが共生への第一歩になる気がする。 最近SNS上では、政治について、様々な主張が繰り広げられている。夫婦別姓、同性婚、移民政策、核、憲法……他にも解決しなければならない問題はたくさんあり、いろんな考え方の対立が激化しているように見える。 関心を持つことは素晴らしいことだ。しかしどれだけネット上で白熱したとしても、それが実際の政治に反映されているようにはあまり感じない。いがみ合いや、言い負かしてやりたいという虚栄心では、先に進まない。だから、自分が正しいと押し付けたり傷つけたりするのではなく、互いを理解しようとする気持ちをもって、建設的な会話をしてほしいものだ。 現状をおかしいと思い、変えようとするエネルギーを淘汰に使うのではなく、より良い社会を築くために使ってほしい。そんなことを想ったこの夏の選挙だった。…