引っ越したばかりの街には、まだ知らないルールがいくつもある。ゴミの出し方、細い道の一方通行、そして——橋の渡り方。海外の掲示板に投稿された今回の話は、財布に現金が1枚も入っていない状態で「現金専用」と書かれたレーンに車を進めてしまった人の記録である。差し出されたカードは断られ、そこから示された逃げ道は3つ。どれも、簡単ではなかった。 ※注:舞台はアメリカ。米国の有料道路や有料の橋では、料金の払い方が大きく3通りある。①フロントガラスに貼った小さな板状の機器で自動的に引き落とされる電子式(東部では「E-ZPass」と呼ばれる仕組みが広く使われている。日本のETCに近いが、車載器の取り付け工事はいらず、貼るだけで済む)、②料金所の窓口で係員に手渡しする現金レーン、③無人のレーンをそのまま通り抜け、カメラでナンバープレートを撮影されて後日、自宅に請求書が届く方式。日本の高速道路と違うのは②で、米国の「現金専用(cash only)」レーンは本当に現金しか受け付けないことが多く、日本の一般レーンのようにクレジットカードが通る保証はない。③は電子式より割高に設定されているのが普通で、州によっては未払いを放置すると免許の更新で引っかかることもあるという。以下、金額は1ドル150円前後で換算した目安を添える。 何をやらかした? 📌 引っ越したばかりの街にある大きな橋は、行きは無料で、帰りだけ通行料を取る仕組みだった。投稿者はギターを売るために橋を渡り、質屋に「ギターは足りている」と断られて手ぶらで帰路につく。迂回路は90分、そのガソリン代もない。やむなく橋に向かい、「現金専用」レーンでカードを差し出して強い口調で断られた。手元の現金はゼロ。係員が示したのは、車が走っている6車線を横断して責任者のところへ行くか、現金自動預け払い機を探すか、無人レーンを通り抜けて後日40ドル(約6000円)の追加請求を受け取るか——の3択だった。 事の発端 引っ越したばかりの街で、ギターを手放すことにした 投稿者は最近この街に越してきたばかりだった。そして今、少しばかりお金に困っている。そこで決めたのが、手持ちのギターを売ることだった。楽器を売りに出す決断というのは、たいてい軽くない。弾かなくなったから処分する、という話ではなく、金策のために手放すのだから、決めた時点ですでに気分は沈んでいる。投稿者自身も「このギターを売らなければいけないこと自体に、もう気が滅入っていた」と書いている。売り先に選んだのは、橋を渡った向こう側にある質屋だった。わざわざ橋を渡るのだから、それなりの見込みがあって選んだ店だったのだろう。 行きは無料で、帰りだけ料金を取る橋 その街には大きな橋が架かっている。そして——投稿者がこの日に学ぶことになるのだが——この橋は行きには通行料がかからず、帰りだけ料金を取る構造だった。日本の感覚だと妙に聞こえるが、米国では珍しくない仕組みらしい。両方向で取ると料金所が2つ必要になるので、片方向だけで往復分をまとめて徴収する。渡る側からすれば「行きはタダで通れた橋」という記憶だけが残るので、初めての人ほど引っかかる。この日の投稿者もそうだった。行きは何事もなく渡っている。料金所の存在すら意識に残らないまま、質屋の駐車場に車を停めた。 やらかしの一部始終 「ギターは間に合ってる」と言われて、手ぶらで帰ることになった 質屋の回答はあっさりしていた。「うちはギターが多すぎるので、今回は見送ります」。つまり買い取り不可。売るつもりで持ち込んだ楽器を、そのまま持って帰ることになった。ここで投稿者の懐事情は、家を出たときと1ミリも変わっていない。むしろ橋を渡ってきた分のガソリンだけが減っている。すでに苛立っていた投稿者は、帰り道の設定をする。地図アプリで「有料道路を回避」を選んだ。表示された所要時間は——90分。橋を使えばすぐそこの距離が、迂回すると1時間半かかる。 「現金専用」は、本当に現金だけだった 90分ぶんの時間もないし、そのガソリン代もない。投稿者は有料の橋を通ることを選んだ。ここで前提が1つある。以前住んでいた州では電子式の料金機器が必要なかったので、投稿者はそれを持っていなかった。だから窓口に人がいる「現金専用」のレーンに車を寄せた。この判断自体には、本人なりの理屈があった。以前の土地では、窓口のレーンは現金でもカードでも払えるのが普通だったからだ。「現金専用と書いてあっても、実際にはカードも通るだろう」——そう思っていた。窓口に着き、係員にカードを差し出す。返ってきたのは、強い口調の「現金専用です」というひと言だった。ギターが売れなかったせいで、財布に現金は1ドルも入っていない。 係員が示した選択肢は3つ。車が走っている6車線を横断して責任者のところへ行くか、現金自動預け払い機を探しに行くか、あるいは電子式専用のレーンをそのまま通り抜けて、後日40ドル(約6000円)の追加請求を郵便で受け取るか。どれを選ぶにしても、その場では車の列が止まったままである。後ろから何台にもクラクションを鳴らされ、責任者とはまともに話もできなかった。そして投稿者は、帰り道で泣いた。 その後 投稿には、最終的にどの手段で橋を渡り切ったのかは書かれていない。書かれているのは、クラクションを浴びたこと、責任者とほとんど会話が成立しなかったこと、そして家に着くまでずっと泣いていたことだけである。おそらく本人にとっても、細かい処理の手順より、料金所のど真ん中で立ち往生した数分間のほうが記憶に残ったのだろう。ギターは売れず、往復のガソリンは消え、通行料の問題だけが手元に残った。 コメント欄には「これはニューヨークのジョージ・ワシントン橋(ニューヨークとニュージャージーを結ぶ巨大な吊り橋)では?」という推測が付いた。投稿者は「違う橋ですが、やはり大きな街です」と返信し、こう続けている。「どうやらこれはよくある話らしくて、自分が何も分かっていなかっただけみたいです」。実際、コメント欄には同じ場所で固まった人の告白が次々と集まった。慰めになったのかどうかは分からないが、少なくとも「自分だけが間抜けだったわけではない」ことは、その日のうちに分かったはずである。 海外の反応 1. やらかし名無しさん 気の毒だとは思うけど、「現金専用」は現金専用という意味しかない。そこに書かれていない意味は含まれていないんだよ。現金を持たずに現金専用のレーンへ入った結果としては、残念ながら十分に予想できる範囲だと思う。 2. やらかし名無しさん(>>1への返信) それはそうなんだけど、州によっては窓口のレーンでカードが普通に通るところもあるからね。引っ越したばかりで、前の土地の常識のまま「たぶん使えるだろう」と思い込む気持ちは分かる。自分も最初の1年はあちこちで恥をかいた。 3. やらかし名無しさん 橋に乗る前の分岐のところに「この先の料金所は現金または電子式のみ。カード不可」と大きく出しておけば済む話だと思うんだよな。渡ってしまってからでは引き返せないんだから、判断させるなら手前で情報を出してほしい。 4. やらかし名無しさん 実務的な話をすると、詰んだときは無人のレーンをそのまま通り抜けるのが一番マシ。後日ナンバーで照合されて請求書が家に届くだけだ。40ドルの上乗せは確かに痛いけど、車が走っている6車線を歩いて横断するより安全だし、後ろの列も止まらない。 5. やらかし名無しさん(>>4への返信) 補足すると、その後日請求の上乗せ分は交渉の余地がある場合がある。運営会社のチャット窓口に事情を丁寧に、本当に丁寧に説明すると、通常の通行料に直してくれることがあるよ。必ずではないけど、聞くだけならタダだ。 6. やらかし名無しさん 本当にお気の毒。ああいう場所で身動きが取れなくなるのは、怖いし頭も真っ白になる。しかも土地勘のない街ならなおさら。うちも夫婦でボストン近郊の料金所に入ったとき、なぜか電子式の機器が反応しなくて、レーンから後ろ向きに出るはめになった。 7. やらかし名無しさん(>>6への返信) 料金所のレーンをバックで出るのか……想像しただけで手が震える。後ろに1台でも詰まっていたら詰みでしょ。それでも係員の対応がきつくて泣きそうになったって、この構造そのものがおかしいと思う。 8. やらかし名無しさん 90年代、仕事でサンフランシスコに入るときに同じことをやった。当時の通行料は3ドル(今の感覚で約450円)。車に3人乗っていて、相乗りの時間帯なら無料だったから、9時前に着こうと必死で飛ばした。着いたのが9時3分。係員に「3ドルです」と言われ、全員一銭も持っていなかった。 9. やらかし名無しさん(>>8への返信) 3分。よりによって3分。それでどうなったの、その3ドルは。 10. やらかし名無しさん(>>9への返信) 事務所に車を寄せろと言われて、最後は3ドルの小切手を切ったよ。処理する側の手間のほうが明らかに高くついていたと思うけど、当時はそれで通してもらえた。今なら絶対に通らないだろうね。 11. やらかし名無しさん これを読んで思い出したけど、逆に電子式専用のレーンに間違って入って、バーの前で止まったことがある。インターホンで係員が出てくるまでの30秒くらい、後ろの車のライトが本当に長く感じた。以来、車の小物入れに20ドルだけ現金を入れっぱなしにしている。 12. やらかし名無しさん ニューヨーク周辺の橋やトンネルは、ここ数年でほとんどが現金の受付をやめた。今は電子式か後日請求の二択で、しかも後日請求のほうが高く設定されている。現金を持っていること自体が、もう解決策になっていない地域もあるんだよ。 13. やらかし名無しさん(>>12への返信) ペンシルベニアの有料道路はもっとひどい。現金の受付をやめたときに、後日請求の料金を電子式のほぼ倍にした。つまり機器を持っていない人間から二重に取る設計になっている。 14. やらかし名無しさん 話の感じからすると、これはニューヨークで、渡ったのはジョージ・ワシントン橋(ニューヨークとニュージャージーを結ぶ巨大な吊り橋)じゃない? 片方向だけで料金を取る構造は、あのあたりにいくつもある。 15. やらかし名無しさん(>>14への返信) 投稿者です。実はその橋ではないんですが、やはり大きな街ではあります。どうやらこれはよくある話みたいで、自分が何も分かっていなかっただけのようです。 16. やらかし名無しさん(>>15への返信) 行きは無料で、帰りだけ取られるのか。それならフィラデルフィアの橋もそうだよ。ニュージャージー側へ出るときはタダで、戻るときにまとめて払わされる。同じ思いをした人はあの辺にも山ほどいるはず。 17. やらかし名無しさん こういう「実はよくある話」なのに、現場の人が「そんなことも知らないのか」という態度を取ってくるの、本当に嫌いだ。よくあるなら起きないように直すか、対処の手順を用意しておけばいい。似た場面すべてに言えることだけど。 18. やらかし名無しさん 見ず知らずだけど、少し助けさせてもらえないだろうか。送金アプリは使っている? 通行料とガソリン代を天秤にかけなきゃいけない状況に、誰も置かれるべきじゃないと思う。 19. やらかし名無しさん(>>18への返信) 掲示板でこういう返信が真っ先に付くの、悪くないよな。笑い話として消費されて終わりでもおかしくない投稿なのに、最初に出てくるのが手を差し出す書き込みだった。 20. やらかし名無しさん 個人的にいちばんこたえるのは、質屋の「ギターは間に合ってます」のところ。売る決心をして、車で橋を渡って、その往復のガソリンまで使って、返ってきたのが在庫過多という理由なんだよ。料金所の件はその後日談でしかない。 21. やらかし名無しさん 昔の料金所には、硬貨をカゴに投げ入れる無人レーンがあって、外した小銭が地面に散らばっていた。金持ちだけど無駄遣いが大嫌いな知り合いは、いつもそのレーンに入ってドアを開け、落ちている小銭を必要な額だけ拾って通行料を払っていたよ。 22. やらかし名無しさん(>>21への返信) 今も成立する技なの? 最近の橋の通行料は10ドル(約1500円)を超えるところも珍しくないし、高速道路でも8ドル(約1200円)を下回る料金所を最近見ていない。それを全部地面の小銭でまかなうのは、さすがに厳しい気がする。 まとめ ギターを売りに橋を渡り、断られて手ぶらで帰る途中、「現金専用」レーンで現金がないことに気づいた——という話。反応は大きく3つに割れた。「書いてある通りの結果」と突き放す声、「引っ越したばかりなら思い込むのも当然、案内表示のほうが不親切」という擁護、そして「無人レーンを通れば請求書が来るだけ」という実務的な助言である。そのあいだに、料金所でバックした人、3ドルの小切手を切った人、電子式レーンで固まった人の告白が次々と積み上がっていった。車の小物入れに現金を少しだけ入れておく——たったそれだけのことが、あの数分間を丸ごと回避してくれるらしい。 元ソース: 有料の橋を車で渡ろうとしてやらかした話 The post 質屋に「ギターは間に合ってる」と断られた帰り道、有料の橋の料金所で完全に詰んだ話 appeared first on やっちまった!海外のやらかし告白.…