「……本当に、それでよろしいですか?」。ベトナム料理店の店員がそう聞き返してきたとき、テーブルを囲んでいた5人は誰ひとり、その一言の重みに気づかなかった。注文したのは、メニューにあった「たけのこのスープ」。日本で暮らしていれば「え、おいしいのに」と思うところだが、アメリカ育ちの投稿者がそれまでの人生で見たたけのこは、中華の炒め物に入っている短冊状の水煮だけだった。 ※注:日本のスーパーで一年中売っている細切りのたけのこ水煮や、炒め物に入っている短冊状のたけのこは、下ゆでして水にさらし、えぐみをほとんど抜いた状態のもの。一方、掘りたての生のたけのこは、米ぬかを入れて長時間ゆでる「あく抜き」をしないと、独特の土っぽさと強いえぐみが残る。ゆでている最中の匂いもかなり強い。今回登場するベトナムのスープは「カインマン(canh măng)」と呼ばれ、乾燥させて戻したたけのこや、発酵させて酸味を出したたけのこを使うことが多い。アヒル肉と合わせた一杯は旧正月の食卓にも並ぶ定番料理で、水煮の細切りとは、そもそも別の食べ物と言っていい。 何をやらかした? 📌 「誕生日の人がその日の予定を決める」という家族のしきたりで、投稿者は行き先にベトナム料理店を選んだ。メニューにあった「たけのこのスープ」をアヒル肉を添えた形で注文したところ、店員から「本当にそれでよろしいですか?」と確認される。意味が分からないまま「はい」と即答。運ばれてきたのは、缶詰の細切りではなく、丸ごとの生のたけのこが沈んだ、土の香りが真正面から立ちのぼる一杯だった 事の発端 「誕生日の主役が、その日の行き先を決める」 投稿者の家では、数年前から誕生日の祝い方が変わった。きょうだいのうち一番下の子が、ケーキとプレゼントを主役にしたパーティーを卒業する年齢になったのがきっかけだ。代わりに始まったのが「誕生日の人が、家族みんなで一緒にやることを決める」というやり方。投稿者のきょうだいは博物館や動物園を選ぶタイプで、投稿者は新しい国の料理を試すのが好きなタイプだった。ちなみに投稿者は後の追記で「ケーキも贈り物も今もちゃんとある。ただ、その日の主役をそこに置かなくなっただけで、家族で集まって過ごす時間そのものを大事にしたいだけなんだ」と補足している。 「ベトナム料理、前に食べてすごく良かったから」 その年、投稿者が選んだのがベトナム料理店だった。以前にも一度ベトナム料理を食べたことがあり、頼んだ皿がどれも気に入っていた。だからもっと知らない料理を試してみたい——動機としては、これ以上ないくらい健全である。集まったのは家族5人。舞台はアメリカだ。 やらかしの一部始終 メニューにあった「たけのこのスープ」 席についてメニューを開くと、「Bamboo Shoot Soup(たけのこのスープ)」という一皿が目に入った。アヒル肉を添えた形で出てくるらしい。たけのこのスープも、アヒル肉も、投稿者はどちらも食べたことがなかった。だからこそ、これにしよう。新しいものを試すのが今日の目的なのだから。 「……本当に、それでよろしいですか?」 注文を伝えると、店員がふと投稿者の顔を見て、こう聞き返した。「本当に、それでよろしいですか?」。——ここが分岐点だった。投稿者は書いている。「正直に言うけど、自分はこの合図をまったく受け取れなかった。テーブルの誰ひとりとして受け取れなかったんだ」。投稿者はただうなずいて「はい」と答えた。店員は一瞬ためらってから、注文を通しに行った。たぶん心の中では「まあ、ご自分で選んだことですからね」と思っていただろう、と投稿者は振り返る。 運ばれてきたのは、缶詰の細切りではなかった ここで前提を確認しておきたい。投稿者はアメリカに住んでいて、食べ物としてのたけのこに触れた経験は、アジア料理店ならどこにでもある、あの短冊状の細切りだけだった。頭の中に浮かんでいたのも当然その姿である。だが、実際に出てきたものはまったく違った。器の中にあったのは、竹の若い茎をそのまま小さくしたような、丸ごとのたけのこ。香り自体は悪くなく、むしろ食欲をそそるくらいで、投稿者は何の身構えもないままスープをひと口すすった。そして、真正面から味に殴られた。 「動物園の匂いが、そのまま味になったみたいだった」 投稿者いわく、あの味を説明する言葉はひとつしか思いつかないという。「このスープは、動物園の匂いがそのまま味になったような味がした」。土の香りが濃く、苦く、とにかく強い。投稿者自身、こう書き添えている。「これはたぶん、好きか嫌いかがはっきり分かれる種類の味だし、その味で育った人なら普通においしく食べられるんだと思う。俺はそのどれにも当てはまらなかっただけだ」。念のため家族全員がひと口ずつ試したが、5人とも同じ顔になった。そして、そのときようやく理解した。ああ、店員さんが「本当にそれでいいですか?」と聞いたのは、これのことだったのか、と。 その後 投稿者たちは、自分たちの失敗としてきちんと引き受けた。添えられていたアヒル肉は単体で食べる分にはちゃんとおいしかったので完食し、家族が頼んだ他の皿も少しずつ分けてもらった。問題はスープである。大きな器にたっぷり残っていて、投稿者の家は食べ物を捨てるのを何より嫌う。持ち帰って、なんとか誰か一人でも食べきれる味に変えられないかと、家族総出で必死にいじった。調味料を足し、薄め、思いつく手はひととおり試した。結果は完敗。最後は申し訳ない気持ちのまま、スープを捨てることになった。それでもチップはきちんと置いてきた。投稿者はこう締めている。「5人集まって脳みそ1個分しか働いていなかったのは完全にこっちの問題で、店員さんには何の落ち度もない」。店の批判も、料理の批判も、この投稿には一行も出てこない。悪いのは自分の思い込みだった、という一点だけを、投稿者は最後まで貫いている。 海外の反応 1. やらかし名無しさん これ、別にやらかしてないだろ。知らないものに挑戦して、口に合わなかった。それだけの話だし、店員のせいにも店のせいにもしてない。冒険する人間が出会うもの全部を好きになれるわけがないんだから、これは失敗のうちに入らないと思うんだが。 2. やらかし名無しさん(>>1への返信) うちも食べ物を捨てるのだけは絶対に嫌がる家系だから、投稿者の後ろめたさは分かるよ。しかもよりによってスープなんだよな。ひと口で無理だと分かった液体が、まだ器いっぱいに残っているあの絶望感は独特のものがある。 3. やらかし名無しさん パリのシテ島で、アンドゥイエット(内臓を腸に詰めたソーセージ)が名物だという店に入ったことがある。ニューオーリンズのソーセージが好きだから平気だろうと軽い気持ちで頼んだら、店員さんが心配そうな顔で「あの料理は……とても個性的です」と言ってきた。それでもひるまずにいたら、「とても、とーても個性的です」と念を押されて、ようやく察した。代わりに勧められた白イノシシの煮込みが最高だったよ。あの人は恩人だ。 4. やらかし名無しさん(>>3への返信) 新婚旅行で、妻がフランス料理店の注文をしくじったことがある。運ばれてきた皿を見るなり「私これ食べたくない、代わりに食べて」と言うので、見た目は仔牛の塊肉だし、いいよと引き受けて完食した。あとで知ったんだが、あれは仔牛の胸腺だった。味自体は悪くなかったけど、皿を見た時点で妻は薄々気づいていたと後日白状してきたのが、今でもちょっと引っかかっている。 5. やらかし名無しさん 店員に「本当にそれでよろしいですか?」と言われたときの正解は、その場で「どうしてですか?」と聞き返すことだ。これひとつ覚えておくだけで、恥をかく前に必要な情報がだいたい手に入る。相手も説明する口実ができて助かるしな。 6. やらかし名無しさん(>>5への返信) 「では代わりに何がおすすめですか?」もかなり強い。店員はたいてい、その店で一番外さない皿を知っているからね。あと「よそで食べておいしかった料理が、別の店でも同じ味とは限らない」というのも、一緒に覚えておいて損はない。 7. やらかし名無しさん 公平に言うと、店員側ももう少し説明してよかったと思う。口に合わない可能性が高いと感じたのなら、「本当にそれでいいですか?」で止めずに、「乾燥させたたけのこを使うので、香りがかなり強いですよ」のひと言まで踏み込んでほしかった。それだけで全部解決していた話だ。 8. やらかし名無しさん(>>7への返信) いや、そこは投稿者の側にも言えることだよ。「本当にいいですか?」と確認された時点で、「実は食べたことがなくて、どんな味なんですか?」と返せばそれで終わりだった。うなずいて「はい」で会話を閉じてしまったのが、唯一にして最大の落ち度だと思う。 9. やらかし名無しさん うちはベトナム系の家庭で、旧正月の食卓にカインマンが載らなかった年はない。アヒルの出汁に、戻したたけのこの香りがしっかり移った、あのちょっと酸っぱくて土くさい感じ。うちの家族にとってはあれが「正月の匂い」なんだよ。世界で一番好きなスープを「動物園の匂い」と言われたのは笑ってしまったけど、まあ初対面には強すぎるというのも分かる。 10. やらかし名無しさん(>>9への返信) 発酵させたたけのこの香りって、いったん慣れると一気にやみつきになる側だよな。アジアの発酵食品は国ごとに漬ける素材の選び方が違っていて、味も匂いも同じものがひとつとしてない。ただ、発酵ものに慣れた人間でも最初のひと口は身構える強さがあるのは事実だと思う。 11. やらかし名無しさん ニュージャージーの本格的なタイ料理店で送別会をやったときの話。持ち帰りで20回は使っている店で、僕は「中辛」が好きだったけど、それでも十分に辛かった。「辛口」を頼んだ人間は、僕の知る限り誰もいなかった。で、その日の主役がスープを注文するとき、店員に辛さを聞かれて意気揚々と「辛口で!」。テーブル中が「やめろやめろやめろ」と止めたのに、本人は「辛いのは得意だから」と譲らなかった。運ばれてきたひと口目で目を見開いて、数分後には顔を真っ赤にして汗をしたたらせていたよ。それでも完食したのは立派だった。僕には絶対に無理だ。 12. やらかし名無しさん(>>11への返信) うちの夫も初めての店で「タイの人が食べる辛さで」と頼んで、店員に「本当によろしいですか?」と確認されたことがある。自信満々にうなずいたら「では返金はなしですよ」とだけ言い残して奥へ消えていった。料理が届くまでの十数分、だんだん不安そうな顔になっていく夫の横で、私はずっと笑いをこらえていた。完食はしたけど、三日かかったうえに相当薄めていた。 13. やらかし名無しさん サンフランシスコの中華街でまったく同じことをやった。せっかくだから地元の人が食べているものをと思って、塩漬けにして発酵させた魚の料理を頼んだら、店員がメニューを指差して「本当に、これでいいんですか?」と確認してきた。はいと答えたのに、最初に出てきたのは無難な鶏の甘酢炒め。違う、それじゃない、と言って、ようやく本命が運ばれてきた。僕は2〜3口、他の家族は1口で箸が止まったよ。後から中国系の友人に「あれは中国人の間でも好き嫌いが分かれる」と言われて悟った。あの店員は僕を助けようとしてくれていたんだ。 14. やらかし名無しさん(>>13への返信) それ、塩漬け魚のチャーハンなら僕の大好物だよ。塩辛いというより、発酵の風味なんだよね。青カビのチーズにちょっと近い、というのが僕にできる精一杯の説明だ。付き合い始めのころ、妻から最初にもらった贈り物が塩漬け魚の袋だったのは、今でもいい思い出になっている。メニューにあったら毎回頼むべき一皿だと思うよ。 15. やらかし名無しさん 祖母が日本の出身で、春になると生のたけのこを扱っていたから、あの香りの強さは想像がつく。掘ったその日のうちに、米ぬかを入れた鍋で1時間近くゆでて、そのまま冷めるまで置いて、ようやくえぐみが抜ける。その工程を経ていないたけのこは、正直もう別の食べ物なんだよ。缶詰の細切りしか知らない状態で丸ごとのやつに出会ったら、そりゃ驚くに決まってる。 16. やらかし名無しさん 「動物園の匂いがそのまま味になったみたいだった」という表現、うますぎるだろ。読んだ瞬間に鼻の奥にあの空気がよみがえったぞ。悪口としてじゃなくて、描写として完成されてる。 17. やらかし名無しさん(>>16への返信) ただ、その同じ匂いを「土と森の香り」として受け取る人もいるんだよな。どっちが正しいという話じゃなくて、育った環境によって脳のラベルの貼り方が違うだけ。投稿者もそこはちゃんと分かって書いてるのが好感度高い。 18. やらかし名無しさん これは料理じゃなくて経験にお金を払ったと思えばいいよ。僕は初めての店では必ずひとつ、名前も知らない皿を頼むと決めている。十回に一回くらいは今回みたいなことになるけど、残りの九回のために続けているんだ。 19. やらかし名無しさん 本題と関係なくて申し訳ないんだが、「ケーキとプレゼントを卒業する年齢」って何歳のことなんだ。うちは僕もいい年だし、子どもも大人だし、その子どもたちも育ってきているけど、全員まだケーキと贈り物が大好きなんだが。誰も卒業していないぞ。 20. やらかし名無しさん アヒル肉のほうはおいしかったんだろう? だったら次はボーコー(ベトナム風の牛肉の煮込み)を試してほしい。八角とレモングラスが効いた優しい味で、あれで外す人はまずいないから。たぶん同じ店のメニューにも載ってるよ。 21. やらかし名無しさん 何より、口に合わなかったのにチップをきちんと置いて帰ったところが一番いいと思った。自分の思い込みで注文して、外して、それを店員のせいにしない。外食の作法として満点だし、こういう客ばかりだったら世界はもう少し優しい場所になる。 まとめ 誕生日の主役として選んだベトナム料理店で、投稿者は「たけのこのスープ」を注文し、店員の「本当にそれでよろしいですか?」を家族5人そろって聞き流した。届いたのは缶詰の細切りではなく丸ごとのたけのこ。コメント欄には「これは失敗じゃない」「よその国の料理で同じ目に遭った」という共感と、そのスープが大好きだという人たちの声が同じくらい集まった。店員の一言に「どうしてですか?」と返せるかどうか——外食の分かれ道は、たぶんそこにある。 元ソース: 店員に「本当にそれでよろしいですか?」と聞かれたのに、聞き流してやらかした The post 「……本当に、それでよろしいですか?」店員の念押しの意味を、テーブルの5人が誰ひとり汲み取れなかった夜 appeared first on やっちまった!海外のやらかし告白.…