夫婦のどちらにも、週に一度の注射がある。片方は妻の関節リウマチのため、もう片方は夫の糖尿病のため。似た形の箱がふたつ、同じ机の上に並んでいる。海外の掲示板に投稿された今回の告白は、その二箱を取り違えたまま、夫が妻の腕に自分の薬を入れてしまった夜の話である。しかもその薬は、妻が二年前に一度試して、体に合わずにやめていたものだった。 ※注:この記事にはアメリカの医療の仕組みに関わる言葉が出てくる。「オートインジェクター」は、あらかじめ薬が入ったペン型の器具で、体に押し当ててボタンを押すと決まった量が自動で入る注射器のこと。針が見えない形になっていて、家庭で自分や家族に使うことを前提にしている。「毒物管理センター」は、薬や洗剤を誤って口にしたり体に入れたりしたときに、二十四時間いつでも電話で相談できる全米共通の窓口。「アージェントケア」は、救急車を呼ぶほどではないが当日中に診てほしい、というときに予約なしで駆け込める診療所で、日本の休日夜間診療所に近い。「緊急外来」は病院の救急部門にあたる。日本と違って重症の人から順に通される運用が徹底しているため、命に関わらない症状だと廊下で何時間も順番待ちになることが珍しくない。 何をやらかした? 📌 毎週、妻の注射を代わりに担当していた夫が、自分と妻のぶんをまとめて用意した際に箱を取り違え、妻に自分の糖尿病の薬を注射してしまった。妻は糖尿病ではなく、しかも二年前に同じ薬を試して強い吐き気と腹痛が出たため中止していた。翌朝、妻は吐き気・腹痛・冷や汗・悪寒に襲われ、呼吸まで乱れて救急車を呼ぶ事態に。緊急外来の廊下で二時間待たされたのち点滴を受け、検査の数値そのものは正常だった。 事の発端 夫婦それぞれに、週一回の注射がある家 投稿者は二型糖尿病で、毎日インスリンを自分で注射している。それに加えて、週に一度、チルゼパチド(血糖値を下げるために使う、週一回のタイプの注射薬)も使っていた。糖尿病との付き合いが長く、自分の体に針を向けること自体はもう日常の一部になっている。 妻のほうは糖尿病ではない。彼女が使っているのはアバタセプト(関節リウマチの治療に使う注射薬)で、こちらも週に一度、自宅で打つ。ただし妻は自分では注射せず、投稿者が代わりに打っていた。関節リウマチという病気の性質を考えれば、手や指の動きに不自由があってもおかしくない。理由は本文に書かれていないが、コメント欄でもそこは自然に受け止められていた。 妻は二年前、この薬を一度やめている ここが今回の話をただの取り違えで終わらせなかった点である。妻は二年前、体重を落とす目的で、投稿者が使っているのと同じ種類の薬を試したことがあった。ところがひどい吐き気と腹部の締めつけが出てしまい、途中で中止している。その後、加入している保険が糖尿病でない人への処方を対象外にしたこともあり、妻とこの薬の縁はそこで切れたはずだった。 つまり夫婦の家には、「妻が絶対に使ってはいけない薬」と「妻が毎週使う薬」が、そっくりな箱に入って並んでいたことになる。しかも打つのは、二人分をまとめて用意する夫。今から振り返れば、事故が起きる条件は全部そろっていた。 やらかしの一部始終 二人分をまとめて用意して、箱を取り違えた その晩も、投稿者はいつものように二人分の注射を用意していた。自分のぶんと、妻のぶん。手順そのものは何十回も繰り返してきたもので、迷う要素はどこにもない。ところがこの日、彼は箱を取り違えた。妻の腕に入っていったのは、妻のアバタセプトではなく、投稿者のチルゼパチドだった。 気づいたのは、ほとんど直後である。二本のオートインジェクターは見た目こそ似ているものの、薬が全部入り終わるまでにかかる時間が違う。押し当ててから終了の合図が出るまでの長さが、いつもと明らかに違った。二人とも、その瞬間に何が起きたかを理解した。 その場でやったのは、残りの二本を予定どおり打つことだけ 入ってしまったものは戻せない。投稿者はそのまま妻に本来のアバタセプトを注射し、続いて自分のチルゼパチドを注射した。二年前の副作用を知っている二人は、これから妻がつらい思いをすることを覚悟した。ただ、どの程度つらいのかまでは、このときは想像できていなかった。 翌朝、症状が一気に来た 朝になると、妻には二年前の記憶をなぞるような症状が出そろっていた。腹部の締めつけ、耐えがたい吐き気、冷や汗、悪寒。そして症状が続くうちに本人の恐怖が増していき、しまいには呼吸が浅く速くなって止まらなくなった。体のつらさに、「このまま悪くなったらどうなるのか」という不安が上乗せされた状態である。 投稿者はまず毒物管理センターに電話した。返ってきたのは「この薬に効き目を打ち消すような手立ては特にない。医師の診察を受けるか、アージェントケアか緊急外来へ」という趣旨の回答だった。次にかかりつけの内分泌の医師に連絡を取ろうとしたが、こちらはつながらない。手が止まっているあいだに、妻のほうが叫んだ。もういいから911を呼んで、と。日本でいう119にあたる、救急の通報番号である。 その後 救急車で運ばれた先の緊急外来では、そこから二時間、廊下で待たされた。日本の救急とは受診の流れが違い、重症の人から順に通されるため、命に関わらないと判断されるとこうなる。投稿者は「リクライニングの椅子ではなくストレッチャーを用意してもらえただけありがたかった」と書いている。横になれるかどうかは、吐き気で動けない人間にとっては天と地の差だ。 投稿者が掲示板にこの告白を書き込んだのは、まさにその廊下でのことだった。看護師が点滴の準備を始めたところで、彼はこう締めくくっている。「妻は助かる。でもこれから地獄の一週間になる。少なくとも一週間は」。 その後、投稿者はコメント欄で経過を報告している。緊急外来では吐き気を抑える処置と水分の点滴を受け、血液検査などの数値はどれも正常だった。妻本人の希望で、点滴が終わりきる前に早めに帰宅したという。医師の指示を振り切って出たわけではなく、了解を得たうえでの早期の退院だった。吐き気を抑える処置はよく効いたものの効果が長続きするものではなく、帰宅後に備えて飲み薬も手元にある、とのことである。 命に関わる事態にはならなかった。ただし、体調が戻るまでに相応の日数がかかるのは避けられない。投稿者は自分の告白を「妻に自分の注射を打って、賞品として緊急外来行きを勝ち取った」という一文でまとめている。笑いに変えてはいるが、その裏でいちばん青ざめていたのは間違いなく本人だろう。 海外の反応 1. やらかし名無しさん 次からは、注射する前に薬を指で差して、名前を声に出してから使うといい。頭の中で確認したつもりになるのがいちばん危ない。声に出すと、間違いに自分で気づける。 2. やらかし名無しさん(>>1への返信) それ、日本の鉄道の運転士がやっている指差し確認そのものだ。指を差して声に出すだけで、単純な作業のミスが八割以上減ったという研究があるらしい。あれは形式ばった儀式ではなく、ちゃんと効く手順なんだと思う。 3. やらかし名無しさん(>>2への返信) 自分も朝の薬を飲むとき、車の中で一人「いま飲んだ」と声に出すようにしている。そうしないと三十分後には飲んだかどうか本気で思い出せなくなるので。声に出した記憶のほうが残りやすいのは実感としてある。 4. やらかし名無しさん そもそも二人分を同じタイミングで用意しないほうがいい。夫は朝で妻は夜、あるいは夫は日曜で妻は土曜。同じ机の上に二人分の箱を並べないというだけで、この事故は起きようがなくなる。 5. やらかし名無しさん 薬剤師をしている。この種の薬を最初から多めの量で始めないのは、危険だからというより、体が慣れるまでの負担が大きいからという理由が中心だ。とはいえ吐き気や嘔吐がひどくなれば、それ自体が体にこたえる。病院で吐き気を抑える処置と水分を入れてもらえたなら、そこはまず落ち着いていい場面だと思う。 6. やらかし名無しさん(>>5への返信) 投稿者本人から続報が出ていた。緊急外来で吐き気を抑える処置と点滴を受けて、検査の数値はどれも正常だったそうだ。奥さんの希望で早めに帰宅したとのことなので、少なくとも最悪の展開にはなっていない。 7. やらかし名無しさん 掲示板に書き込んでる場合じゃないだろう。今は奥さんのそばにいてやってくれ。 8. やらかし名無しさん(>>7への返信) 「ねえ、救急車もう呼んだ?」「ちょっと待って、いま掲示板に書いてるところだから」……この夫婦の会話を想像してしまって、深刻な場面なのに笑ってしまった。 9. やらかし名無しさん(>>7への返信) 病院で過ごす時間の九割は、座って順番を待っているだけなんだが。投稿者も、廊下のストレッチャーの真横で、身動きひとつしない奥さんの隣に座って書いたと説明していた。二分で書ける長さだと思う。 10. やらかし名無しさん 気持ちは分かるけれど、救急車を呼ぶ場面だったかというと正直微妙だと思う。自力で歩けないほどでなければ車で行ける。急いで診てもらうべき状況ではあっても、一分一秒を争う状況とは少し違う。 11. やらかし名無しさん(>>10への返信) 投稿者いわく、家の車がもう寿命寸前でエアコンも壊れていて、しかも奥さんがベッドから出ること自体を嫌がっていたらしい。その状態で本人に「歩いて車まで来て」と言えるかというと、自分には言えない。 12. やらかし名無しさん(>>10への返信) 体が慣れていない状態でいきなり多めの量が入ったときの吐き気は、甘く見ないほうがいい。水すら受けつけない時間が続けば脱水になるし、もともとの体調によっては心臓に負担が出ることもある。念のため診てもらう判断自体は責められない。 13. やらかし名無しさん 薬の置き場所を物理的に分けるところから始めたほうがいい。色の違う入れ物に移して、名前を大きく書いて、そもそも別々の棚に置く。同じ引き出しに一緒に入っている限り、いつかまた混ざる日が来る。 14. やらかし名無しさん 注射のペンも、喘息の吸入器みたいに薬の種類ごとに色を決めてほしいと本気で思う。見た目がそっくりで中身がまるで違うものが同じ形で売られているのは、使う側の注意力に頼りすぎた設計だ。 15. やらかし名無しさん そもそも、どうして奥さんは自分で注射しないんだろう。自分のぶんは自分で確認してから使うのが、いちばん取り違えが起きにくい気がするけれど。 16. やらかし名無しさん(>>15への返信) 針が怖い、注射を見ると血の気が引いて倒れてしまう、手や指がうまく動かない。だいたいこの三つのどれかだ。奥さんが使っているのが関節リウマチの薬だというなら、三つ目である可能性がかなり高いと思う。 17. やらかし名無しさん 自分は同じ系統の薬を長く使っていて、量を減らしていた時期にうっかり以前と同じものを使ってしまったことがある。慣れている自分ですら丸二日は動けなかったので、久しぶりの人にはかなりこたえるはずだ。奥さんが気の毒でならない。 18. やらかし名無しさん 医療の現場では薬を渡す前に、正しい相手か、正しい薬か、正しい量か、正しい使い方か、正しい時間か、を毎回確認すると教わる。家庭でも同じ順番で声に出すだけで、この手の取り違えはかなり減らせると思う。 19. やらかし名無しさん うちは父の薬と母の薬を同じ箱にまとめて入れていて、去年ついに取り違えが起きた。幸い大事には至らなかったけれど、それ以来ケースを別々の部屋に置いている。「同じ場所に置かない」は本当に効く。 20. やらかし名無しさん 笑い話として流している人が多いけれど、薬の取り違えは本来かなり重い事故だと思う。今回はたまたま奥さんが無事だっただけで、次に同じことが起きたときも同じ結末になるとは限らない。 21. やらかし名無しさん(>>20への返信) 同意する。ただ、責めるだけだと同じことがまた起きる。誰がやってもいつかは間違える前提に立って、手順のほうを作り替えるのが結局いちばん効く。ここのコメントがその方向に集まっているのは悪くない流れだと思う。 22. やらかし名無しさん 毎週きちんと奥さんの注射を引き受けてきた人が、一回だけ箱を間違えた話だ。責める気にはなれない。ただ、この一回を無駄にしないよう、次からの手順を必ず変えてほしい。奥さんが早く楽になりますように。 まとめ 毎週の注射を夫が担当している家で、二人分をまとめて用意した結果、妻に夫の糖尿病の薬が入ってしまったという話。しかもその薬は、妻が二年前に体に合わずやめていたものだった。海外の反応は「名前を指で差して声に出せ」「打つ日と時間そのものを分けろ」「そもそも保管場所を分けろ」という具体的な再発防止策で埋まり、日本の指差し確認まで引き合いに出された。一方で「救急車まで必要だったか」という冷静な指摘や、「笑い話として流すには重い事故だ」という声もあった。結末としては検査の数値も正常で、命に関わる事態にはならなかった。 ※この記事は海外の投稿を紹介したもので、薬の使い方や体調が悪くなったときの対処を説明するものではありません。処方された薬の量や使い方を自己判断で変えたり、この話を参考に真似したりしないでください。誤って別の薬を使ってしまった、家族に使わせてしまったといった場合は、自己判断で様子を見ずに、医療機関や薬局、中毒110番などの相談窓口に連絡してください。 元ソース: やらかした:妻に、妻の薬ではなく自分の糖尿病の薬を注射した The post 薬が入り終わるまでの時間が、いつもと違った——押し当てた瞬間に夫婦そろって気づいた間違い appeared first on やっちまった!海外のやらかし告白.…