クリスマスの翌日、12月26日。米国のある酒屋は、驚くほど客が来なかった。シフト終わりまで暇を持て余した店員2人が、遊び半分でレジに商品を打ち込み始める。ミニボトルを何度も、次に安いカクテルの箱を何度も。ここまではよくある暇つぶしだった。ところが同僚が「システムに高いワインが残ってるはずだ」と言い出したあたりから、画面の合計金額が現実から離れていく。最終的にレジに表示されたのは、約2,800万ドル——日本円でおよそ42億円である。 ※注:POSレジは「販売時点情報管理システム」の略で、バーコードを読むと会計・在庫・売上記録が同時に動くタイプのレジのこと。日本のコンビニやスーパーのものと基本は同じ。会計の取り消しや返品には「一度に扱える金額の上限」や店長の権限が設定されていることが多く、その日の売上は本部へ自動的に集計される。つまり店員の判断だけで「なかったこと」にはできない。「ショット」は一口で飲み切るサイズの強い酒。記事中の日本円は1ドル150円で概算した。 何をやらかした? 📌 暇すぎた12月26日の酒屋で、店員2人がふざけてレジに商品を打ち込み続け、合計が約2,800万ドル(約42億円)に膨らんだ。投稿者は冗談で「あとはEnterキーを1回押すだけ」の画面まで進めていたのだが、そのことを知らない同僚が同じ画面に行こうとしてEnterを押してしまい、そのまま会計が成立。取り消しには1回100万ドル(約1億5000万円)の上限があり、返品処理を何十回も繰り返す羽目になった。 事の発端 クリスマス翌日の酒屋は、驚くほど客が来なかった 投稿者が働いているのは酒屋である。そしてその日は12月26日。投稿者いわく「26日だからか、今日はやけに客足が鈍かった」。買い出しの山はもう前日までに過ぎていたのだろう。 シフトの終わりが近づいても、店内には特にやることがなかった。投稿者と同僚の2人、あとはずらりと並んだ酒の棚。この状況で人間が思いつくことは、だいたい決まっている。 ミニボトルを、客がいるふりで何度もスキャン 投稿者は、同僚を客に見立ててミニボトル(小瓶の酒)のバーコードを何度も読み込ませた。「この人がこんなに大量に買っていったら、いくらになるんだろうね」というごっこ遊びである。 ノリを続けるため、次は1本3ドル(約450円)のショットが40本入った箱を、これまた何度も打ち込んだ。ここまでで合計は約2,500ドル、日本円にして約38万円。まだ、笑って画面を消せる金額だった。 やらかしの一部始終 「システムに残ってる高いワイン、探そうぜ」 ここで同僚が名案を思いつく。過去に売れて、商品データだけがシステムに残ったままになっている高額ワインを探そう、というものだ。 探すとすぐに見つかった。1本1万ドル近い、日本円で約150万円のワイン。同僚はその数量欄に、このレジで入力できる上限である999を打ち込んだ。この時点で合計は約900万ドル、およそ13億5000万円。2人は腹を抱えて笑っていた。「本当に、どうしようもなく暇だったんだ」と投稿者は書いている。 そして同僚は、もう1本見つけてくる。今度は2万ドル近い、約300万円のボトル。もちろん数量は999。合計は約2,800万ドル(約42億円)まで跳ね上がった。 「あとはEnterを1回」の画面まで進めてしまった ここから先は自分の落ち度だ、と投稿者は正直に書いている。彼はふざけて、「客が現金でいくら払うか」を確定する画面の、一歩手前まで進めてしまったのだ。 このレジは、何も入力しなければ「客が全額を現金で支払った」と自動的にみなす作りになっている。つまりこの時点で、2,800万ドルの会計が成立するのを止めていたのは、Enterキーを押すか押さないかだけだった。 同僚は、投稿者がすでにそこまで来ていることに気づいていなかった。自分も同じ画面まで進めようとして、Enterキーを押した。 帳簿上、2,800万ドルの現金がレジの残高に流れ込んだ。 投稿者が「お前、今なにやった!」と叫び、同僚は自分がしたことを理解して目を見開いた。 1回100万ドルまでしか戻せない 2人はすぐに取り消しにかかった。ところが、返品として一度に処理できる金額には100万ドル(約1億5000万円)という上限がある。当然といえば当然の設定である。2,800万ドル分の「売れた酒」を、一度に戻すことはできなかった。 上限を把握した投稿者は、そこから100万ドルずつの返品処理をひたすら繰り返した。何十回も。棚にあるはずのない酒が1本残らず「返品」され、在庫数の表示がマイナス999から0に戻るまで、延々と。 その後 在庫は元通りになった。だが、消せないものが残った。その日の売上レポートには、2,800万ドルの売上とほぼ同額の返品が並ぶ。日次の数字もグラフも完全に壊れる。上層部が問い合わせてこないわけがなかった。 投稿者は、翌朝の開店前に店長を店の前で待ち伏せして、自分から説明することにした。というのも、その日に電話で報告するのは現実的に難しかったのだ。普段の店長は長期の病気休職に入っていて、その日いたのは別の店から来ている代理の店長。投稿者は彼女とあまり一緒に働いたことがなく、退勤後の連絡先も分からなかった。だから「開店前に捕まえるのが、いま自分にできる一番早い手だ」という判断だった。 スレッドの締めくくりで、投稿者はこう書いている。「自分たちに非があるのは100%認める。悪ふざけが度を越したし、働くべき時間に働いていなかった。何らかの処分は受けて当然だと思う」。そのうえで、最後の一行はこうだ。「どうか、私と私の仕事のために祈ってください」。 そして後日、追記が入った。店長は当然ながらいらだち、がっかりしていたという。ただ、投稿者が書いたところによれば、最悪でも上層部が集まって話し合ったうえで警告が出て、記録に残る程度で、それ以上のことにはならなさそうとのこと。 2,800万ドルの売上と2,800万ドルの返品が並ぶ12月26日のレポートは、たぶんこの店で長く語り継がれる。ただ、少なくとも2人の仕事は残った。 海外の反応 1. やらかし名無しさん その場ですぐ店長に電話すべきだったな。ミスは、相手が数字を見つけて怒り出してから反応するより、自分から先に動いたほうが絶対にいい。店長なら、レポートに数字が出る前に関係各所へ「これはミスです」と連絡を回せた可能性がある。 2. やらかし名無しさん(>>1への返信) 投稿者本人がコメント欄で「そうしたかったんだけど、その日の店長は普段の人が長期休職中で、別の店舗から来ている代理の人だった。帰ったあとにどう連絡すればいいのか分からなかった」と返してた。状況を考えると、開店前に捕まえに行くのは十分に先手だと思う。 3. やらかし名無しさん 経理や財務の部署なら、こういう取引はまるごと無効にできるはずなんだよな。君が最初でも最後でもない。ただ、明日が最終出社日にならないことだけは祈っておく。 4. やらかし名無しさん 正直、自分たちで直そうとする前に上へ報告したほうが早かったと思う。裏側には、現場のレジからは触れないもっと楽な直し方が、まず間違いなくある。 5. やらかし名無しさん(>>4への返信) 本当にそれ。100万ドルずつ28回返品するより、権限のある人が1回操作するほうが記録もきれいだし説明も短くて済む。善意でやった修復が、いちばん面倒な形で証拠を積み上げちゃったのが切ない。 6. やらかし名無しさん 2,800万ドルでよかったんだよ。これが50ドルとか500ドルだったら「もしかしてレジから抜いたのでは」と疑われる金額になる。桁がここまでいくと、誰がどう見ても操作ミス。金額のバカバカしさが逆に君を守ってる。 7. やらかし名無しさん 人生の大半を小売と接客で過ごしてきた身として言うけど、これめちゃくちゃ笑ったし、めちゃくちゃ分かる。暇な日のレジ前で人間が思いつくことって、だいたいこの系統なんだよ。 8. やらかし名無しさん(>>7への返信) 分かる。閉店前の1時間、誰も入ってこない店内のあの空気。あれは何かをやらせにくる空気なんだ。悪意ゼロのまま一線を越えるのは、たいていあの時間帯。 9. やらかし名無しさん 自分は人を使う側の人間だけど、この報告を受けたら笑って「このアホが」と言って、ボタンを2回押して消して、その日はふつうに帰る。それくらいの話だと思うよ。 10. やらかし名無しさん(>>9への返信) 自分も似た立場だけど、たぶんクビにはしないし大笑いする。ただ、この手の「人の手が滑る」案件が出るたびに、どこかの担当者が再発防止の仕様変更を任されて白髪を増やすんだよな。在庫数を超える数量を弾く仕組みが1つ増えて、社内の課題管理表に一件追加される。 11. やらかし名無しさん 前の職場で、同僚が不正利用された口座の残高をゼロにする作業中、金額の入力欄に社内の口座番号をそのまま貼り付けたことがあった。580億ドル(約8兆7000億円)が社内の処理用口座から閉鎖済みの口座へ動いて、すぐ戻ってきた。当時の会社の企業価値の半分を超える額で、社長室から直接「何が起きたのか、そもそもなぜシステムが通したのか」と問い合わせが来た。誰もクビにはならなかったよ。 12. やらかし名無しさん(>>11への返信) 「そもそもなぜシステムが通したのか」に全部詰まってる。企業価値の半分が貼り付け1回で動くなら、押した人間より先に、押せてしまう作りのほうを直す話だよ。 13. やらかし名無しさん スーパーのレジを止めてしまったことがある。トランポリン5万台を一度に打ち込んだら、システムが処理しきれずに固まった。店長には呆れられたけど、他の従業員には大ウケだった。まだ開店前だったのが唯一の救い。 14. やらかし名無しさん(>>13への返信) トランポリン5万台を在庫として抱えている店を想像して笑った。倉庫どころか、町がひとつ埋まる規模じゃないか。 15. やらかし名無しさん このレジ、会計を通したあとで丸ごと取り消す機能がついてないの? 小売経験者として涙が出てくる。あるはずの機能が無いせいで、100万ドルずつ何十回という地獄が生まれてるじゃないか。 16. やらかし名無しさん というより、一定額を超える会計には確認画面を出す設定があっていいはずなんだよ。ふつうの小売のレジなら、高額すぎる売上を「怪しい」と判定して一度止める機能くらい標準でついてるものだと思ってた。 17. やらかし名無しさん(>>16への返信) それな。Enterキー1回で2,800万ドルが確定する設計、真面目に働いてる日でも普通に事故る。今回はふざけてたから笑い話で収まってるけど、レジが混んでる日に同じことが起きたらもっと厄介だったと思う。 18. やらかし名無しさん 「数量999」のところで、頭の中であの数え歌が流れ出した。英語圏には「壁にビールが99本、1本取って回して、残り98本……」と延々と減らしていく数え歌があるんだけど、999本スタートだと長距離バスの旅でも歌い切れないぞ。 19. やらかし名無しさん 2,800万ドルの会計を通してしまった対処が、「詳しい人に取り消してもらう」ではなく「さらに何十回も取引を積む」なのが、最高に人間らしくて好き。パニックのときって、なぜか目の前の操作だけで全部片づけようとしちゃうんだよね。 20. やらかし名無しさん 昔、同じことをやって本当に会計が通ってしまった日を一生忘れない。トーストの42セント(約60円)。うちはトーストなんて売ってない。そのレポートは地域統括のマネージャーに見られた。42セントを手渡しで払って解決しようとするバカがいて、店長は深夜1時の締め処理までに直そうと半狂乱だった。……1週間後、いちばん怖いと評判の総支配人が、それを見て笑っていたと聞いた。 21. やらかし名無しさん(>>20への返信) 42セントと2,800万ドルで、現場の混乱っぷりがまったく同じなのが救いになる。金額の桁は関係なくて、「数字が合わない」こと自体が人を焦らせるんだな。 22. やらかし名無しさん 正直に言うと、そこまでひどい話だとは思わない。バカなことをやって、自分で直して、たぶん学んだ。自分は店長の経験こそないけどレジの管理側をやっていて、この連絡を受けたら同じように手作業で返品させたと思う(もうやってるけど)。そのあと同僚と「あいつ本当にアホだな」と笑って、その日の現金が合っていればそれで終わり。ちゃんと恥じているようだし、先に自分から言いに行くなら、それで話は終わるんじゃないかな。カード決済が絡んでいなかったのが本当に幸運だった。あれが混ざると、後始末の面倒くささが段違いになる。 まとめ 暇な12月26日の酒屋で始まったごっこ遊びが、Enterキー1回で約42億円の売上として確定してしまった一件。海外のコメント欄は、笑いながらも「自分で直そうとせず、まず上に言え」という助言でおおむね一致していた。同時に、「そもそもEnter1回で通る作りのほうが問題だ」という声も多い。人の手が滑る前提で作られていない仕組みは、いつか誰かの暇な午後に見つかってしまう。 元ソース: やらかした:職場でふざけて2,800万ドルの会計を通してしまった The post 「システムに残ってる高いワイン、探そうぜ」暇すぎた12月26日の酒屋で、レジの合計が42億円になった話 appeared first on やっちまった!海外のやらかし告白.…