1 名前:昆虫図鑑 ★:2026/07/22(水) 17:03:57.58 ID:MyqowPNY.net 太宰治の『人間失格』が海外で翻訳され、好評を博している。中でも韓国では爆発的にヒット。主な読者層は20、30代の若者たちと言われる。彼らの心に刺さるものは何か。同作を今年、韓国語に翻訳した日本近代文学研究者の金容安氏が読者レビューを基に読み解く。 韓国出版界のミステリー 韓国の出版社、民音社編集部の関係者によると、世界文学全集シリーズとして刊行した『人間失格』が現在までに142刷を数え、販売部数は60万部を超えた。出版社側も当初はヒットどころか、売れ行きの伸びすら予想していなかったのに、2021年から急に販売を伸ばしたのには驚いたそうだ。韓国の出版界では、前代未聞の出来事と受け止められている。 韓国で翻訳されてから20年以上たつが、当初の評価は芳しくなかった。古典としての名声どころか、主人公が目的もなく日々を過ごし、非生産的で暗く退廃的な生活を過ごし、「鬱屈(うっくつ)した物語」と酷評されてきた。 ところが、近年は20~30代の若者層の心を引きつけて大ヒット。民音社版に続き、筆者による翻訳書が今年5月、「時間と空間社」から新たに出版された。この小説が今まさにベストセラーとなっている理由を、読者層の底流と小説そのものの魅力という2つの観点から探ってみたい。 2030現象 韓国で最近、最もホットな年齢層として、20代と30代をひとまとめにした「2030」という言葉がある。彼らは単なる「世代」を超えて、一つの「現象」として捉えられている。 この世代は、韓国が既に豊かになった時代に生まれたため、貧困を経験したことがないものの、幼いころから際限のない競争を強いられてきた。さらに経済が低成長期に入るタイミングで社会に第一歩を踏み出した世代であり、高い学歴やスキルを備えながらも就職が非常に厳しい「苦労の多い世代」でもある。 未来のために貯蓄するというよりも、現在の生活の質を重視する「YOLO(You Only Live Once:人生は一度きり)」という価値観を強く持っている。就職しても「一生勤める場」とは考えていない。職場は自己実現や生計の手段にすぎず、人生を丸ごと捧げる考えはないため、ワーク・ライフ・バランスを徹底的に重視する。「スマートな世代」と言われるが、上の世代からは「ハングリー精神がない」と批判されることもある。 しかし、一度ハマると恐ろしいほどの没頭ぶりを発揮することもある。自分にとって意味を見出せない集まりなどに時間を浪費するよりも、自己の成長や啓発に力を注ぐ。終身雇用の概念が消え去った時代において、唯一よりどころとなるのは自身の「実力」であるため、強い自我を確立するために努力を惜しまない。 こうした生き方は文学の消費にも表れており、韓国内の単行本および文学作品を最も積極的に購入、消費しているのは「2030世代」だ。文化体育省の統計によると、書籍購入に占める、この世代の比率は40~45%を占め、電子書籍の場合は60~70%に上る。 さらに2019年公開のアニメ映画『HUMAN LOST 人間失格』と、21年のテレビドラマ『人間失格』を契機に、書籍の人気に火が付き、21年からベストセラーの仲間入りを果たす。SNSやYou Tubeを通じた再拡散も相まって、人気が加速していった。 主人公・葉蔵への共感 『人間失格』は2030世代の心をどう引き付けているのだろうか。 20~30代の女性の中には、職場で常に笑顔を絶やしてはならないという無言のプレッシャーを受けたり、接客などで本音を押し殺して笑顔で居続けるように求められていたりする人たちがいる。「燃え尽き症候群」の予備軍であり、社会で求められる良い人の仮面「ペルソナ」をかぶり続ける重圧を感じているのだ。こうした人々の目に映る『人間失格』の主人公・大庭葉蔵の涙ぐましい「道化の演技」は、強烈な共感を伴って迫ってくる。 レビューにはこうある。 「まるで自分の内面をスキャンされたようでぞっとした」 「世の中になじめず孤独の中で破滅していく姿に、自分自身が重なるようだった」 葉蔵の無気力、疲労感、他人の目への意識、絶望、幻滅、疎外感は一部の読者にとっては、生々しい心象風景そのものだ。連帯感を覚える人もいるだろう。それゆえに、葉蔵がさまよう姿や放蕩(ほうとう)、自殺未遂、薬物服用などは、自らの鬱憤(うっぷん)や気晴らしの「代役」でもあるかのようだ。だからこそ、息をひそめるようにして最後まで読んでしまう人もいるはずだ。 「苦しいのは自分だけではないと思えた」 「葉蔵は小説の中ではく製にされた異邦人のような存在ではなく、まさに自分の隣で胸の内を明かし、鬱憤をぶちまける、共感し合える親友」 続きはソースで 引用元:…