病院のベッドで目を覚ます。 自分の名前が分からない。鏡に映る顔にも見覚えがない。目の前にいる人たちは家族だと名乗り、あなたの過去を次々と語るが、どの話にも実感がない。 身体だけは昨日までと同じだ。しかし、好きだったものも、嫌いだったものも、大切にしていた約束も覚えていない。性格まで以前とは変わっていたら、そこにいる人は本当に「昨日までのあなた」なのだろうか。 私たちは普段、自分が昨日と同じ人間であることを疑わない。だが、何を根拠にそう信じているのかと聞かれると、答えるのは意外に難しい。 自分とは、記憶なのか。身体なのか。性格なのか。それとも、それらをすべて失っても残る「何か」があるのだろうか。…