
1: 征夷大将軍 ★ H36gwIZl9 2026-05-17 07:57:54 DIAMOND, INC.2026年5月15日 15:15 ● 29歳でデビュー 芽が出たのは40歳ごろの遅咲き作家 江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ 1894〜1965年)三重生まれ。本名・平井太郎。早稲田大学政治経済学部卒。代表作は『D坂の殺人事件』『怪人二十面相』『人間椅子』など。日本の推理小説の先駆者として知られる。幼いころは母親が海外の探偵小説や日本の怪奇小説などを読み聞かせた。造船所や貿易会社、ラーメンの屋台などさまざまな職を転々とするが、推理小説への情熱は冷めず、大正12(1923)年、『二銭銅貨』でデビューして一躍注目を集める。その後、探偵小説や怪奇小説を次々と発表し、日本のミステリー文学に多大な影響を与える。昭和40(1965)年、くも膜下出血により70歳で死去。 ● 江戸川乱歩のおすすめ著作3選 ❶日本探偵小説の幕開けを告げる 暗号ミステリー ◯『二銭銅貨』(『江戸川乱歩傑作選』新潮文庫に収録) デビュー作。貧乏な青年2人が、1枚の二銭銅貨に隠された暗号を見つけ、謎解きをするというストーリー。二転三転していく先の読めない展開で、いま読んでも新鮮です。 ● ❷狂気と官能が交錯する 究極の偏愛劇 ◯『人間椅子』(『江戸川乱歩傑作選』新潮文庫に収録) 乱歩の代表作の1つ。とある女性作家のもとに1通の手紙が届くところから物語が始まります。そこには、1人の椅子職人が、自らつくった椅子のなかに体を隠し、座る客の動きや生活を感じとるという奇妙な告白が書かれていました。息もつかせぬ展開と驚きのラストに、あっと声をあげたくなるはず。 ● ➌禁断の美に魅入られた グロテスクなユートピア ◯『パノラマ島綺譚』(角川ホラー文庫) 地上に理想の楽園「パノラマ島」をつくり上げた夢想家の男。ところが、美と幻想に包まれたこの楽園は、狂気的な企みによって構成されていたことが徐々に明らかになっていきます。谷崎潤一郎『金色の死』に影響を受けて描いた作品。怪奇的で美しい、文豪による「言葉の人工楽園」に、ぜひ足を踏み入れてみてください。 ● 【話題の引き出し★豆知識】 遅咲きの異端児が遺した 次世代への大いなる希望 下積み時代を乗り越えて新人を育てる大先輩に人気作家になった乱歩は、後進の育成にも力を入れるようになりました。推理小説誌『宝石』の編集長を務めていた時代、新人作家に執筆のチャンスを与えています。 また、乱歩の寄付金をもとに昭和29(1954)年に発足した「江戸川乱歩賞」の副賞は賞金1000万円と、数ある文学賞のなかでもトップクラスの高額でした(令和4〈2022〉年以降は500万円に減額)。ニートのような生活を送っていた乱歩が人気作家になり、多くの若手作家を育てるようになったというのですから、なんとも人生とは数奇なものです。 ● 【解説】挫折の経験が育む 「真の共感力」とリーダーシップ 乱歩が「ニートのような生活」から一転して大作家となり、後進の育成に注力したというエピソードは、現代のリーダー像に大きな示唆を与えてくれます。 ビジネスにおいて、順風満帆なキャリアだけを歩んできた人は、時に他者のつまずきや弱さを理解しきれないことがあります。しかし、乱歩のように暗中模索の下積み時代を経験した人物は、才能が花開く前の若手の苦悩に深く共感し、そのポテンシャルを見出す「真の眼力」を持ち合わせています。 挫折や迷走の経験は決してキャリアの汚点ではなく、将来リーダーとして組織を牽引し、メンバーの背中を押すための強靭な土台(レジリエンス)となるのです。 ● 個人の成功から業界の「エコシステム」構築へ さらに注目すべきは、彼が私財を投じて「江戸川乱歩賞」を創設し、日本の推理小説界全体の底上げを図った点です。これは現代のビジネスに置き換えると、自社(自分)の利益やシェアだけを独占するのではなく、業界全体の未来を見据えた「エコシステム(生態系)」を構築する視点だと言えます。 自らが開拓した市場に次世代の才能を招き入れ、共にパイを大きくしていく。真に優れたビジネスパーソンは、一人のプレイヤーとして頂点を極めた後、自らが「プラットフォーム」となり、新たな才能が活躍できる土壌を作ります。 乱歩の数奇な人生は、自らの成功体験や資産をいかに次世代へ還元(ペイフォワード)していくかという、私たちが目指すべきキャリアの究極の到達点を教えてくれます。 …