1: 七波羅探題 ★ xLsrA6DV9 2026-03-03 21:34:16 産経新聞2026/3/3 08:30 労働者のまちで知られる大阪・西成の玄関口の一つ、大阪メトロ動物園前駅前に立つと、マフラーやジャケットに身を包んだグループがキャリーケースを引きながら、路地へと流れ込む様子が目に入った。辺りは「あいりん」「カマ」と呼ばれる釜ケ崎地区。日雇い労働者向けの簡易宿泊所がひしめく街として、広く認識されていたものの近年、その趣は変わりつつある。 釜ケ崎に接する山王エリアに数カ月ほど前、黒壁の住宅群が完成した。いずれも3階建てで計19軒。不動産登記簿などによると、敷地は令和6年に分筆され、複数の所有権が中国・深?に住む人物のもとへ移っていた。 「流葉」「蒼蓮」…。扉前の表札には、日本ではなじみの薄い単語が記され、玄関にはこの建物が「特区民泊」を示す紙が貼られている。 「いずれも中国人観光客向けの民泊。どんどん増えているよ」 近くの70代女性はそう説明した上で続ける。 「観光客が路上にごみを放置したり、小さい子供が夜中に泣きわめいたりして、トラブルになった話を聞いた」 労働者のまちとしてにぎわった西成には、中国人観光客らの宿泊需要に応じるための特区民泊が乱立。昨年11月には台湾有事が存立危機事態になり得るとした高市早苗首相の国会答弁に中国政府が反発し、日本への渡航自粛を呼びかけたが、中国出身者によるビジネス展開は変わらずに続く。 特区民泊は「国家戦略特区」制度に基づき、平成28年に始まった。全国の認定施設の9割以上が大阪市内に集中。住宅の一室などが充てられ、フロントや宿泊施設の表示は必要ない。市内の約27%の2091施設(令和7年12月末時点)が西成区に所在する。 ただ苦情は絶えず、市によると、令和7年度の苦情件数は昨年12月末時点で469件。6年度の399件を超えた。 それまで特区民泊推進の立場だった市は一転、8年5月29日で新規申請受付の停止に踏み切ることを決定。部屋に必要な設備が不足している▽苦情に対応しない-などの違反に指導を行い、改善がない場合は業務停止命令や認定取り消しなどを行うとした。 旅行の拠点やビジネスの進出先として、それほどまでになぜ、西成が中国出身者に魅力的なエリアと映るのか。 中国・福建省出身で30年ほど前に来日し、西成区内で不動産業を営みながら中国人経営者らでつくる親睦団体「大阪華商会」の会長も務める林伝竜さん(61)は「大阪・ミナミの繁華街に近い割にほかの地域と比べて土地の価格が安く、買収が容易なために民泊施設が建てやすい」と答える。また釜ケ崎ではかつて、労働者による暴動も起きたが「外国人はそうした地元事情をさほど気にしない」(別の不動産業者)のだという。 市のデータによると、市内に居住する中国籍の住民は令和7年9月時点で5万9789人で、10年前と比べて約2・2倍に増加。西成区に限ると4211人が居住し、2年9月以降の5年間では約1・7倍に増えた。 林さんはもともと、建設現場の労働者として西成に居着き、カラオケ居酒屋や不動産事業などで成功を収めた。そうした経緯から林さんは「西成は『第2の故郷』。恩返しがしたい」と考えているが、〝外国資本〟の浸透に冷ややかな視線を向ける人も少なくない。 西成で商売を続ける日本人の女性によると、西成に宿泊するインバウンド(訪日客)は、飲食や買い物は難波などの繁華街で楽しむため、地元での消費はさほど期待できないとされる。 また多くの賃貸住宅のオーナーが、部屋を収益性の高い民泊へと切り替えて家賃が上昇。一般の労働者らが住みにくくなった。女性はこう怒りをにじませる。 「結果的に昔から住む日本人が苦しめられるようになった」(藤崎真生)…