1: 七波羅探題 ★ ZX9j9DR79 2025-12-03 06:00:02 読売新聞 2025/12/03 05:00 悪質な運転者を処罰する危険運転致死傷の対象に、ドリフト走行が追加される見通しとなった。重大事故を起こしたのに、「法律に規定がない」として裁判所に過失運転と判断された事例などを踏まえ、自動車運転死傷行為処罰法に新たに規定を設ける。法務省は近く、法制審議会(法相の諮問機関)の部会に改正法の骨格案を示す。(山下真範) 「極めて危険なのは明らかだが、規定がない」 大阪高裁は2015年7月の判決で、ドリフト走行の車が起こした事故についてそう指摘し、検察側が求めていた危険運転の適用を否定した。 事故は13年9月24日朝、京都府八幡市の交差点で起きた。少年(当時18歳)の運転する乗用車がドリフト走行の末に暴走し、ガードレールに衝突。車道と歩道との境にあった柵をなぎ倒し、集団登校の列に突っ込んで小学生5人に重軽傷を負わせた。 危険運転には、ドリフト走行を直接的に処罰対象と定めた条文がない。検察側は、車が制御不能の状態だった点に着目し、危険運転の要件の一つである「制御困難な高速度」にあてはまると主張した。 だが、京都地裁は14年10月の判決で、車の速度は「時速40キロを超えてはいなかった」とし、過失運転を適用。高裁も「高速度とはいえない」として地裁の判断を支持し、過失運転で懲役1年6月以上2年6月以下の不定期刑が確定した。 運転ミスに適用される過失運転致死傷の法定刑の上限は拘禁刑7年で、危険運転致死傷の同20年と大きな開きがある。交通事故で当時11歳の娘を亡くし、法制審部会の委員を務める波多野暁生さん(48)は「ミスや不注意とは次元が違う悪質な運転なのに、危険運転が適用されないのはおかしい。是正が必要だ」と語る。 こうした事態を受け、危険運転致死傷の要件見直しを議論する法制審の論点にドリフト走行に関する規定の創設が盛り込まれた。法務省は今年3月に始まった部会で、ドリフト走行などが絡んだ死傷事故の裁判例を紹介。京都の事故を含め、14年1月から今年3月までに判決が出た15件のうち、危険運転が適用されたのは3件にとどまっていた。 検察官や学者の委員からは「危険性や悪質性を正面からとらえた規定を設ける必要がある」といった意見が相次ぎ、10月までの計6回の部会では、規定の創設を支持する声が大勢を占めている。 今後は、具体的にどのような文言の規定を設けるかが焦点となる。雪道でスリップしたり、障害物をよけようと急ハンドルを切ったりしてタイヤが横滑りした場合まで処罰されないよう、悪質性の高い走行に処罰対象を限定する文言が必要との指摘が出ている。 京都府八幡市で起きた事故に対する司法判断と法改正のイメージ 元同志社大教授の川本哲郎・京都犯罪被害者支援センター副理事長は「ドリフト走行が危険運転の処罰対象になれば、悪質な運転者を厳正に処罰できるようになる。公道でのドリフト走行が危険であるという認識が社会に広まり、死傷事故を未然に防ぐという抑止効果も期待できるだろう」と話している。 ◇ 部会では、高速度運転や飲酒運転に関する適用要件に数値基準を設けることも審議している。法務省は、議論の取りまとめを踏まえ、自動車運転死傷行為処罰法改正案を来年の通常国会に提出したい考えだ。 ◆ドリフト走行 =アクセルやハンドルなどを操作し、意図的に車のタイヤを横滑りさせる運転方法。公道で行えば、一般的には「安全運転義務違反」や「共同危険行為」といった道路交通法違反で摘発される。…