1: 昆虫図鑑 ★ 2025/09/25(木) 16:17:11.33 ID:gQ/4R2Rw 韓国労働市場の悲劇はその狭さから始まる。5000万人という人口規模は先進国のうち最も小さい労働市場だ。半島の北側がふさがっているため、韓国は地理的に閉じ込められている島国だ。狭いというのは個人の立場ではこの職場以外のオプションが足りないという意味だ。この狭い選択肢の行き止まりの道はたびたび「解雇は殺人だ」という鉢巻きをして命がけでいまの職場を死守することにつながる。「外は地獄」だからだ。 これに対し日本は1億2000万人、中国は14億人の人口が支える労働市場だ。台湾は理念で分かれていても労働市場は事実上中国本土とつながっている。西欧と英連邦諸国は単一労働市場と同じ言語圏でまとまっている。 狭い韓国の労働市場で労働者は断崖に追いやられないように戦い、大きくなった解雇コストのため企業は新人採用を敬遠する。大企業・正規職・労働組合で制度化された上層労働市場のベビーブーム世代は一方では労働運動のおかげで、別の一方では輸出大企業の善戦のおかげで、世界で最も急激な号俸制賃金構造の最上端に上がっている。このため労働市場と企業組織は逆三角形の構造を帯びることになり、その不均衡はますます深まっている。このような構造の中で青年は少数の大企業正規職になるため幼少期と若い時期をすり減らしている。 この硬直的で不公平に構造化された上層労働市場を柔軟化できるだろうか。正規職と非正規職の境界が緩和され、大企業と中小企業間の上下方向の人材交流がさらに拡大することはできないだろうか。解決される兆しがないこの質問をいったん保留して別の選択肢を考慮してみよう。労働市場の空間的拡大戦略だ。韓国・台湾・日本の労働市場を統合して1億9000万人、韓国の労働市場の4倍近い規模の労働市場を作ってみようということだ。反論があふれるだろう。3カ国は政治的反感、言語・地理的障壁、産業間賃金格差、労働市場制度の違いもまた無視できないからだ。 東アジア3カ国は互いを必要とする。漢字、稲作、儒教文化を共有し、40年以上自由民主主義体制を運営してきたほか、朝中ロの権威主義同盟と向き合っている。日本は地域の盟主として同盟が必要で、台湾は中国経済に吸収されないために味方が必要だ。台湾と日本の青年は韓国の高賃金雇用を、韓国と台湾の青年は日本の完全雇用に近い労働市場を必要とする。 そこで3カ国の労働市場統合を検討してみようということだ。労働市場統合が生産物市場の経済統合につながれば3カ国の資本は協力と投資で新たな雇用を創出できる。大きくなった労働市場は個人に脱出口を提供する。3カ国で同じ職種と産業に競争企業が多いということは企業の立場ではしんどいことだが、個人の立場では似たような仕事をして同等の報酬を得られる所が複数存在することを意味する。ハイニックスを去った労働者がサムスン電子、東京エレクトロン、TSMCなど3カ国の企業に移動できるという事実だけでも心理的セーフティネットの役割をする。 もちろん国境、言語、文化、制度障壁は超えにくく見える障害物だ。だがある国で納入した年金記録が他の国で不利益なく認められ、同様の社会保障制度の保護を受け所得と資産の運営でも内外国人に同等な法的権利が保障されるならば不可能なことではない。 個人は転職に備えて関連カンファレンスと人的ネットワークを活用し潜在的雇用主との接点を広げ、会社内外のネットワークを管理することになるだろう。企業は外国人材定着プログラムを通じてスカウトを増やすだろう。人材が抜け出るだけに他の人材が流入し、労働と資本はより良い報酬と規制のない環境を求めて移動し、新たな労働と資本関係の均衡点を見つけられるだろう。この過程で競争力がある産業は人材を確保し、そうでない産業は淘汰されるだろう。企業は構造調整を経て、個人は高まった移動性で適材適所に位置して革新が促進されるだろう。 3カ国の労働市場統合が生産・消費市場の統合につながれば、輸出中心経済を内需中心に転換する契機にもできる。ブロック化する世界経済の中で対外依存度を低くし、分離化された1次(大企業・正規職)と2次(中小企業・非正規職)労働市場の解体を繰り上げるだろう。同時に、これは単純な経済連帯を超え、東アジア民主主義3カ国の地政学的・戦略的連帯の土台を提供できる。 個人にエグジットオプションが存在しなければ適当な賃金をもらっても行く所がない従属状態だが、多くのオプションがある世界は自由人だ。自由人は自身のアイデアを実現できる環境と組織を求めて現場経験とスキルを積み革新を追求するだろう。労働者のエグジットオプションが多い社会も革新の可能性が芽生える。 イ・チョルスン/西江(ソガン)大学社会学科教授…