1: パンナ・コッタ ★ f2OkIPXW9 2025-08-26 09:33:08 Aさんは現在70歳。長く勤めた大手電機メーカーでは営業本部長を務め、受け取った退職金は約3,000万円。投資歴は長く、現役時代に築いた個別株式や自宅不動産を含めた資産は1億円を超え、配当収入も年間60万円程度ありました。加えて年金収入も企業年金を含めるとおよそ336万円。経済的には何一つ不自由のない老後生活を送っていました。 Aさんは、都心から1時間圏内にある、とある高級老人ホームに入居していました。「悠々自適なゆとりのおひとり様」「万一の備えも万全」と、理想的な老後生活を送っているようにみえます。 しかし、入居から半年。担当の介護職員にAさんが漏らした言葉は、周囲からの想像とはまるで違うものでした。共有のカフェスペースのゴミを回収していたAさんの担当ヘルパーに、ふとつぶやきました。 「俺みたいになるなよ……」 Aさんの視線の先には同じホームに暮らすほかの入居者の横顔がありました。 「あの方はね、子どもが2人いてどちらも遠くに住んでいるそうなんだけど、月に1回くらい娘さんが訪ねてくるんだよ。孫娘が一緒に来るときや、花束を持ってくるときなんかもあってね。家族の誕生日もお祝いしているそうだよ」と入居者は囁きます。 Aさんはもともと体力には自信があった方で、現役時代は仕事一筋だったそうです。平日は深夜まで働き、土日もゴルフや接待。一度は結婚しましたが、妻はそんな生活に早々に嫌気がさしたのか、子どもをつれて離婚。ひとり息子との接点は月に1回養育費を送る際の交流のみだったといいます。 Aさん自身、正直なところ仕事での付き合いのほうが楽しく、子育てにかかわることをわずらわしくも思っていたため、おひとり様生活を満喫していたのですが……。養育費の支払いが終わってからは、気づけば年賀状のやりとりすらなくなっていました。 「俺には会いに来てくれる人は一人もいないんだよ。誰も俺とは一緒にいたくないそうだ」 その目には、寂しさと深い虚無がにじんでいました。 次ページ家族との“希薄な関係”に潜むリスク THE GOLD ONLINE…