1988年の映画『レインマン』に、飛行機に乗るのを嫌がる兄レイモンドが、ただ一社だけ名前を挙げる場面があります。「カンタス。カンタスは墜落したことがない」。オーストラリアの航空会社のことです。海外掲示板では、「オーストラリアのジェット旅客機では、死亡事故が一度も起きていない」という投稿が話題になりました。調べてみると、この話は大筋で合っています。ただし、いくつか条件がついていました。 ※注:元スレッドのタイトルは「オーストラリアのジェット旅客機では死亡事故が一度も起きていない。オーストラリア発着の全便と、オーストラリアの会社が運航する全便を含めて」というものです。この記事では、オーストラリアの事故調査機関の資料などで確認できた部分と、そこまでは言い切れない部分を分けて紹介します。内容は2026年10月時点のものです。 今日の知ってた? ✈️ オーストラリアの航空会社は、ジェット旅客機の定期便で、乗客・乗員が亡くなる事故を一度も起こしていない(2026年10月時点)。オーストラリアの事故調査機関も、「ジェット機の定期便で死亡事故が起きたことはない」としている。 🗓️ カンタス航空が最初のジェット旅客機を就航させたのは1959年7月。記録はそれから67年あまり続いている。 ⚠️ 条件は「ジェット機では」。プロペラ機の時代には死亡事故があった。カンタス航空の最後の死亡事故は1951年。国内では1968年にプロペラで飛ぶ旅客機が墜落し、26人が亡くなっている。 🚧 「事故ゼロ」でもない。2008年にはカンタス航空の旅客機が飛行中に急降下し、119人がけがをした。 🎬 この記録を広く知らせたのは、1988年の映画『レインマン』のセリフ「カンタスは墜落したことがない」だとされる。 背景:「カンタスは墜落したことがない」というセリフ 『レインマン』は、ダスティン・ホフマンが演じる兄レイモンドと、トム・クルーズが演じる弟チャーリーが、アメリカを車で横断する映画です。なぜ車なのかというと、レイモンドが飛行機に乗ろうとしなかったからでした。空港でチャーリーが「どの航空会社だって一度は墜落している」と説得すると、レイモンドは「カンタス。カンタスは墜落したことがない」と答えます。カンタス航空はオーストラリアの会社で、2人のいるシンシナティからロサンゼルスへは飛んでいません。こうして兄弟の長い車の旅が始まります。 このセリフには後日談があります。米紙の当時の報道によると、1989年6月、少なくとも15の航空会社が、この空港の場面を削った版を機内で上映しました。レイモンドが実在の墜落事故を挙げて、搭乗を拒む場面です。バリー・レビンソン監督は「映画全体の鍵になる場面だ」と反発しました。一方、カンタス航空だけは場面をカットせずに上映した、と伝えられています。 ただ、セリフは正確ではありません。カンタス航空は1920年、オーストラリア北東部のクイーンズランド州で生まれました。いまも飛んでいる航空会社の中では、世界でも指折りに古い会社です。複葉機や飛行艇を飛ばしていた時代には、1927年から1951年にかけて死亡事故を起こしています。第二次世界大戦中の損失も、その中に含まれます。最後の死亡事故は1951年、ニューギニアでの小型プロペラ機の事故でした。米ウェブメディアのスレートは2011年、このセリフについて「本当ではないし、本当だったこともない」と書いています。 正確に言い直すと、こうなります。カンタス航空は、ジェット旅客機を飛ばし始めた1959年から今まで、乗客・乗員が亡くなる事故を起こしていない。元スレッドの投稿は、この話をカンタス一社からオーストラリア全体に広げたものでした。 もう少し詳しく オーストラリア全体では、どこまで言えるのか。オーストラリア運輸安全局(ATSB)は、航空・鉄道・船の事故を調べる政府機関です。ATSBは2005年の発表で、大型機の定期旅客便について「ジェット旅客機の全損事故(機体が修理できないほど壊れる事故)も死亡事故もない」と述べています。別の調査報告書にも、「大型機の定期便の死亡事故は1968年が最後で、ジェット機の定期便で死亡事故が起きたことはない」とあります。その後のATSBの統計でも、定期便で人が亡くなった事故は、2005年に起きた小型プロペラ機の墜落が最後とされています。2026年10月の時点で調べた範囲でも、ジェット旅客機の死亡事故は見当たりません。 死亡事故はプロペラ機の時代に起きている。国内でとくに犠牲者が多かった旅客機の事故は、どれもプロペラで飛ぶ機体で起きています。1960年には、クイーンズランド州マッカイの沖に旅客機が墜落し、乗っていた29人全員が亡くなっています。1968年には、西オーストラリア州ポートヘッドランドの近くで、飛行中に右の主翼が折れて旅客機が墜落し、26人全員が亡くなりました。どちらも、ジェットエンジンの力でプロペラを回す「ターボプロップ機」です。先ほどの2005年の事故もクイーンズランド州で起きたもので、小型のターボプロップ機が墜落して15人全員が亡くなりました。1968年以降では国内で最悪の航空事故とされています。なお、1960年の事故は原因を突き止められず、これをきっかけにオーストラリアは、操縦室の音声を記録する装置の搭載を世界で初めて義務づけた国になった、とされています。 「死亡事故ゼロ」に数えるかどうかで分かれる出来事もある。ATSBの別の統計資料は、大型機の定期便で最後に死者が出た事故として、1975年の地上での事故を挙げています。出発するジェット旅客機ボーイング707を牽引車で押し出している最中に、前脚が折れて機首が牽引車の屋根に落ち、運転していた作業員が亡くなりました。機内の人ではなく、地上で働いていた人が犠牲になった事故で、先ほどの「1968年が最後」とは数え方が違います。「死亡事故が一度もない」という言い方は、「乗客・乗員が亡くなった事故がない」という意味で使われていることになります。 「発着の全便」とまでは言い切れない。元スレッドのタイトルは、オーストラリアを発着するすべての便を含めても死亡事故がない、としています。確認できたのは、オーストラリアの事故調査機関が「ジェット機の定期便で死亡事故が起きたことはない」としていることと、オーストラリアの航空会社についての記録までです。外国の航空会社まで広げると、オーストラリアを出発地や経由地にした便が、国外の区間で事故を起こした例があります。1962年には、シドニーを出てローマへ向かっていたアリタリア航空のジェット旅客機が、インドのボンベイ(現ムンバイ)の近くで墜落し、94人全員が亡くなりました。1974年には、香港からバリ島を経由してシドニーへ向かう予定だったパンアメリカン航空のジェット旅客機が、バリ島で墜落し、107人全員が亡くなっています。「発着便」をどこまで数えるかで、言えることは変わってきます。 あわやという出来事は何度もあった。カンタス航空のジェット機も、無傷で飛び続けてきたわけではありません。1999年9月には、ボーイング747が大雨のバンコクに着陸したあと止まりきれず、滑走路の先へ飛び出しました(オーバーラン)。410人が乗っていて、38人が軽いけがをしています。機体は大きく壊れましたが、修理されて復帰しました。2008年7月には、飛行中に貨物室の酸素ボンベが破裂して胴体に穴が開き、マニラに緊急着陸しています。同じ年の10月には、シンガポールからパースへ向かっていたエアバスA330が、機首が勝手に下がる急降下を2度起こし、119人がけがをしました。うち12人は重傷です。2010年11月には、世界最大の旅客機エアバスA380が、シンガポールを離陸した直後にエンジンの1つが壊れ、飛び散った破片で主翼に穴が開きました。469人を乗せた機体は、2時間近く上空で待機したあとシンガポールに戻って着陸し、けが人は出ていません。4件とも、亡くなった人はいませんでした。 なぜ続いているのか。はっきりした答えはありません。航空専門メディアは、カンタス航空は長距離路線が中心で、事故の起きやすい離着陸の回数が少ないこと、保有する機体の数が世界の大手と比べて少ないこと、操縦室で役割を分担し、気づいたことを互いに口に出す訓練に力を入れてきたことを挙げています。1960年代から飛行記録装置のデータを安全管理に使ってきた点を挙げる専門記者もいます。一方でATSBは、オーストラリアは事故の数がもともと少ないので、死亡事故が1件起きるだけで記録は大きく変わる、とも書いています。スレートの記事も、過去に墜落していないことは、この先ほかの会社より安全だという保証にはならない、と指摘しています。 海外の反応 1. 海外の名無しさん 「カンタス。カンタスは墜落したことがない」。『レインマン』を見たことがある人は、スレのタイトルを読んだ瞬間にあの声で再生されたはず。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) これ、1988年にあの映画でみんな習ったやつだよね。40年近く前の豆知識が今日また話題になっているのが、ちょっと面白い。 3. 海外の名無しさん 『レインマン』を見たばかりなのかと聞かれそうだけど、きっかけは航空事故の検証番組。見ているうちにあのセリフを思い出して、今でも本当なのか調べてみたんだ。国内の大きな旅客機事故をたどったら、出てくるのはプロペラで飛ぶ機体ばかりで、ジェット機は一件もなかった。 4. 海外の名無しさん 細かいことを言うと、カンタスもジェット機になる前の時代には死亡事故を起こしてる。最後は1951年。だから「墜落したことがない」は言いすぎで、「ジェット旅客機では」と付けるのが正しい。 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) でも「ジェット旅客機を飛ばし始めてからは、乗客・乗員が亡くなる事故を起こしていない」じゃ、セリフとして長すぎるからなあ。レイモンドなら最後まで言い切りそうだけど。 6. 海外の名無しさん 1999年にバンコクで滑走路を飛び出したジャンボ機は、いったんは廃棄扱いになるほどの損傷だったのに、大金をかけて修理して復帰させたんだよね。「ジェット機を1機も失っていない」という記録を守るためだった、とよく言われてる。 7. 海外の名無しさん こういうことは、口に出すと逆のことが起きるって言うだろ。なんでわざわざ書いちゃうんだよ! 8. 海外の名無しさん(>>7への返信) ほんとそれ。この先何かあったらスレ主の責任だからな。(スレ主へ。万が一、本当に万が一何か起きたとしても、それは君のせいじゃないよ) 9. 海外の名無しさん これは統計的に見て珍しいことなの? それとも、ジェット旅客機がそもそも安全なことと、世界の便数の中でオーストラリアの占める割合が小さいことが重なっただけ? 10. 海外の名無しさん(>>9への返信) 両方だと思うけど、便数は決して少なくないよ。メルボルン〜シドニーは世界でも指折りに混む路線だし、国が広いから国内の移動は飛行機が頼り。それでも起きていないのは、ジェット旅客機の死亡事故がそれだけ珍しいということでもあるね。 11. 海外の名無しさん マルコム・グラッドウェルの本に、航空事故と文化の関係を扱った章があった。上下関係を重んじる文化だと、副操縦士が機長の判断ミスを指摘しにくい、という説。つまり、機長がしくじったら遠慮なく「何やってんだ」と言ってくれるオーストラリア人の副操縦士が必要ってことだね。 12. 海外の名無しさん(>>11への返信) あの章は鵜呑みにしないほうがいいよ。事故の数え方や記録の読み方に無理がある、という批判がかなり出てる。文化のせいというより、訓練を見直して改善できた問題だった、というのが実際のところらしい。 13. 海外の名無しさん(>>11への返信) オーストラリア人って、決まりはきっちり守るのに、偉い人には別にかしこまらないんだよね。飛行機を飛ばすにはちょうどいい組み合わせなのかもしれない。 ※ グラッドウェルの本は『天才! 成功する人々の法則』(原題『Outliers』)。航空事故と文化を結びつけるこの説には異論も多く、オーストラリアの記録の理由として確かめられたものではありません。 14. 海外の名無しさん 2010年のカンタスのA380のエンジン破損は、本当に紙一重だったと聞く。離陸してすぐエンジンが壊れて、破片が主翼に穴を開けたのに、全員が無事に戻ってきた。原因はエンジンの部品の製造不良で、航空会社の落ち度ではなかったんだよね。 15. 海外の名無しさん(>>14への返信) あれは乗務員の訓練と落ち着きも大きかったよ。そこはカンタスが評価されていいと思う。たまたま審査役のベテラン機長も乗り合わせていて、操縦室に5人いたという運もあったけどね。 16. 海外の名無しさん(>>15への返信) どうでもいい豆知識をひとつ。カンタスの綴りは Qantas で、Q のあとに u が入らない。もとの社名「クイーンズランド・アンド・ノーザンテリトリー・エアリアル・サービシーズ」の頭文字を並べた名前だから。 17. 海外の名無しさん 理由は簡単。ほかの国では、飛行機が空中で壊れたら地面に落ちる。でもオーストラリアは地球の下側にあるから、壊れても地面から離れていくだけなんだ。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) 落ちる心配より、着いてから出会うクモやヘビの心配をしたほうがいい国だしね。あの国でいちばん安全な場所は、たぶん機内だよ。 19. 海外の名無しさん いやいや、シドニー発ロサンゼルス行きのオーシャニック航空815便を忘れてないか? ドラマ『LOST』でこの目で見たぞ。 20. 海外の名無しさん(>>19への返信) 4、8、15、16、23、42……この数字の並びを見るだけで、あの島に連れ戻される気分になるからやめてくれ。 21. 海外の名無しさん ニュージーランドも記録はいいほうなんだけど、1979年に南極のエレバス山で観光飛行の旅客機が墜落して、乗っていた257人全員が亡くなっている。今でも国として忘れられない事故だよ。 22. 海外の名無しさん(>>21への返信) 条件のつけ方しだいで「ゼロ」と言える範囲が変わる、という話でもあるよね。今回のオーストラリアの記録も、「ジェット旅客機では」という条件つきなのは覚えておきたい。 23. 海外の名無しさん 同僚にオーストラリアの航空業界にいた技術者が何人かいて、みんな「あの国の安全基準は慎重すぎるくらいだ」と言う。でも、ジェット機で亡くなった人がいないという結果を見ると、やりすぎくらいでちょうどいいのかもね。 24. 海外の名無しさん 地元の人間としては、手放しでは喜べないかな。整備を海外に出したり経費を削ったりする流れを心配する声は国内にもあるし、この記録は運にも助けられてきたと思う。いつまでも続く保証はどこにもないよ。 25. 海外の名無しさん(>>24への返信) 「ラッキー・カントリー(幸運な国)」という呼び名からして、もとは皮肉だからね。作家のドナルド・ホーンが1964年の本で、オーストラリアは幸運な国で、その運を分け合っている二流の人たちが主に動かしている、と書いたのが始まり。 まとめ オーストラリアの航空会社は、ジェット旅客機の定期便で、乗客・乗員が亡くなる事故を一度も起こしていません。ただし、プロペラ機の時代には死亡事故があり、ジェット機でも大きなトラブルは起きています。コメント欄は『レインマン』のセリフで盛り上がる一方、「口に出すと逆のことが起きる」と心配する声や、「運にも助けられてきた」という冷静な見方も並びました。条件を外すと別の話になる、という点も覚えておきたい豆知識です。 元ソース: オーストラリアのジェット旅客機では死亡事故が一度も起きていない——オーストラリア発着の全便と、オーストラリアの会社が運航する全便を含めて The post 「カンタスは墜落したことがない」映画『レインマン』のあのセリフはどこまで本当? 調べてみたら「ジェット機では」という条件がついていた appeared first on みんな知ってた?【海外の反応】.…