
1: 樽悶 ★ +njsRivu9 2026-03-27 19:34:34 ホルムズ海峡の封鎖から4週間。エチレン減産の影響が、最も時間的猶予のない現場に迫っている。人工透析だ。国内で透析治療を受けている患者は33万7414人(2024年末、日本透析医学会統計調査)。週3回、1回4時間の治療を止めれば数日で生命に関わる。その治療に不可欠なダイアライザー(人工腎臓)と血液回路は、すべて石油化学由来の樹脂でできている。(編集長・赤澤裕介) ダイアライザーの中核部品は中空糸膜だ。内径0.2ミリ、膜厚0.05ミリ以下の極細チューブを1万本束ね、血液をろ過する。現在、国内で使われる膜素材の主流はポリスルホン(PS)とポリエーテルスルホン(PES)で、ニプロ、旭化成メディカル、東レ、日機装が製造している。 ポリスルホンの原料をたどると、ナフサに行き着く。ナフサを分解してベンゼンとプロピレンを得て、そこからフェノール、アセトン、ビスフェノールA(BPA)を経由してポリスルホンに至る。エチレンそのものが直接の原料ではないが、ナフサクラッカーの稼働率が下がれば、同じ分解炉から出るベンゼンやプロピレンも連動して減る。国内エチレン設備12基のうち6基がすでに減産に入り、定期修理と合わせて3基が停止中。稼働を維持しているのは3基にとどまる。ダイアライザーの膜だけでなく、ハウジング(外装ケース)に使うポリカーボネートもBPA由来であり、エチレン減産の影響は透析機器の複数の部品に同時に及ぶ。 ■1つでも欠ければ透析は止まる 透析1回の治療で消費される樹脂製品は、ダイアライザーだけではない。すべてディスポーザブル(使い捨て)で、感染症予防の観点から再利用はできない。 33万7414人が週3回治療を受ければ、年間で消費されるダイアライザーだけで5000万本を超える。血液回路やシリンジを合わせると、透析医療が消費する樹脂製品は膨大な量になる。素材はポリスルホン、PVC、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートと多岐にわたるが、すべてナフサ由来だ。ダイアライザーの膜が無事でも、血液回路の塩ビチューブが手に入らなければ治療はできない。1つでも欠ければ透析は止まる。 この構造は透析に限らない。点滴バッグ、カテーテル、注射器、手術用手袋、マスク、防護服。病院で日常的に使われるディスポーザブル製品は、ほぼすべてナフサ由来の樹脂でできている。透析資材の不足は「炭鉱のカナリア」であり、医療用ディスポ製品全体に波及するリスクの先行指標だ。 国内最大手のニプロは秋田県大館市の工場を主力拠点とし、月産1000万本規模の生産能力を持つ。ダイアライザーの国内シェア1位、世界シェア2位。旭化成メディカルは1974年からポリスルホン膜を手がけ、国内外で供給している。いずれも国内に製造拠点を持つが、原料の樹脂ペレットの調達は石油化学メーカーに全面的に依存している。 医療機器メーカーは通常、原料在庫を1-3か月分確保しているとされる。ただし補充が滞れば、早い品目では数週間、遅くとも2-3か月で枯渇に向かう。食品包装、自動車部品、建材など他産業との樹脂の奪い合いが始まれば、この時間はさらに短くなる。透析のように週単位で消費される医療資材では、在庫の減り方がそのまま患者の治療継続に直結する。 問題は優先配分の仕組みがないことだ。石油備蓄の放出では燃料(ガソリン・軽油)が優先され、ナフサは後回しになる。親記事「備蓄放出でも届かないナフサ、21中分類に連鎖」で報じた構造そのものだ。仮にナフサが確保できても、樹脂メーカーが医療機器向けを優先する法的義務はない。医療が最優先であるべきだという社会的合意はあっても、原料配分の制度がそれを担保していない。問題は樹脂が足りないことそのものではなく、限られた樹脂をどこに回すかという段階に移りつつあることだ。(以下ソース) 2026年3月27日 (金)…