
自傷患者を“かまってちゃん”だと思っていた男性医師、何人もの患者を診て気づく「心が辛さに耐え切れないとき、自分の体を傷つけると脳内麻薬が出る。」 すごく勉強になった。自傷患者を“かまってちゃん”だと思っていた男性医師(50)が、世界で唯一の“リストカット傷あと特化クリニック”を開くまで「何人も診察していたら違和感が…」傷あと治療専門の形成外科医・村松英之さんインタビュー #1 #文春オンライン— 岩田健太郎 K Iwata (@georgebest1969) November 14, 2025 自傷患者を“かまってちゃん”だと思っていた男性医師(50)が、世界で唯一の“リストカット傷あと特化クリニック”を開くまで「何人も診察していたら違和感が…」 「自傷する人は“かまってちゃん”だろうと思っていました」 世界で唯一の“リストカットの傷あと特化クリニック”を開いた形成外科医の村松英之さん(50)は、研修医時代にそんな「偏見」を抱えていたという。 しかしその考えは、開業後に180度変わった。今、日本全国から彼の元を訪れる女性患者たちの意外な姿とは。(全4本の1本目/2本目を読む) (中略) 開院から半年ほど経つと、リストカットあとに悩む患者さんが増えてきた ──どんなことがあったのですか。 村松 開院当初はケガや事故、ヤケドの傷あとに悩む人を診るつもりでした。でも半年くらい経つと、リストカットの傷あとに悩む患者さんが増えてきて。「きずときずあとのクリニック」という名前なので、ネット検索をしてこの病院名が出てきたんでしょうね。 それで自傷患者さんに触れる機会が増えたんですが、何人も診察しているときに違和感を持ったんです。それは、みんな身なりがきちんとしていて、真面目だし礼儀正しいんですよ。研修医時代に自分が抱いていたイメージとはまったく違いました。もしかして自分は誤解していたのではと思い、そこから自傷について勉強を始めました。一番驚いたのは「自傷行為にはメリットがある」ということです。 ──自分を傷つけることにメリットがある? 村松 これは自傷行為の本質の話ですが、自傷にはストレスを和らげる効果があります。 患者さんはよく「頭の中が嵐になる」と言いますが、死にたいくらい辛い感情、怒り、悲しみ、絶望に襲われて、頭の中がワーッと混乱状態になってしまう。そのときリストカットなどで体を傷つけると、βエンドルフィンやエンケファリンなどの神経伝達物質が出て、スッと楽になるんです。 これは痛みや辛さから自分を守る、いわゆる脳内麻薬です。マラソンのランナーズハイや妊婦さんの出産時にも同じような現象が起きます。 ──では、自傷することで辛さから逃げられる? 村松 そうです。心が辛さに耐え切れないとき、自分の体を傷つけると脳内麻薬が出る。そうすることで「死にたいほどの現実」を一時的に生き延びられるんです。これは精神科医の松本俊彦先生から学びました。 ──他に、自傷による作用はありますか。 村松 自傷後は表情が穏やかになったりします。脳内麻薬の効果で、それまで険しくしんどい顔をしていた人が、微笑むような穏やかな表情になることがあるんです。 ──では、研修医時代に見た「自傷患者さんのスッキリとした顔」というのは……? 村松 まさにそれです。リストカットするときに切るのは、皮膚だけはありません。心の中の辛い感情を切り離しているんです。「私にひどいことは何も起きていない」「大丈夫」と、自分自身をだます意味もある。それを知って「深夜に急患で来た患者さんたちはそういうことだったのか!」と、目からウロコが落ちました。 ──心の防衛反応なんですね。 村松 自傷によって記憶の解離が見られるケースもあります。これはうちの患者さんの話ですが、ご両親が亡くなったことが大きなストレスになり「両親が死んでから1、2年の記憶がない、ただ、腕にたくさん傷ができていた」と。その方は、親の死というストレスに襲われるたびに腕を切り、それを何度も繰り返して「死のショックが和らいだ頃、ようやく記憶を取り戻した」と言っていました。 出典:…