[ 1 ] 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が令和5年にまとめた将来推計人口(中位推計)は、6年の日本人のみの出生数を75万5千人と見込んでいた。初めて70万人を割り込むのは、2038(令和20)年の69万2千人になるとの想定だった。 日本の社会保障制度の多くは現役世代が支払う社会保険料で賄う「賦課方式」を採用している。このまま急速に少子化が進行すれば、現役世代の負担増加に留まらず、社会保障財源が逼迫(ひっぱく)し、制度自体の持続性も揺らぎかねない。 加えて、少子化傾向の反転への時間的猶予もない。 現在、結婚適齢期を迎えている1990年代生まれの出生数は120万人程度で安定していたが、2005(平成17)年に110万人を割り込み、2016(平成28)年には100万人を下回るなど、今後適齢期を迎える世代の減少が予想される。 政府は「2030(令和12)年までがラストチャンス」と危機感を強めるが、反転攻勢に向けて有効な手は打てていない。…