1: 2025/08/28(木) 15:49:28.97 MOD文化とMODツールの使用について ファイナルファンタジーXIVプレイヤーの皆さん、こんにちは。プロデューサー兼ディレクターの吉田です。現在プレイヤーの皆さんの間で、「MOD文化とMODツールの使用」について、ディスカッションが行われたり、フィードバックをいただいたりしています。今回、このコメントでは、特定のツールへの言及ではなく、あくまで一般的なMOD文化とMODツールの使用について触れさせていただきます。その旨、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。まず、僕はFFXIVの総責任者でもありますが、同時に古くからのPCゲーマーでもあります。過去にも何度かお話ししたことがありますが、「僕個人」は、「MOD文化について寛容な姿勢である」ということに変わりはありません。二十年以上前から、個人が制作したMODツールによって、遊びの幅が広がり、そのゲームに対してポジティブな影響を及ぼしてきた例をたくさん見てきました。ただしそれは、「あくまでも個人の使用と責任範疇において」であること、また「ゲーム本体やサービスへダメージを与えたり、デザインを破壊するものであってはならない」というのが大前提です。これはゲーマーやMODツール制作者が守るべきモラルではないか、と思っています。ですので、今後も「あくまでも個人が楽しむ」「個人として責任を負える範疇内」ならば、「一般的なMOD文化やMODツールの使用」について、僕個人はゲーマーの皆さんに対して、執拗にあれこれ追跡したり、詮索したりする必要はないと思っています。もちろん、FFXIVにおいて、僕は責任のある立場ですので、プレイヤーの皆さんには、利用規約は守っていただきたいなとも思っています。それと同時に、あらためて「自分以外の第三者に迷惑をかけないこと」、「ゲーム本体やサービス、そのデザインに破壊的影響を与えないこと」の2点が、非常に大切であることをぜひ覚えておいていただけると嬉しいです。引き続き、FFXIVを、そしてたくさんのPCゲームを「楽しく」プレイしていただきたいと、心からそう願っています。以下、「第三者に迷惑をかける」あるいは、「ゲーム本体やサービス、そのデザインへの破壊的影響」の例を記載しておきます。ですが、これはあくまで例ですので、読み飛ばしていただいて構いません。またこれは特定のMODツールを指しての例ではありません。加えて、MODツール制作者や使用者への批判ではなく、相互理解を深めるための例だとご理解いただけますと幸いです。アイテムやキャラクター外見の外部操作FFXIVには「絶」と呼ばれる超高難度バトルコンテンツが数種類実装されています。このコンテンツは非常に難度が高く、このコンテンツをクリアするために相当量の時間や努力を要することから、報酬として「Legend」の称号や、特別にVFX処理を強く施したジョブ専用の武器が手に入ります。Aさんは、このコンテンツが大好きで、攻略自体にモチベーションを持っています。だからこそ、クリアした際に得られる称号や武器に誇りを持って装備していたとします。それは、自分や仲間たちが努力を続けてきた証でもあるからです。一方、BさんはとあるMODツールを使用しています。そのMODツールは、ゲーム内のアイテム取得条件を無視して、どんなアイテムでもキャラクターに装備させることが可能です(課金しなければ手に入らないアイテムですら)。Bさんは仕事に忙しく、モチベーションはあったとしても、物理的な事情で絶コンテンツに挑むことができません。だから、せめて自分の画面の中だけでも、自分のキャラクターに、絶で得られる武器を装備させてみたい、と考えてツールをインストールして使用しました。Bさんのキャラクターがツールを使用して装備しているアイテムは、自分のクライアント画面にしか表示されず、他の人には初期装備のキャラクターとして表示されるとします。Bさんのモニターには、輝く絶の武器を装備した自分のキャラクターが表示されていて、Bさんはそれをスクリーンショットに撮影して、自分のデスクトップ画像として表示することにしました。このケースの場合、Aさんはゲームのルールに従い、仲間たちと努力を積み重ねて、絶コンテンツをクリアし、その証として武器と称号を得ました。Aさんはこの称号を自分のキャラクターに表示し、絶武器を装備させました。Aさんの周囲でプレイするプレイヤーはAさんのキャラクターを見て、「ああ、あの人は過酷な絶コンテンツに挑み、それをクリアしたLegendな人なのだな」と感じます。一方、Bさん以外の人が、Bさんのキャラクターを見ても、初期装備の状態のBさんのキャラクターしか表示されません。ここでAさんとBさんがゲーム内ですれ違ったとします。Bさんの画面に映るAさんは、絶で得た称号と絶の武器を装備しています。そしてもちろん、Bさんの画面では、Bさんのキャラクターも絶の武器を装備して表示されています。一方、Aさんのモニターでは、当然Aさんはいつも通り絶の称号と武器が装備された自分のキャラクターが表示されていますが、Bさんのキャラクターは初期装備として描画されています。つまり、Aさんの世界では、正しくゲーム内のルールに則って、それぞれのプレイヤーの成し遂げた成果が画面に表示されています。Bさんの画面はツールによって改変されていますが、それはあくまでもBさんの画面の中だけのお話しです。つまり、これが「個人で楽しむ」という範疇です(良いとか悪いというお話しをしているわけではありません)。ツールのインストールは自己責任です。ウィルスに感染する危険も、同時に自己責任となります。ツールの効果としても、他の人にも迷惑をかけず、他の人に表示されないのですから、ゲーム内のデザインも、ギリギリ破壊していることにはなりません。もちろん、解釈の差はあると思いますが。ところが、このMODツールがアップデートされ、なんと、自分の画面だけでなく、他のプレイヤーにも改変した装備が見えるようになったとしたらどうでしょうか?仲間たちと努力を積み重ね、時間をかけて絶の称号と武器を得たAさん。一方で、MODツールを使い、そのツールの力によって絶の武器を装備したBさん。これが同じ世界に並び立ってしまうことになります。Bさんはさほど気にしないかもしれませんが、Aさんの自尊心や、仲間たちとの努力、かけた時間の価値は著しく下がってしまうことになります。なぜなら、ツールさえインストールすれば、誰でも絶武器を装備できることになってしまうからです(たとえそれが見た目だけで、性能が反映されていないとしても)。これが「第三者に迷惑をかけ、ゲームデザインを破壊する」という行為になります。Bさんはツールの性能を細かく知らなかったかもしれませんが、そのツールを使ったことにより、意図せず他のプレイヤーのモチベーションを下げ、ゲームデザインを破壊してしまっています。このツールの制作者に、そこまでの悪意はなく、単純に皆が好きな装備を楽しめるように、という思想で開発したとしても、結果的にツール制作者とBさんは、ゲームそのものやコミュニティにダメージを与えてしまっていることになります。こうなった場合には、僕たちはツールの使用を止めていただくように呼び掛けるか、ツールそのものの機能を削除してください、と制作者にお願いすることしかできなくなります。もちろん、プログラム的な対策を施すことは可能ですが、この時に発生するプログラムコストは、本来なら皆さんのために一つでも多くのコンテンツを作るために割り当てるべきだったコストです。ここにも、やはり皆さんにとってのダメージが発生してしまうのです。上記は一例ですが、「個人の責任範疇」「ゲームそのものにダメージを与えない」という境界線は、わかっていただけるのではないかと思います。「ツール使用者同士にしか表示されない場合は?」と質問される方がいるかもしれませんが、そもそも第三者にも表示される、ということは、ゲーム内の正規のパケットを偽装、あるいは書き換えるという、より大きな問題や破壊行為が発生しているのです。仮に、今回例として挙げた架空のMODツールの他の機能が、どんなに優しく、ゲームのためになり、プレイヤーの皆さんが喜ぶものだったとしても、大きな問題が発生する機能が実装されている時点で、使用を止めていただかなくてはなりません。さらに機能の追加例として、「課金アイテムすら購入しなくても装備でき、かつ、他人にもそれを表示できる」となった場合、お仕事やアルバイトなどを頑張り、お金を稼いでFFXIVオンラインストアを眺め、お気に入りのアイテムにお金をかけてくださったプレイヤーの努力はどうなるのでしょうか? ツールを使用しない方が悪い、となるのでしょうか?「アイテムに課金を要求し、お金を稼ごうとしているスクウェア・エニックスが悪い」、というご意見もあるかもしれませんが、我々は毎日、毎月、皆さんが安心してプレイしていただくためのサーバーやデータセンターを24時間、365日運営しています。現在、世界的なインフレが加速しており、サーバーの電気代も、土地の値段も、サーバー機器そのものも値上がりしています。ですが、僕たちはできるだけ月額料金の値上げはしたくありません。その一方で、ゲームサービスを維持するためにも、収益はどうしても必要なのです。これが赤字になってしまえば、FFXIV自体のサービスを停止せざるを得なくなってしまいます。これが「ゲームサービスにダメージを与えてしまう」という例になります。これもやはり、ツールの使用を控えていただくか、ツールそのものから機能を削除していただくことになります。MODツールやMOD文化が善意から始まっていることを、吉田は認識していますが、図らずもゲームそのものやプレイヤーの皆さんのモチベーション、ゲームサービスを脅かすものになっているツールについては、やはり対応させていただくしかなくなるのです。他の事例として、「キャラクターを裸にしてしまう」というMODツールがあったとします。これも、ツール使用者のモニターの中だけでの出来事であれば、まだ「個人の責任の範疇」ということになるかもしれません(これももちろん個人の解釈によりますし、善悪を論じているわけではありません)。しかし、そこで描画された裸のキャラクターがスクリーンショットとして撮影され、SNS等で拡散されてしまった場合、各国の司法当局からFFXIVのサービス中止命令が出されてしまう可能性があるのです。年々ゲームの表現に対する法律の規制は厳しくなっています。これは未成年者を守るためであったり、色々な理由があるのだと思いますが、確実に厳しくなっています。僕たちは各国の法令を遵守してサービスを展開する義務があり、それができない場合には、サービス停止処分を受けることになります。これもやはり、「サービスへのダメージ」となってしまいます。繰り返しとなりますが、僕はこの例を通じて、MODツール使用者やMODツール制作者を批判したいわけではありません。ただ、そこに意志があろうとなかろうと、結果として他のプレイヤーやゲーム本体、ゲームサービスにダメージを与えることがある、という具体例として記載しています。僕たちはこれからも全力でプレイヤーの皆さんが楽しめる世界を作り続けていきます。プレイヤーの皆さんのフィードバックや、機能追加のリクエストについては、たとえ時間がかかってしまったとしても、できる限り正規のシステム実装としてお応えしていきたいと思います。また、装備の自由度というところに関しても、今後プレイヤーの皆さんの選択を広げていこうと考えています。二十年以上続くPCゲームのMOD文化に敬意を表しつつ、皆さんも「楽しく」「最低限のルールだけは守って」プレイしていただけると大変うれしく思います。さて、新生FFXIVも13年目に突入し、次回のファンフェスも発表することができました。 これもひとえに、プレイヤーの皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。 これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!(おっと……日本のファンフェスが終わったあと、そんなに間を空けずに「アレ」が来る予定です。 今はまだ詳しく言えないですが、あまり心配しなくても大丈夫です :p)ファイナルファンタジーXIV プロデューサー兼ディレクター吉田 直樹 ※関連記事 ステラーブレイド開発、MODに苦言 「まだ公式コンテンツの方が強い。もっと強烈なの出してこい」…