1. 匿名@ガールズちゃんねる 1915年12月、北海道北西部の苫前(とままえ)村で10人の婦女子がクマに殺傷される“日本史上最悪の獣害”が発生した(死者7人、負傷者3人)。この「三毛別羆(さんけべつひぐま)事件」をもとに吉村昭が描いたドキュメンタリー長編が『羆嵐』(新潮社)だ。同作では、臨月の妊婦を含む女性や子供が次々と犠牲になっていく様子が克明に描かれている。 最初の被害者は、島川家の9歳の男の子だった。家の炉端に座っていながら身動きをしない様子を不審に思った者が仰向けにさせると、のどの部分の肉がえぐりとられていて、血液がもり上がり胸から膝へ流れ落ちている。また頭の左側部に大きな穴がひらき、そこから流れ出た血が耳たぶをつつみ、左肩にしたたっていた。 犠牲はこれだけに留まらない。その夜に行われた島川の妻子の通夜で被害はより拡大する。通夜の席に羆が板壁を破ってふみこみ、さらに近隣の家に身を寄せていた2家族の4名が殺害され3名が重傷を負わされたのだ。家の内部は凄惨そのものだった。血が床に流れ柱や天井にも飛び散っている。床と土間には肉と骨の残骸があった……。 4名の死者のうち3名は子供で、もう1名は臨月の女性だった。この妊婦が身ごもった胎児も、羆に食い尽くされていた。土間に積まれた雑穀俵のかげに潜んで奇跡的に助かった10歳の少年は、羆の荒々しい呼吸音にまじって、骨をかみ砕く音も聞いたという。さらに、「腹、破らんでくれ」と妊婦が羆に懇願する叫び声も彼の耳に届き、やがて気を失ったのだった。 2025/08/26(火) 20:56:57…