1: 七波羅探題 ★ D3NjMrVM9 2025-08-10 08:19:18 「首都圏第三空港」の議論はなぜ再燃したのか? インバウンド急増と羽田・成田の限界、示された切実な必要性とは 羽田空港と成田空港は、数十年にわたり首都圏の空の玄関口として機能している。その次の首都圏第三空港の構想は、数十年前から検討されてきた。 例えば2001(平成13)年には、国土交通省に対して各業界団体から首都圏第三空港の候補地として14か所(羽田空港関連の提案が3件あり、計16提案)が示されている。候補地は以下のとおりだ。 1.木更津沖 2.西多摩地区 3.千葉県九十九里沖 4.羽田空港(東京国際空港) 5.富津岬 南 6.富津岬 北 7.横須賀金田湾 8.湾央木更津沖案(海ほたる空港案) 9.扇島地区(京浜臨海工業地域の東扇島・西扇島) 10.東京湾内の川崎・横浜沖 11.中ノ瀬 12.東京湾奥 13.川崎臨海部沖首都圏新空港 14.栃木市北西部谷倉山付近 最終的には羽田空港の拡張が軸となり計画が進められた。ただし一部の構想は今も残っている。とくに根強く議論されているのは、「2」に含まれる東京都福生市の米空軍横田飛行場の軍民共用化である。 この空港は米軍用の大型機も発着可能な滑走路(3,353m)を持つ。米本土への直行便も運航可能だ。さらに24時間の運用が可能であるうえ、ジェット燃料を運搬する鉄道貨物線もある。これを活かして青梅線と連携した鉄道アクセスの整備も可能だ。 ■軍民共用化の現状と課題 こうした背景から、長年にわたり軍民共用化の議論が続いている。直近では2019年、日本政府が東京オリンピック・パラリンピックの訪日客増加対策として推進した。当時の小池都知事も賛成の意向を示していた。 だがこの議論はコロナ禍の無観客開催で破断した。提案当時より外国人観光客がさらに増えたことを考えれば、再提案があっても不自然ではない。 また、空母艦載機の移動で余裕が生まれた米海軍厚木基地(神奈川県)や、茨城空港との機能交換で民間空港化を目指す海上自衛隊下総基地(千葉県)も、軍民共用で首都圏第三空港の地位を狙っている。 首都圏には成田・羽田のほか、東京都島しょ部へのコミューター路線や航空写真撮影用小型機の離発着がある調布飛行場も含め、正確には三つの空港がある。 しかし調布飛行場は制約が多く、広域交通の役割は担えない。したがって、新たに開業する空港があれば、それが首都圏第三空港とみなされるべきだ。航空自衛隊百里基地を強化した茨城空港は、かつて首都圏第三空港として期待された。しかし距離の遠さから地方空港とみなされ、第三空港とは見なされていない。 近年、首都圏第三空港の議論は減少している。主な理由は、2000年代以降に進んだ羽田・成田両空港の機能強化だ。2001(平成13)年の第三空港候補提案は、羽田の沖合展開や再国際化、成田第二滑走路未完成時のものだった。 2025年現在、羽田に4本、成田に2本の大型滑走路が完成し、必要性は薄れている。成田では3本目滑走路やターミナル建て替え、羽田でも第5滑走路構想がある。 ・世界的な航空会社統合 ・少子化による国内線市場縮小 を踏まえれば、新空港建設には慎重になるのも自然である。 ■羽田・成田の拡張限界 筆者(前林広樹、航空ライター)は、羽田・成田の拡張が進む現在でも首都圏第三空港は必要だと考えている。滑走路の増設は可能でも、他に多くの問題がある。 羽田空港は機材制約が大きい。世界最大の旅客機エアバスA380は、後方乱気流や滑走路への負担のため昼間は使用できない。旅客ターミナルもボーディングブリッジ不足など駐機スペースに問題がある。第一ターミナルのサテライト増設やリニューアルは進んだが、最古のターミナルは1993(平成5)年完成で老朽化が懸念される。改築しても空港内部の混雑解消は疑問だ。 成田空港は第三滑走路建設やターミナル建て替えなど積極策を進めている。発着枠は1.5倍になる計画だ。しかし ・反対運動の泥沼化 ・夜間運用の困難さ ・都心側の交通アクセス制約 もあり、増便が実現できるかは不透明だ。調布飛行場はさらに深刻だ。東京都心で唯一小型機が発着可能な空港だが、周辺自治体との共用協定で1000mの滑走路のうち800mしか使えない。2015年には滑走路ぎりぎりの短距離離陸で小型機が住宅街に墜落し、乗客と住民が亡くなる事故が起きた。以降、協定は厳格化し自家用機の運用が事実上不可能となった。騒音など住民の反発は根強く、協定見直しは容易でない。自家用機が使えないことは、東京の都市競争力や災害復旧の面で大きな制約となっている。早急な解決が求められる課題だ。 ※以下出典先で…