息をどれだけ長く止めていられるか。ギネス世界記録に載っている最長は、クロアチアのフリーダイバー(息を止めて潜る競技の選手)、ヴィトミル・マリチッチさんが2025年に出した29分3秒です。海外の掲示板で話題になると、すぐに「大事な但し書きが抜けている」という指摘が付きました。挑戦の前に10分間、純酸素を吸っておくことが認められた記録だからです。ふつうの空気だけで挑む競技の世界記録は、11分35秒とされています。 ※注:この記録は、訓練を積んだ選手が、審判や支援チームに安全を見守られながら挑んだものです。息止めの練習、とくに水の中での息止めは、溺れる事故につながることがあります。止める前に深く速い呼吸を繰り返すと(過換気)、息を吸いたいという感覚が来るのが遅れ、水中でそのまま意識を失うおそれがあるためです。米疾病対策センター(CDC)も、こうした行為による溺水の事例を報告しています。まねはしないでください。 今日の知ってた? ⏱️ 息止めの世界記録は29分3秒。クロアチアのフリーダイバー、ヴィトミル・マリチッチさんが2025年6月14日、同国オパティヤのホテルのプールで出した 💨 ただし、挑戦の前に10分間、純酸素(100%の酸素)を吸っている。ギネス世界記録が、事前に酸素を吸うやり方を認めたうえで公認している記録 📈 それまでの記録は、同じクロアチアのブディミル・ショバトさんが2021年に出した24分37秒。これを4分半近く上回った 🏊 純酸素を使わない競技「スタティック・アプネア」の世界記録は、国際団体AIDAの公認で男子11分35秒(フランスのステファン・ミフシュドさん、2009年) 💡 息が苦しくなるのは、酸素が足りなくなるからというより、体に二酸化炭素がたまるから。純酸素を吸っておいても、この苦しさは来る 背景:スタティック・アプネアとは 息を止めていられる時間を競う種目は「スタティック・アプネア」と呼ばれ、フリーダイビング(息を止めて潜る競技)のプール種目のひとつになっています。アプネアは「無呼吸」を意味する言葉です。泳ぐ距離も潜る深さも問いません。鼻と口を水につけたまま、どれだけ長く息を止めていられるかだけを競います。大会では、選手はプールの水面にうつ伏せで浮かび、顔を水につけてじっと動かずに過ごします。 ルールを定めて記録を公認している団体のひとつが、1992年にフランスのニースで設立されたAIDA(アイダ)です。AIDAが公認する男子の世界記録は、フランスのステファン・ミフシュド(Stéphane Mifsud)さんが2009年6月8日に出した11分35秒。女子は、ギネス世界記録の掲載によると、ドイツのハイケ・シュヴェルトナー(Heike Schwerdtner)さんが2026年6月5日、ハンガリーのブダペストで開かれた世界選手権で出した9分39秒です。 こうした正式な競技では、ふつうの空気を吸って挑みます。一方、ギネス世界記録には、事前に純酸素を吸ったうえで息を止める記録が別にあります。英語版ウィキペディアによると、息を止める前に100%の酸素を最大30分間吸うこの方法は、正式な競技の種目にはなく、個人が記録に挑むときに使われることがあるものです。話題になった29分3秒は、こちらの記録にあたります。ギネスでの記録名は「自分の意思で水中で息を止めた最長時間(男性)」です。 ヴィトミル・マリチッチ(Vitomir Maričić)さんがこの記録に挑んだのは、2025年6月14日。場所はクロアチアの町オパティヤにあるホテルの、深さ3メートルのプールでした。現地の報道によれば、5人の審判と約100人の観客が見守ったといいます。ギネス世界記録によると、マリチッチさんは9か月かけて準備し、当日はAIDAの審判を含む支援チームが、安全のためにそばで様子を見つづけました。挑んだ理由は、個人としての挑戦であることに加えて、海の環境を守ることに目を向けてもらうためだったそうです。 挑戦のあと、マリチッチさんはこう振り返っています。「20分を過ぎてからは、すべてが楽になりました。少なくとも精神的には」「体のほうは、どんどんきつくなっていきました。とくに横隔膜です。収縮が起きるので」。 もう少し詳しく なぜ純酸素を吸うと長く止められるのか。ふだん吸っている空気に含まれる酸素は、約21%です。マリチッチさんは挑戦の前の10分間、100%の酸素を吸いました。この記録を解説したオーストラリア・ウーロンゴン大学の生理学者らは、これによって、ふつうの空気を吸ったときよりも多くの酸素を肺にためた状態で息を止めはじめられた、と説明しています。ダイビング専門メディアのDivernetは、肺の中の窒素を酸素に置き換えることで、使える酸素が約450ミリリットルから3リットル近くまで増える、と書いています。科学ニュースサイトのScienceAlertによると、マリチッチさん自身もSNSで、体の中の酸素はふだんの5倍近くあったと説明しています。 それでも、苦しさは来る。同じ生理学者らの解説によると、息を吸おうとする反射を引き起こすのは、酸素が減ることではなく、二酸化炭素が増えることです。体の細胞は、息を止めているあいだも二酸化炭素を出しつづけます。脳はそれが増えていくのを感じ取り、呼吸をさせようとします。我慢の限界を超えると、横隔膜がひとりでに収縮して、息を吸わせようとしはじめます。マリチッチさんが、体のなかでもとくに横隔膜がきつかったと振り返っているのは、このためです。フリーダイバーは息を止める練習を重ねて、二酸化炭素が多い状態に脳を慣らしていくのだといいます。同じ解説は、多くの人が息を止めていられるのは30〜90秒ほどだ、とも書いています。 純酸素なしで10分を超える人たち。スタティック・アプネアでAIDAが公認する男子の記録は、先に書いたとおり11分35秒です。マリチッチさん自身も、純酸素を使わない自己ベストが10分8秒あります。なお、ギネス世界記録には、AIDA公認の記録とは別の項目として、セルビアのブランコ・ペトロビッチさんが2014年10月7日にドバイで出した11分54秒も載っています。 記録は60年あまりで倍以上になった。ギネス世界記録の記事は、息止めの記録の歩みとして、1959年3月に米国のロバート・フォスターさんが出した13分42秒5を挙げています。英語版ウィキペディアの一覧などによると、事前に純酸素を吸う記録は、2008年4月に米国のマジシャン、デビッド・ブレインさんがテレビ番組の生放送で出した17分4秒のあと、2012年には22分台まで伸びました。2021年には、当時56歳だったブディミル・ショバトさんが24分37秒を記録し、2025年にマリチッチさんが29分3秒まで伸ばしています。 俳優ケイト・ウィンスレットの「7分15秒」。コメント欄に出てくるこの数字は、映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022年)の水中での撮影にあたって、ウィンスレットさんが息を止めた時間として、本人が映画雑誌に語ったものです。それまでの自己ベストは6分14秒で、水面に上がったときには「私、死んだの?」と口にしたそうです。公式に認定された記録ではなく、本人の話にもとづく数字です。 日本でも世界選手権が開かれた。2025年の6月から7月にかけて、AIDAのプール種目の世界選手権が、和歌山市の秋葉山公園県民水泳場で開かれました。フリーダイビング用品メーカーのモルチャノフスの大会レポートによると、女子のスタティック・アプネアでは、日本の選手が7分52秒で3位に入っています。翌2026年のブダペスト大会では、同じ選手が7分41秒で2位でした。このとき優勝したシュヴェルトナーさんのタイムが、先に書いた9分39秒です。 海外の反応 1. 海外の名無しさん このタイトル、大事な但し書きが抜けてるよ。彼は記録に挑む前に、純酸素だけを吸っていたんだ。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) そのとおり。救急車でも、患者に鎮静をかける前には、できるかぎりたくさんの酸素を数分間送り込むんだ。血液に溶け込むくらい酸素を入れておいて、いざというときに体が使える予備のバッテリーを作っておくのが狙いだよ。 ※注:コメント主が自分の仕事の経験から説明しているものです。麻酔や鎮静の前に高濃度の酸素を吸ってもらう処置は医療の現場で行われていて、「前酸素化」と呼ばれます。 3. 海外の名無しさん(>>1への返信) 純酸素なしの記録は今も11分35秒だよ。酸素が助けになるのは当然として、何の工夫もなしに10分を超える人たちが実際にいるんだ。 4. 海外の名無しさん 同じ挑戦に部門が2つあるだけなんだよ。純酸素を使うものと、ふつうの空気でやるもの。彼はずるをしたわけじゃない。これはこれで別の記録なんだ。 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) リンク先の記事にもちゃんと書いてあるね。「マリチッチは事前に10分間、純酸素を吸っていた。ギネスの『酸素補助あり』の部門で認められている方法だ」って。 6. 海外の名無しさん 29分か。自分は10秒くらい。健康な人は、たぶん彼と自分の間のどこかにいるんだと思う。 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) こっちは食事のとき、ひと口ごとに息が切れるくらいだからね。この勝負はきみの勝ちだよ。 8. 海外の名無しさん いやいや、あれは挑戦の前に純酸素を吸ってるんだよ。それをやれば、そのへんのふつうの人だって10分は息を止められる。 9. 海外の名無しさん(>>8への返信) きみは、ふつうの人の力をずいぶん買いかぶってると思うよ。 10. 海外の名無しさん(>>8への返信) 少なくとも自分には無理だね。できないほうに賭けてもいい。 11. 海外の名無しさん(>>8への返信) 肺に純酸素が入っていても、長く息を止めるのが楽になるわけじゃないよ。酸欠で命を落とすのを防いでくれるだけ。ふつうの人は、息を吸いたいという強烈な衝動に勝てない。あの衝動は、二酸化炭素がたまることで起きるんだ。 12. 海外の名無しさん みんな純酸素が決め手だったと言うけど、どうしてそんなに違うのか、誰か小学生にも分かるように説明してくれない?(笑) 自分は3分も息を止めたら気を失うし、地球の空気にだって酸素はそれなりに入ってるはずだよね。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) ふだんのきみの肺は、酸素でいっぱいになっているわけじゃないんだ。純酸素を吸うと、肺の中身がほとんど酸素だけになる。 14. 海外の名無しさん(>>12への返信) 彼は挑戦の前に、100%の純酸素を10分間吸っている。そうすると肺から窒素が追い出されて、血液にもふだん以上の酸素が溶け込む。体にためておける酸素の量が増えるんだよ。 ※注:ふだん吸っている空気は、酸素が約21%で、残りの大半は窒素です。 15. 海外の名無しさん 「純酸素を吸えば簡単」なんて言ってる人たちは、一度自分でやってみればいい。息を止めたときの苦しさや焦りは、酸素が足りないからじゃなくて、二酸化炭素が増えすぎるから来るんだ。純酸素を体に行き渡らせておけば、意識はずっと長くもつ。それでも苦しさはやって来る。そこを力を抜いてやり過ごせるようになるのが、この記録のすごいところなんだよ。 16. 海外の名無しさん いや、これはどう考えても脳にいいわけがないと思うんだけど。 ※注:ギネス世界記録の記事は、息を長く止めすぎたときに起こりうることとして、失神やけいれん、脳の損傷などを挙げています。記録を解説した生理学者らも、訓練を受けていない人はまねをせず、専門の選手に任せるよう書いています。 17. 海外の名無しさん このあいだ2分以上息を止められて、これは世界記録を破ったなと本気で思ってた。これを見てがっかりだよ。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) まあ落ち込むなよ。少なくとも、きみは今2位にいるんだから。 19. 海外の名無しさん 自分も2分くらいなら息を止めたことがある。力を抜いて、これは体の本能との闘いなんだと分かってしまえば、たいていの人はできると思うよ。 20. 海外の名無しさん(>>19への返信) 2分でも平均よりずっと上だよ。自分も、深い呼吸の練習をしていた頃はできたけどね。 21. 海外の名無しさん じゃあ映画スターの記録はどのくらいかって? 答えは、ケイト・ウィンスレットの7分15秒だよ。 ※注:映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の水中での撮影にあたって息を止めた時間として、本人が語った数字です。公式に認定された記録ではありません。 22. 海外の名無しさん これじゃあ、10分止められるのが自慢だったあのガイブラシ・スリープウッドも形なしだな。 23. 海外の名無しさん(>>22への返信) 1作目でガイブラシを水の中に入れたまま10分待つと、本当に死んじゃうんだよね。あのシリーズで主人公が死ぬ方法は、たぶんあれだけだと思う。 ※注:ガイブラシ・スリープウッドは、1990年に第1作が出た海賊もののアドベンチャーゲーム『モンキー・アイランド』シリーズの主人公。「10分間息を止められる」のが自慢で、第1作では、水中に10分以上とどまると本当に溺れてしまいます。 24. 海外の名無しさん はっきり断言しておくけど、ぼくの息を29分も止めた人なんて、この世に一人もいないからね。 ※注:英語のスレッドタイトルは「holding your breath」。そのまま訳すと「“あなたの”息を止める」になるので、それを文字どおりに読んだ冗談です。同じ冗談がコメント欄にいくつも並んでいました。 25. 海外の名無しさん 純酸素が手に入らない、というのが自分の言い訳だね。あれば、あんなタイムは軽く抜けたはずなんだ。でも手に入らないから、永遠に分からないね。 まとめ 息止めの世界記録29分3秒は、挑戦の前に純酸素を10分間吸うことが認められた記録でした。ふつうの空気だけで挑む競技「スタティック・アプネア」はフリーダイビングの種目のひとつで、男子の記録は11分35秒。2025年には和歌山で世界選手権も開かれています。コメント欄では、但し書きを補う声と、「純酸素を吸っても苦しさは来る。そこを落ち着いて越えるのがすごい」という声が目立ちました。記録は、長い訓練と周りの見守りがあってのものです。水の中で息止めを試すのはやめておきましょう。 参考:ギネス世界記録「Longest time breath held voluntarily underwater (male)」、ギネス世界記録の記事(2025年9月)、同「Freediving – static apnea (men)」、同「Freediving – static apnea (female)」、The Conversation「The science behind a freediver’s 29-minute breath hold world record」(ウーロンゴン大学の生理学者らによる解説、2025年9月)、Divernet「How Croatian freediver held breath for 29 minutes」(2025年6月)、ScienceAlertの記事(2025年8月)、英語版ウィキペディア「Static apnea」、米疾病対策センター(CDC)の週報(2015年)、モルチャノフスの大会レポート(2025年、和歌山)、同(2026年、ブダペスト) 元ソース: 息を止める公式の世界記録は29分 The post 「息止めの世界記録は29分3秒」ただし挑戦の前に“純酸素を10分間”吸っていた…それでも苦しさは来るらしい appeared first on みんな知ってた?【海外の反応】.…