りんごの種を庭にまいて、実がなるのを待ったことはあるだろうか。運よく芽が出て木になっても、そこに実るのは、あなたが食べたりんごとは似ても似つかない小さくて酸っぱい果実だという。スーパーに並ぶふじも王林もグラニースミスも、種からではなく、たった1本の原木から枝を分けて増やしたクローンだった。 今日の知ってた? 🍎 りんごの種は、親と同じ品種にはまず育たない。りんごの木は遺伝的な組み合わせのばらつきがきわめて大きく、種の一粒一粒が「二つの親から引き継いだくじ引き」になる。そのためふじ・つがる・王林・グラニースミス・ガラといった品種は、すべて最初の1本(原木)から枝を取って接ぎ木で増やしたクローン。スーパーの棚に、種から育った木のりんごが並ぶことはまずない。 背景:接ぎ木とは 枝を「つなぐ」ことで、味をそのまま受け継がせる技術。接ぎ木(つぎき)は、増やしたい品種の枝を切り取って、別の木の根の付いた部分につなぎ合わせ、一本の木として育てる方法だ。切り取ってくる枝の側を穂木(ほぎ)、根と幹を受け持つ土台側を台木(だいぎ)と呼ぶ。地上に出て実をつけるのは穂木の側なので、できる果実の味・色・大きさは、枝を取ってきた元の木のものがそっくり再現される。 種から育てる方法は「実生」。これに対して、種をまいて育てることを実生(みしょう)という。実生の木は父方と母方の性質が混ざり合った「新しい個体」なので、味も形も親とは別物になる。りんごの場合はこのばらつきが特に大きく、甘い品種の種からとんでもなく酸っぱい実がなることも珍しくない。だから果樹園でも苗木屋でも、食べるためのりんごは接ぎ木の苗が基本になる。 台木は木の大きさも決める。台木には、幹をあまり大きく伸ばさない性質のものが使われることが多い。木が低く仕上がれば、脚立を使わずに収穫でき、日当たりや薬剤の管理もしやすい。同じ品種のりんごでも、どの台木につないだかで果樹園の見た目がまるきり変わる。 もう少し詳しく ひとつの品種は、たった1本の木から始まっている。青リンゴの代表格グラニースミスは、1860年代のオーストラリアで見つかった1本の木がはじまりだと言われる。カナダのマッキントッシュも、19世紀初めに開拓地で偶然見つかった木が起点とされる。そこから枝を取って台木につなぎ、育った木からまた枝を取る——これを200年近く繰り返した結果が、いま世界中の店先に積まれている。品種というより、生き延びている1本の木の途方もない延長線と言ったほうが実感に近い。 たまたま当たりを引いた実生は「偶発実生」と呼ばれる。種から育った木がまぐれで名品種になることは、実際にある。ただしその確率は絶望的に低い。りんごは種をまいてから実がなるまでに数年から10年ほどかかるので、味見にたどり着くまでの待ち時間だけでも相当なものになる。育種の現場では何百本、何千本という実生をまとめて育て、味・見た目・病気への強さ・毎年安定して実るかまで見て、ほとんどを落としていく。新しい名前のりんごが店に並ぶ裏側には、たいてい数十年ぶんの試食が積み上がっている。 日本の「ふじ」も、青森の1本から世界へ広がった。ふじは、青森県で国光(こっこう)とデリシャスをかけ合わせて生まれ、1962年に名前が付いた日本生まれの品種だ。いまでは中国・アメリカ・ヨーロッパなど各国で栽培され、世界でもっとも多く作られているりんごのひとつに数えられる。つがる、王林、シナノゴールドも同じで、どれも最初の1本から枝をたどって広がったもの。地球の裏側で売られているふじも、青森のあの木の続きだと思うと、りんご売り場の眺めが少し変わってくる。 ジョニー・アップルシードが配って歩いたのは、食べるりんごではなかった。19世紀のアメリカでりんごの種をまいて回ったジョン・チャップマン、通称ジョニー・アップルシードは、開拓地に果物をもたらした善人として語られてきた。だが種から育つ木になるのは、そのままではとても食べられない酸っぱい実である。開拓地の人々はそれを搾ってシードル(りんごの発酵酒)にしていた。つまり彼が広げていたのは、食卓のデザートというより酒の原料だったことになる。この見方は、マイケル・ポーランの『欲望の植物誌』(原題 The Botany of Desire)などで紹介されて広く知られるようになった。 海外の反応 1. 海外の名無しさん りんごの木は遺伝的なばらつきが大きくて、種一粒ごとに違う組み合わせが出てくる。だから種から育てても、たいていは小さくて酸っぱい、元のりんごとは別物ができる。グラニースミスもガラもハニークリスプも全部クローンだよ。原木から枝を取って台木につないだものが、世界中に広がっただけ。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) 種の話はどこかで聞いたことがあったけど、ここまで極端だとは思わなかった。よく考えたら人間の子どもだって親のコピーじゃないもんな。ただ他の植物は同じものが延々できる印象があったから、そこがずっと引っかかってた。 3. 海外の名無しさん(>>1への返信) つまり今スーパーに積まれているグラニースミスは、150年以上前の1本の木の続きってことか。テセウスの船のりんご版だな。枝も根も全部入れ替わったあとで、まだ同じ木と呼んでいいのかどうか。 4. 海外の名無しさん ということは、庭に種をまきまくれば、とんでもない新品種を引き当てる可能性もあるってことか。宝くじを買うより夢がある気がしてきた。土地と時間さえあれば誰にでも権利はあるわけだ。 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) 実がなるまで5年から10年は待つことになる。100本植えて、なんとか食べられるのが3〜4割、そのうち「おっ」と声が出るのが1割くらい。さらに毎年安定して実って出荷にも耐える木となると、1本出たら大当たりだよ。 6. 海外の名無しさん(>>4への返信) アメリカだとりんご産地の州立大学が、そのくじ引きを何千本という規模で回してる。研究者人生を丸ごと使って品種をひとつ世に出す人もいる。スーパーで見慣れない名前を見かけたら、その裏に数十年ぶんの試食があると思っていい。 7. 海外の名無しさん 「ほぼすべて」じゃなくて「すべて」でいいのでは。少なくとも箱で流通している量産りんごに、種から育った木の実が混ざっていることはまずないはず。自分で育てた人の庭先の一本だけが例外だと思う。 8. 海外の名無しさん この話でひっくり返るのがジョニー・アップルシード(19世紀のアメリカでりんごの種をまいて回った実在の人物、本名ジョン・チャップマン)だよ。彼がまいた種から育つのは、そのままでは酸っぱくて食べられないりんご。開拓地の人たちはそれを搾って酒にしていた。配って歩いていたのは果物というより酒の原料だったわけだ。 9. 海外の名無しさん(>>8への返信) 当時の開拓民は年に30ガロン、およそ110リットルのシードルを飲んでいた、なんて話もある。とんでもない量に聞こえるけど、365日で割ると1日0.3リットル。缶ビール1本ぶんにも届かない。数字にすると意外とつつましい。 10. 海外の名無しさん 日本のふじも同じ仕組みで、青森で国光とデリシャスをかけ合わせて生まれた1本が出発点だと聞いた。いま国内外で実っているふじが全部その木から枝をたどったものだと思うと、りんごを一口かじるだけで妙に感慨深くなる。 11. 海外の名無しさん(>>10への返信) ふじは日本だけの話じゃなくて、中国でもアメリカでもヨーロッパでも普通に作られてる。地球の反対側の店先に並んでいるりんごが、青森生まれのたった1本とつながっているというのは、地味だけどとんでもない事実だと思う。 12. 海外の名無しさん みかんやオレンジといった柑橘も、苗木屋に並んでいるのはほぼ接ぎ木の苗だよ。種から育てると実がつくまでの年数がとにかく長いし、木の勢いも実の付き方も揃わない。趣味でやるにも覚悟がいる。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) うちは生ごみを積んでいた場所からアボカドが芽を出した。そのまま育てるか抜いてしまうか、いまだに迷ってる。放っておくと大木になるし、食べられる実がつくかどうかわかるまで何年もかかると聞いて手が止まった。 14. 海外の名無しさん この流れでバナナを調べ始めると、もっと深いところまで落ちていくことになるよ。世界中で売られている品種がほぼ単一のクローンで、しかも病気に追い立てられている。りんごの話より背筋が寒くなる展開だった。 15. 海外の名無しさん 曾祖父の家の庭に、1本で4種類のりんごがなる木があった。子どもの頃はずっと魔法だと思っていたけど、あれは1本の台木に違う品種の枝を何本もつないだものだったんだな。何十年も経ってようやく腑に落ちた。 16. 海外の名無しさん ハニークリスプはミネソタ大学が地道な交配の末に生み出した品種。あれが出回ってから、こっちのスーパーのりんご事情は一気に変わった。見た目だけ立派で味が置いてけぼりだったレッドデリシャス(アメリカで長く定番だった真っ赤な品種)の時代が長すぎたんだよ。 17. 海外の名無しさん 種から育った木がまぐれで当たりを出したものを「偶発実生」と呼ぶらしい。カナダのマッキントッシュは19世紀初めに開拓地で見つかった1本がはじまりだと言われている。当たりはちゃんと出る。確率が絶望的なだけで。 18. 海外の名無しさん もっと知りたい人には、マイケル・ポーランの『欲望の植物誌』(原題 The Botany of Desire)をすすめたい。りんご、じゃがいも、チューリップ、大麻の4つを軸に、人間のほうが植物に選ばれている側かもしれないという視点で書かれている本。 19. 海外の名無しさん(>>18への返信) あれは本当に面白かった。ジョニー・アップルシードの章を読むと、教科書に載っていた善人めいた人物像が音を立てて崩れていく。歴史を植物の側から眺め直すという発想そのものが新鮮だった。 20. 海外の名無しさん 最近の新品種は品種登録されていて、枝を勝手に取って増やせないものも多い。1本の木から始まるという仕組みは何百年も変わっていないのに、そこに権利の線が引かれているところだけがやけに現代的だと思う。 21. 海外の名無しさん 豆知識のつもりで開いたら、途中から完全に園芸の話になっていて笑った。でもおかげで自分の家の庭木がどこから来たのか気になり始めたので、これから物置に残っている苗木のラベルを確認してくる。 22. 海外の名無しさん パイナップルもクローンで増やす作物だよ。ピンク色の品種を育てている農園は警備が厳重で、株を持ち出せないように頭の部分を切り落としてから出荷している、なんて話も聞いたことがある。果物の世界は思ったより物騒だ。 23. 海外の名無しさん 去年、食べたりんごの種を鉢にまいてみたところだった。芽は出たけど、この話を読んで期待する方向が変わった。親と同じ味は出ない代わりに、世界に1本しかない木が育つと考えれば、それはそれで悪くない育て甲斐がある。 まとめ 種から育つりんごは、親と同じ品種にはならない。だからスーパーに並ぶふじも王林もグラニースミスも、たった1本の原木から枝を分けて増やしたクローンで、私たちは何十年、何百年も前に見つかった木の続きを食べていることになる。コメント欄では「じゃあ庭にまいた種はどうなるのか」という素朴な疑問から始まり、ジョニー・アップルシードが配っていたのは実は酒の原料だったという話、柑橘やアボカドやバナナへの脱線を経て、最後は自分の家の庭木のラベルを確認しに行く人まで現れていた。りんご一つの裏に、200年ぶんの枝がつながっている。 元ソース: りんごの種を植えても、親と同じ品種はまず育たない。スーパーのりんごはほぼすべて、原木から接ぎ木で増やしたクローンだった The post 「ふじの種をまいても、ふじは実らない」それでも世界中でふじが食べられている理由、知ってた? 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