2009年1月、アメリカの空を一機の自家用機が無人のまま飛び続けた。操縦席には誰もいない。横のドアは開きっぱなし。緊急発進した軍のジェット機がその様子を確認したとき、機体の持ち主はすでにアラバマの森の上空でパラシュートを開いていた。彼は自分が死んだことにするつもりだった。その計画が崩れるまで、2日もかからなかった。 ※注:小型機の自動操縦は、あらかじめ設定した針路と高度をそのまま保ち続けるだけの装置で、目的地に着陸させてくれるようなものではない。燃料が尽きれば、機体はそのまま降りていく。 今日の知ってた? ✈️ 2009年1月11日、アメリカの資産運用マネージャー、マーカス・シュレンカーは、自家用機を自動操縦にしたままアラバマ州上空でパラシュート降下し、機体を墜落させて自分の死を偽装しようとした。無人の機体はそこから約200マイル(約320キロ)を飛び続け、フロリダ州ミルトンの北に落ちた。本人は生き延びたものの、2日後にフロリダ州内のキャンプ場で身柄を確保されている。 背景:飛び立つ前から、彼の足元は崩れていた マーカス・シュレンカーはインディアナ州で資産運用会社を営んでいた。高級車を何台も持ち、自家用機を飛ばし、パーティーを開く。2000年代に金融で成功した人物のイメージそのものだった。 ところが2008年の金融危機のあと、その足元が一気に崩れる。顧客の資金の扱いをめぐって当局の調査が入り、証券詐欺の疑いが向けられた。 ※ 証券詐欺とは、投資家に虚偽の説明をして資金を集めたり、預かった資金を届け出と違う使い方をしたりする犯罪のこと。アメリカでは州の当局と連邦の当局の両方が動くことがあり、同じ人物の行為が州法違反と連邦法違反に分かれて別々に裁かれる。収容される刑務所も州立と連邦とで別系統になる。 私生活のほうも同時に傾いていた。墜落の12日前にあたる2008年12月30日、妻が離婚を申し立てている。理由は、彼が飛行機を置いていた空港で働く女性との不倫だった。仕事も家庭も、同じ月のうちに行き止まりになっていたわけである。 もう少し詳しく 遭難通報から、すでにおかしかった。1月11日の夜、飛行中のシュレンカーは無線でこう伝えた。「フロントガラスが破裂した。大量に出血している」。深刻な緊急事態である。ところが彼が通報した位置はアラバマ州バーミングハムの近くで、そこには州の空軍部隊の基地があった。軍のジェット機がただちに向かうことになる。 ※ アメリカでは、正体不明の機体や緊急事態を知らせてきた機体に対して、州ごとに置かれた空軍州兵の部隊が戦闘機を出して確認に向かうことがある。人口の多い地域では、通報から十数分で機影が並ぶことも珍しくない。 追いついたジェット機が見たのは、無人の操縦席だった。機体には横のドアが開いた状態で、コックピットには誰もいなかった。ジェット機はそのまま追尾を続け、機体は午後9時20分ごろ、フロリダ州ミルトンの北に落ちた。墜落地点は住宅地からわずか50〜75ヤード、メートルに直せば50〜70メートルほどしか離れていない。誰にも当たらなかったのは運がよかっただけである。 現場に、彼の話を裏づけるものが何ひとつなかった。調査に入った捜査員が最初に確認したのは、機内に血の跡がまったくないこと、そしてフロントガラスにも破損の形跡がないことだった。無線で言っていたことが、その場で丸ごと否定されたわけである。さらに機内からは、全米の道路地図帳とキャンプ場の一覧が見つかった。どちらも、フロリダとアラバマにあたるページだけが破り取られていた。 降下した先でも、目立つ行動をしている。パラシュートで降りたあと、彼は夜を過ごす場所を探して警察に声をかけたと伝えられている。翌1月12日には、隣人で友人でもあったトム・ブリットにメールを送った。あの墜落は「誤解」であり、帰るのが「恥ずかしくて怖かった」のでモーテルに入った、という内容だった。ブリットはそのメールをそのまま警察に渡している。 2日後、フロリダのキャンプ場で。捜索の網は早い段階で絞られていた。1月13日、彼はフロリダ州内のキャンプ場で発見される。このとき彼は自らを傷つけたあとで負傷しており、病院に運ばれた。命は助かっている。 その後。沿岸警備隊を欺いた罪を含め、複数の罪に問われた。服役期間そのものは長いものではなく、数年で出所している。しかも本人はその後も「自分は濡れ衣を着せられた」と主張し続けた。獄中で同房になった元詐欺師のマシュー・コックスが彼への取材をもとに本を書いているが、できあがったのは「無実の男の記録」ではなく、「話を作り続ける男の記録」だったという。 ※ 沿岸警備隊は海上の救難や警備を担当するアメリカの連邦組織。虚偽の遭難通報は、捜索に出る人員と機材を無駄に危険へさらすため、それ自体が犯罪として扱われる。 海外の反応 1. 海外の名無しさん 飛行機事故で死を偽装するときの鉄則を忘れてるんだよな。残骸の中に自分の代わりを一人置いておかないといけない。空っぽの機体だけ落としても、誰も死んだとは思ってくれない。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) そこまで行く前の段階でもう終わってる。機内に血が一滴も残ってなくて、しかもフロントガラスは無傷。本人が無線で言ってた内容と、現場に残ってたものが完全に食い違ってる。 3. 海外の名無しさん 記録を読むと本当にひどい。追いついた軍のジェット機がドアの開いた無人の機体を目視していて、墜落後の機内からは地図帳とキャンプ場の一覧が出てきて、しかもフロリダとアラバマのページだけ破り取られていた。逃げる先を書いた紙を現場に置いてきたようなものである。 4. 海外の名無しさん(>>3への返信) たしか降下する予定の森のどこかにオフロードバイクを隠しておいて、それでキャンプ場まで移動したはず。飛行機を操縦できて、パラシュートで降りられて、バイクにも乗れる。技能そのものはすごいんだけど、並べてみると14歳の男子が憧れる能力一式なんだよな。中身が14歳のまま姿を消そうとすると、こうなる。 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) 金を持ってる人間は、実際より賢いことになってしまうんだよ。周りが誰も止めないし、本人も止まらない。 6. 海外の名無しさん 遭難通報の中身がもう笑えない。「フロントガラスが破裂して大量に出血している」と言っておいて、機体には血の跡もひび割れもなし。しかも通報したのが空軍部隊の基地のすぐそばで、確認の戦闘機が即座に飛んできた。よりによって一番見られる場所を選んでいる。 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) 極めつけは、降りたあとに夜を過ごす場所を探して警察に声をかけているところ。世の中から消えたい人間がとる行動ではない。 8. 海外の名無しさん(>>7への返信) 趣味で小型機に関わってる立場から言うと、大手の航空会社で働くのでもない限り、一般の飛行機の世界は頭のよさより先に必要なのがお金なんだ。免許を持っていることと判断力があることは、残念ながら別の話である。 9. 海外の名無しさん まだ動画にして投稿しなかっただけマシだと思うことにしている。あの手のことをやる人間は、たいてい撮影してから捕まるので。 10. 海外の名無しさん(>>9への返信) 「自分の死を偽装してみた」「2日後にとんでもないことが起きました」みたいな題名が付いて、概要欄には結局そのまま裁判の傍聴案内が貼られるところまで見えた。 11. 海外の名無しさん この飛行の進路について、あまり誰も指摘していないと思うんだが、機体はまっすぐ南のメキシコ湾に向かっていた。そのまま海に出ていれば、機体も本人も行方不明のまま片づいていた可能性が高い。本来の計画はそれだったはずで、海岸まであと30キロほど届かなかったのが致命傷になった。 12. 海外の名無しさん(>>11への返信) それは不運じゃなくて、燃料の計算をしていないだけだと思う。ドアを開けっぱなしにしたぶん空気抵抗が増えて、燃費はかなり悪化する。頭の中で考えた計画と、実際に飛ぶ機体の挙動は別物だという、わりとありふれた話である。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) そもそも墜落する前の時点で、機内に誰もいないことは確認されていたわけだからね。海に届いていたとしても、無線で言っていた内容とのずれはそのまま残った。 14. 海外の名無しさん 仕上げに、沿岸警備隊を欺いた件でも罪に問われている。実際に人と機材が動いて、他の救難に回せたはずの時間が消えているわけで、これはきちんと数えてほしいところ。 15. 海外の名無しさん(>>14への返信) それでも服役は数年で終わっていて、今はどこかで元気にしているはず。たぶん今日もどこかで、誰かにうまい話を持ちかけていると思う。 16. 海外の名無しさん(>>15への返信) その予想が外れていてほしかった。ところが実際は、獄中でも出所後も「自分ははめられた」と言い続けていたらしい。同じ施設にいた元詐欺師が彼に何度も取材して本にしたんだけど、本人が望んだ「無実を晴らす本」ではなく、「嘘をつき続ける人の記録」として出てしまった。 17. 海外の名無しさん うちの沼に落ちてきたやつだ。冗談ではなく本当に、フロリダ州ミルトンの外れ、家のすぐ横である。あの晩は何が起きたのかまったく分からなかった。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) おらの沼から出ていけ、と叫ぶ権利がある人が現れてしまった。まさか本人が乗っていないとは思わなかっただろうね。 19. 海外の名無しさん アメリカには、墜落したまま今も見つかっていない小型機がいくつもある。山の中や湖の底に沈んだままのやつだ。要するに、彼は落とす場所を間違えただけとも言える。まあ、間違えてくれてよかったんだけど。 20. 海外の名無しさん 昔の刑事ドラマで、これとほとんど同じ筋書きを見た記憶がある。作り話の世界では偽装した死は必ず見破られる決まりになっていて、現実でもだいたいそのとおりになるという教訓だと思う。 21. 海外の名無しさん これだけのことをやって服役は数年というのが引っかかる。国内では、扱っているものによっては桁違いに重い刑になる例もあるのに、金融の話になると急に軽くなる。金があると違うんだな、と思わされる。 22. 海外の名無しさん 航空事故の調査は、乗り物の事故の中でも群を抜いて細かい。部品を一つずつ拾い集めて、機体をもう一度組み直すところまでやる世界である。死を偽装する舞台として、飛行機はおそらく最悪の選択だった。 23. 海外の名無しさん 間抜けな話として消費されがちだけど、見つかったときの彼は自分を傷つけたあとで、病院に運ばれている。仕事も家庭も同じ月に壊れて、逃げ道を全部ふさがれた人間が最後に考えた計画がこれだった、と思うと笑いきれないものが残る。 まとめ 自動操縦にした自家用機から飛び降りて、無人の機体を落とす。文章にすると映画のようだが、実際に起きたのは、血の跡のない機内と無傷のフロントガラス、そして破り取られた地図のページが残るだけの結末だった。しかも通報したのは空軍部隊の基地のすぐそばで、降りたあとには警察に宿を尋ねている。コメント欄でも「一つ一つの技能は本物なのに、組み立て方が全部おかしい」という点に呆れる声が並んだ。 一方で、海まで届いていれば結果は違ったのではないか、という技術的な検討も盛り上がっていた。ドアを開けたままにしたぶん空気抵抗が増えて燃料が早く尽きた、という指摘まで出てくるあたりが、この掲示板らしいところである。そして最後には、笑い話として片づけきれない部分も静かに共有されていた。逃げ切れる計画などそもそも存在しなかったのだと思いますが、皆さんはどう読みますか。 元ソース: 「2009年、資産運用マネージャーのマーカス・シュレンカーは自家用機を自動操縦にしてアラバマ上空でパラシュート降下し、死を偽装しようとした」(元スレッド) The post 「フロントガラスが破裂して大量に出血している」通報された機体には血の跡もひび割れも無かった…2009年に死を偽装した男の話 appeared first on みんな知ってた?【海外の反応】.…