「引っ越すたびに、部屋の中身を丸ごと入れ替える」——それを一族全員が、600年以上にわたって続けたらどうなるか。その答えがオーストリアに残っている。歴代の君主は宮殿に移り住むたびに内装を新調し、前の代の家具は捨てずに倉庫へ運び込んだ。積み上がった結果、いまオーストリアという国が所有している家具は16万点にのぼる。 ※注:ハプスブルク家は、13世紀末から1918年まで、オーストリアを本拠にヨーロッパへ君臨した一族。神聖ローマ皇帝の位を長くほぼ独占し、マリア・テレジアや、その娘でフランス王妃になったマリー・アントワネットもこの家の出身である。 今日の知ってた? 🪑 ハプスブルク家の君主は、宮殿に移るたびに内装をつくり替え、前の代の家具を処分せず倉庫に入れていた。それが代替わりのたびにくり返された結果、いまオーストリア国家が所有する家具は約16万点にのぼる。1点あたり1分だけ眺めるとして、1日8時間のペースで通っても、全部を見終わるのに11か月かかる計算になる。 背景:ハプスブルク家と、宮廷の「家具倉庫」 ハプスブルク家がヨーロッパで抜きん出た理由は、戦争の強さではなく結婚だった。「戦争は他家に任せておけ。幸いなるオーストリアよ、汝は結婚せよ」——一族を語るときに必ず引かれる有名な一節である。実際、彼らは婚姻によって領地と王冠を集め続け、その代償として一族の中での結婚が何度もくり返された。この「身内で完結する家系図」は、のちの時代までネタにされ続けている。 そんな一族が、宮殿の家具をどう扱っていたか。当時のヨーロッパ宮廷にとって、椅子や机は消耗品ではなく資産だった。彫刻を施した木材、大理石、絹の張り地——どれも職人が何か月もかけて仕上げるもので、気軽に捨てられるものではない。そこで宮廷には、家具をまとめて面倒みる部署が置かれた。宮殿や離宮に家具を配り、傷んだものを直し、使われなくなったものを引き取って保管する。この仕組みが本格的に整えられたのは、18世紀半ばのマリア・テレジアの時代とされている。 つまり「捨てない」のは君主の気まぐれではなく、制度としてそうなっていた。新しい皇帝が自分の趣味で部屋を模様替えする。前の主が使っていた一式は、壊されるのではなく台帳に記録されて倉庫に送られる。バロック、ロココ、ビーダーマイヤー——流行の様式は世代ごとに変わっていくから、倉庫の中には時代の層がそのまま積み重なっていくことになる。 もう少し詳しく 帝政が終わったとき、家具は国のものになった。1918年、第一次世界大戦の敗戦とともにオーストリア=ハンガリー帝国は解体し、600年以上続いたハプスブルク家の統治が終わる。宮廷が抱えていた財産は共和国へ引き継がれ、倉庫に眠っていた家具もそのまま国有財産になった。「オーストリア国家が16万点の家具を所有している」という奇妙な一文は、この経緯から生まれている。誰かが集めたコレクションではなく、王朝が畳まれたあとに残った在庫なのである。 倉庫が、そのまま博物館になった。ウィーンにあるこの家具博物館は、もともと宮廷の家具倉庫(ホーフモビリエンデポ)そのものだった建物と組織が、一般公開の施設へ姿を変えたものである。世界でも有数の規模の家具コレクションとして知られていて、あまりに数が多いため、展示は入れ替えながら回している。訪れた人がまず驚くのは個々の名品ではなく、椅子が奥まで整然と並ぶ光景のほうだという。美術館というより、開けっぱなしにされた実家の物置を果てしなく引き伸ばしたような場所らしい。 その頂点にいた皇帝は、驚くほど質素な寝台で寝ていた。68年という長い在位を務めたフランツ・ヨーゼフ1世は、シェーンブルン宮殿の執務机のすぐそばに、飾り気のない簡素なベッドを置いていた。金と彫刻で埋め尽くされた宮殿の中で、そこだけ空気が違う。朝も早くから机に向かい、書類に署名し、陳情を聞き続けた人物として知られている。16万点の家具を生んだ王朝の最後期を支えた皇帝が、いちばん装飾のない家具を使っていた——という対比は、この話のいちばん収まりのいい落ちかもしれない。 海外の反応 1. 海外の名無しさん この倉庫の蔵出しセールがあるなら、前の晩から並んででも行きたい。値札のつけようがない何かが、絶対に一つは混ざっているはずだ。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) 本気でそう思う。600年ぶんの引き出しを誰も全部は開けていないわけで、忘れられた金貨の一枚くらい出てきてもおかしくない。 3. 海外の名無しさん(>>1への返信) でも現実は「装飾が過剰すぎて怖くて使えない」だと思う。持ち帰った瞬間に、家のほうが場違いに見えはじめるやつ。 4. 海外の名無しさん イケアに行く必要ある? ハプスブルク家の倉庫から一脚持ってくれば済む話では。配送料はさすがに高そうだけど。 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) マホガニーと大理石でできた組み立て式家具がイケアにあるとは知らなかった。あの六角レンチで皇帝の椅子が組めるなら、ぜひ見てみたい。 6. 海外の名無しさん ウィーンの家具博物館に行けば実物がかなりの数見られる。宮殿めぐりで疲れた日にちょうどいいので、旅程に半日入れておく価値はある。 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) 公式の見学目安は70分くらいだったはずなのに、自分は3時間いた。シャンデリアの前で足が止まって動けなくなる。 8. 海外の名無しさん(>>6への返信) あそこ、以前は「宮廷家具倉庫」という直球の名前だった。倉庫と名乗っていた頃のほうが、中身に対して正直だった気もする。 9. 海外の名無しさん なんで少しずつでも売らないんだろう。16万点が倉庫で何もせずに寝ているのは、さすがにもったいなくないか。 10. 海外の名無しさん(>>9への返信) 相当な数はすでに博物館へ入っていて、展示を入れ替えながら回している。あとオーストリアは、歴史的な家具を売って予算の穴を埋めなければならない国ではない。 11. 海外の名無しさん(>>9への返信) オーストリア人だけど、この手のものが売りに出ることはまずない。もとから個人の持ち物なら話は別だが、国が持っている以上、傷つくかもしれない場所へ出す案は検討にすら上がらない。 12. 海外の名無しさん 同じくオーストリア人だが、正直16万点すべてに歴史的価値があるとは思っていない。皇帝が日常的に使ったベッドならわかる。ただ据え付けた椅子の一脚一脚まで残す必要はあるだろうか。年に100点ずつ手放すなら値崩れもしないし、それなりの額になると思う。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) その数そのものが価値なんだと思う。倉庫に入ると見渡すかぎり椅子が並んでいて、しかもそれで全体の一部でしかない。「いい椅子だな」ではなく「まだこんなにあるのか」と思わせるところに意味がある。 14. 海外の名無しさん 気になるんだけど、様式は全部バラバラなのか、それとも並べて見ると妙に似ているのか、どっちなんだろう。 15. 海外の名無しさん(>>14への返信) 「このベッドは、姉妹でもある叔母を思い出す。あのベンチは、叔父でもあるいとこが別のいとこに求婚した場所だ」——そりゃ全部入れ替えたくもなる。 16. 海外の名無しさん 親戚はあれだけ共有していたのに、家具のほうは共有しなかったのか。優先順位がよくわからない一族だ。 17. 海外の名無しさん フランツ・ヨーゼフ1世のベッドはシェーンブルン宮殿に今も置いてある。執務机の横にある簡素な寝台で、あの宮殿の中では明らかに浮いている。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) 朝4時前に起きて、夕食の時間までひたすら机に向かっていたと言われている。あのベッドは眠るためというより、倒れ込むための場所だったんだと思う。 19. 海外の名無しさん(>>17への返信) 書類に署名して、陳情を聞いて、許可を出す。それは儀礼ではなく仕事そのものでは。いまの国のトップだって、中身は同じことをしている。 20. 海外の名無しさん 16時間ぶっ通しの書類仕事と窓口対応。住んでいるのが宮殿だろうと、それは普通に地獄だと思う。 21. 海外の名無しさん バロックの過剰な装飾は嫌いじゃないんだけど、あれで座り心地までいいとはどうしても思えない。背もたれの彫刻が背中に刺さりそうで怖い。 22. 海外の名無しさん(>>21への返信) それが意外と快適らしい。よく考えたら、王子様に硬い椅子を用意する職人がいるわけがない。見た目だけの家具は宮廷では通らなかったんだろう。 23. 海外の名無しさん 昔、小さな骨董商の手伝いをしていたとき、ホーフブルク宮殿から出たという椅子が家に二脚あった。彫りが細かくてやたら大きくて、他の骨董の山に埋もれていても一目でそれとわかる。本人は玉座だと言い張っていたけど、たぶん食堂あたりのものだったんじゃないかな。 24. 海外の名無しさん ウィーンはとにかく変な博物館の多い街だ。サーカス博物館まであるくらいだから、宮廷の物置がそのまま博物館になっていても誰も驚かない。 まとめ 君主が代わるたびに内装を総取り替えし、前の代の家具は捨てずに倉庫へ。それを600年以上くり返した結果、いまオーストリアという国は16万点の家具を抱えている。帝政が終わったあと、宮廷の在庫がそのまま国有財産として残ったからである。コメント欄は「その蔵出しセールに並びたい」という冗談から始まって、「売れば財源になるのでは」という現実的な意見と、「見渡すかぎり椅子が並ぶ光景そのものが価値なんだ」という反論が、オーストリア人同士でぶつかるところまで進んでいた。捨てなかっただけの倉庫が、100年経つと国の宝になる。片付けが苦手な人にとっては、少しだけ心強い話かもしれない。 元ソース: ハプスブルク家の君主は宮殿に移り住むたびに内装をつくり替え、古い家具を倉庫に入れていた。その結果、オーストリア国家はいま16万点の家具を所有している The post 「引っ越すたび内装を総取り替えし、古い家具は倉庫へ」その結果オーストリアという国が持っている家具は16万点… appeared first on みんな知ってた?【海外の反応】.…