目隠しをしてコーヒーを飲み比べたら、77%の人がドリップよりインスタントのほうを選んだ——という話が海外の掲示板で1万を超える支持を集め、コメント欄が1400件を超えた。ところが盛り上がりの中身は「やはりインスタントは侮れない」ではなかった。人が集まってきたのは、その77%という数字がどうやって出てきたのかを検算するためである。結論から言うと、この数字の見え方は、テストの条件を一つ知るだけで大きく変わる。 ※注:ここでいうドリップコーヒーは、日本でイメージされがちな一杯ずつ落とすハンドドリップというより、アメリカの家庭や食堂で使われている自動コーヒーメーカー式の抽出を指している。豆を挽いてフィルターにセットし、まとめて落として保温ポットに溜めておくタイプである。 今日の知ってた? ☕ ブラインドの飲み比べで、77%の人がドリップよりインスタントコーヒーを選んだ——という記事が海外で話題になった。ただし元記事に書かれている手順をたどると、テスターの前に並んだのは三桁のランダムな番号だけを振った2オンス(約60ml)の熱いブラックコーヒー5杯で、カテゴリーごとに10〜20人が味見する形式だったとされる。そして最終的な比較の顔ぶれはインスタント8種に対してドリップ3種だった、とスレッドでは指摘されている。 背景:その「77%」はどうやって出た数字か まず、元記事に書かれている手順のうち、はっきり確認できる部分から順に見ていく。このテストは、いきなり「インスタント対ドリップ」で始まったわけではなかった。最初にインスタントコーヒーの中から良いものを絞り込む予選がある。粉末とフリーズドライ、湯に浸して使うコーヒーバッグ、濃縮液、そしてコーヒーペーストなどのその他——というふうにタイプ別のカテゴリーに分け、それぞれの中で比べていく形式だ。どれもパッケージの指示どおりに淹れ、カテゴリーごとに10〜20人のテスターにブラインドで出した、と書かれている。 出し方も具体的に説明されている。参加者の前に並ぶのは、三桁のランダムな番号だけが書かれた2オンス、およそ60mlの熱いブラックコーヒーが5杯。中身はすべて違う銘柄で、ミルクも砂糖もなし。エスプレッソのデミタスよりひとまわり大きい程度の量を、5杯続けて口に運ぶ。 元記事から確実に拾えるのはここまでである。実施したのがどこの誰で、いつ行われたのかは、このスレッドに流れてきた情報からは確認できない。参加者の国籍も、どうやって集めたのかも同じく不明で、詳細は明らかにされていない。以下に出てくる人数の数字は、元記事を読んだ人がコメント欄に書き込んだ内容なので、そのつもりで読む必要がある。 その書き込みによれば、最終ラウンドに残ったのはインスタント8種とドリップ3種で、参加者は44人。うち34人が「一番好きな一杯」としてインスタントのいずれかを選び、10人がドリップを選んだ。34を44で割ると、ちょうど77%になる。ドリップ3種のうち1つは、アメリカで最も大衆的な銘柄のひとつとして知られるフォルジャースだった、という書き込みもあった。ただしこれらはいずれも読者の証言であって、記事本文として引用されたものではない。 もう少し詳しく 選択肢の数が、そもそも釣り合っていない。コメント欄で最も支持を集めた指摘がこれだった。11種類のうち8種類がインスタントなのだから、目をつぶって完全にでたらめに指を差しても、8÷11=約73%はインスタントに当たる。実際の結果は77%。差は4ポイント、44人という規模で言えば2人分ほどでしかない。「ドリップよりインスタントが好まれた」と読める見出しの数字は、選択肢の内訳を一つ知った途端に、ほとんど何も言っていない数字に変わってしまう。 片方だけが予選を勝ち抜いてきている。手順をもう一度たどると、インスタント側は事前のカテゴリー別テストで評判の良かったものが選ばれて最終ラウンドに来ている。つまり、すでにブラインドで一度勝っている顔ぶれだ。一方のドリップ3種にそうした絞り込みがあったかどうかは、記事の説明からは読み取れない。片方は選抜チーム、もう片方はたまたま呼ばれた3人という構図になっていた可能性がある——というのがコメント欄の見立てである。 一口だけの試飲は、普段の一杯とは別の競技だ。スレッドで真っ先に引き合いに出されたのは、1980年代のコーラ騒動だった。飲み比べで負けた側が味を作り直し、その新しい味が市場でまったく受け入れられずに元に戻した、という有名な失敗である。一口の試飲では、はっきりした味、甘い味、輪郭の強い味が有利になる。ところが同じ味を200ml飲み続けると、その強さがそのまま重さに変わる。ある人はこれを「BBQチキンピザの一切れ目は世界一うまいが、三切れ目はもう無理」と言い表していた。60mlのカップで勝つ味と、毎朝マグカップで飲み続けられる味は、必ずしも同じではない。 ドリップは、道具と腕で天にも地にもなる。豆の鮮度、挽き目、湯温、水質。ここが揃った一杯と、作り置きで1時間保温されていた一杯とでは、同じ「ドリップコーヒー」という呼び名でくくるのが乱暴なほど別物になる。しかも、インスタントとドリップで同じ豆を使っていなければ、比べているのは抽出方法ではなく単に銘柄の違いだ。「変数を制御していないのだから、この人たちは抽出方法を検証してなどいない」というコメントには、多くの同意が並んだ。 それでも、インスタント側が変わったという実感は共通していた。方法論を厳しく突いていた人たちも、この点ではおおむね一致していた。赤と白のラベルの瓶しか選択肢がなかった時代を知っている世代ほど、今のインスタントの出来に驚いている。フリーズドライの精度が上がり、単一農園の豆を使った高価格帯のインスタントまで棚に並ぶようになった、という声が並んだ。普段は豆を挽いて淹れる人が「来客用と非常用に何種類か置いてある。正直、悪くない」と書いていたのが、この日のスレッドの空気をよく表していたと思う。 海外の反応 1. 海外の名無しさん 飲み比べでペプシがコーラに勝ったせいで、コーラが味を作り直して大失敗した件を思い出した。ああいうテストは実際に飲む場面をまったく再現できてない。しかも人は一口だと甘いほうに引っ張られる。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) 試飲は量が少ないのが決定的なんだよね。甘さでも何でも、少量なら際立って感じるものが、多く飲むと途端に重くなる。俺はBBQチキンピザの一切れ目が世界で一番好きだけど、二切れ目からはもうしんどい。普通のピザなら何切れでもいけるのに。 3. 海外の名無しさん これ数字を確認したほうがいい。インスタント8種にドリップ3種、参加者44人。34人がインスタント、10人がドリップを選んで77%。でも完全にランダムに選んでも平均で73%はインスタントになる比率だぞ。ほぼ偶然の範囲じゃないか。 4. 海外の名無しさん(>>3への返信) しかも順番が悪質だ。インスタントは事前テストで勝ち残った8種で、ドリップ側にそういう選抜があった形跡がない。予選を勝ち抜いたチームと、通りすがりの3人を戦わせて「勝った」と言われても困る。 5. 海外の名無しさん(>>3への返信) 言いたいことは分かるけど、そこまで切り捨てなくてもいいと思う。少なくとも「インスタントは飲めたものじゃない」という思い込みのほうは、この結果で結構ぐらついてる。優劣を証明した数字ではなく、思い込みを揺らした数字として読めばいい。 6. 海外の名無しさん ドリップコーヒーって、新鮮な豆をちゃんと挽いてきれいな水で淹れれば最高級の一杯になるし、安い粉を熱すぎる湯で焦がして水道水で淹れればただのひどい液体になる。振れ幅が大きすぎて「ドリップ」とひとくくりにする意味がない。 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) 逆もあって、完璧な水と技術と最高の豆でハンドドリップすると、大半の人が「これコーヒーの味なの?」と言う一杯ができあがる。だいたい、インスタントとドリップで同じ豆を使ってないなら、その時点で巨大な変数が入ってる。抽出方法を比べたことになんてなってない。 8. 海外の名無しさん 人は慣れた味、予想どおりの味を好む。ただそれだけの話じゃないの。毎朝それを飲んでる人にとっては、その味が「コーヒーの味」なんだから。驚くようなことは何もない。 9. 海外の名無しさん(>>8への返信) そのとおり。食堂のドリップみたいな大量生産向けの味は、できるだけ多くの人が受け入れられるように作られてる。逆にスペシャルティのほうに踏み込むと、浅煎りで酸が高くてフルーツみたいな香りがして、乾燥の工程由来の複雑な風味まで乗ってくる。慣れてない人が一口で選ぶ勝負になったら、そりゃ負けるよ。 10. 海外の名無しさん 出されたのが2オンスのブラック一杯だってところが肝心だと思う。普段ミルクと砂糖を入れて飲んでる人なら、この条件では単におとなしいほうを選ぶはずで、それがたまたまインスタント側だったという話じゃないかな。 11. 海外の名無しさん(>>10への返信) 自分は砂糖もミルクも入れないブラック派だけど、インスタントは尖ってて酸っぱくて苦い印象しかない。あれを続けて飲むのはちょっと無理だ。だから条件がブラックだから有利、という話でもない気がする。 12. 海外の名無しさん 公平に言って、インスタントは自分が子どもの頃とは完全に別物になった。当時は赤と白のラベルの瓶しか選択肢がなかったからね。普段はフレンチプレスで挽いた豆を使ってるけど、来客用と非常用に新しい銘柄のインスタントを何種類か常備してる。正直、悪くない。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) カフェ・ブステロのインスタントが本当に良くて、今では家で飲むコーヒーの第一候補になってしまった。豆を挽いた日より、瓶からスプーンで掬った日のほうが多い月すらある。認めるのが少し悔しい。 14. 海外の名無しさん(>>12への返信) インスタントの一番えらいところは、瓶を買って戸棚の奥に放り込んで、そのまま存在ごと忘れられることだと思う。半年後に必要になったとき、ちゃんとそこにいる。凍結乾燥ってのはそういう技術だ。豆はそうはいかない。 15. 海外の名無しさん インスタントは本当に進化した。今は単一農園の豆を使った高級インスタントまで普通に買える。値段は驚くけど、味も驚く。ここ数年で棚の風景が完全に変わった感じがある。 16. 海外の名無しさん 昔あった「このレストランのコーヒーを、こっそりインスタントにすり替えました。お客様は気づくでしょうか」というCMシリーズを思い出す人が多いと思う。あの企画、今この記事を読むと妙に予言的に見えてくるのが面白い。 17. 海外の名無しさん(>>16への返信) 「いかがですか、お客様」「ええ、実に滑らかで香りもいい」「実はこれ、インスタントにすり替えてありました」——絶賛した直後に種明かしされる客の顔が最高なんだよな。褒めた本人が一番損をする広告というのも、なかなか珍しい。 18. 海外の名無しさん パーコレーターが候補にすら入ってないんだけど。あれで淹れたコーヒーの立場はどうなるんだ。うちの祖父の家は最後までその音で朝が始まっていたぞ。 19. 海外の名無しさん 誰を対象にやったのかが書かれていないのが気になる。おそらくアメリカ国内だろうし、しかも記事を読むかぎり44人だ。コーヒー文化が根づいている国で同じことをやったらどうなるのか、そっちのほうがよほど気になる。 20. 海外の名無しさん(>>19への返信) このスレの構図がまさにそれで、「アメリカ人は舌が鈍いから本物のコーヒーが分からない」という書き込みが山ほど並んでる。コーヒーの知識で気取るだけでは足りず、そこに国の格付けまで持ち込むのが今の流行らしい。他人のこだわりは鼻につくのに、自分のこだわりだけはいい匂いがするんだよな。 21. 海外の名無しさん 偶然だけど、高いワインと安いワインを目隠しで飲み比べたら、味の評価がほとんど同じ——というか高いほうがわずかに低かった、という研究もあったはず。人間の舌は値札を外されると急に自信をなくす。 22. 海外の名無しさん(>>21への返信) それ、安いワインが1本5ポンド未満、高いワインが10〜30ポンドという設定なんだよな。正直に言わせてもらうと、自分が「高いワイン」と聞いて思い浮かべる価格帯とはだいぶ違う。それは高いワインではなく、ちょっといいワインだ。 23. 海外の名無しさん 豆知識をひとつ。インスタントコーヒーは1890年、ニュージーランドのインバーカーギルで発明されたらしい。世界の南の果てみたいな街から、地球中の台所に広がっていったわけだ。歴史のほうも意外と長い。 24. 海外の名無しさん 面白いもので、豆から挽ける全自動マシンを買ってからインスタントが嫌いになったのに、そのマシンが壊れて仕方なくインスタントに戻ったら、気に入る銘柄を見つけてしまった。今はもうマシンに戻る気がない。手入れが面倒すぎるんだ。味の勝負に、たぶん最初から手間が参加している。 まとめ ブラインドテストで77%がインスタントを選んだ——という見出しは間違いではないが、選択肢11種のうち8種がインスタントで、でたらめに選んでも73%になる比率だったとなると、話はかなり違って見えてくる。しかもインスタント側は予選を勝ち抜いた顔ぶれだった。コメント欄が1400件まで伸びたのは、インスタントを持ち上げるためでも叩くためでもなく、この数字の分母を全員で確かめるためだった。それでいて「昔のインスタントとは別物になった」という実感だけは、方法論に厳しい人たちも含めてほぼ共通していたのが印象的だ。日本の台所でも、瓶入りのインスタントに加えて一杯分のドリップバッグ、コンビニのカウンターコーヒー、缶コーヒーと、手軽なコーヒーの選択肢は何重にも積み重なっている。60mlを一口飲んで決める勝負と、毎朝続ける一杯の勝負は、たぶん別物だ。あなたが今日飲んだ一杯は、味で選んだものでしたか。それとも手軽さで選んだものでしたか。 元ソース: 目隠しの飲み比べで、77%の人がドリップコーヒーよりインスタントコーヒーを選んだという The post 「でたらめに選んでも73%はインスタントになる比率だぞ」ドリップが負けたブラインドテストの数字… appeared first on みんな知ってた?【海外の反応】.…