口に入れた瞬間、舌の上で何かが暴れ出す——パチパチはじけるキャンディを初めて食べたときの、あの落ち着かない感じを覚えている人は多いと思う。あれは香料でも仕掛けでもなく、砂糖の中に閉じ込められた二酸化炭素が逃げていく音である。ただ、その「閉じ込める」ときにかかっている圧力が、菓子の話にしてはずいぶん物騒だった。海外の掲示板では、製法そのものよりも「誰がこんなものを思いつくんだ」の一点で盛り上がっていた。 ※注:日本では「ドンパッチ」「パチパチパニック」などの名前で、同じ仕組みの菓子が長く売られてきた。この記事では総称として「パチパチキャンディ」と書く。 今日の知ってた? 💥 パチパチキャンディは、溶かした砂糖に約600psi——大気圧のおよそ41倍、約4.1メガパスカルの圧力で二酸化炭素を吹き込み、加圧したまま冷やして固めて作られる。圧力を抜くと飴は細かく砕け、その破片の中に高圧のガスの泡が閉じ込められたまま残る。口の中で唾液が砂糖を溶かすと泡を囲っていた壁が破れ、ガスが一気に外へ出る。あの「パチパチ」はそのときの音だとされている。 背景:狙っていたのは粉末のコーラだった この菓子は、誰かが「はじける飴を作ろう」と思って作ったものではない。出発点は、水に入れるだけで炭酸飲料になる粉を作る、という研究だったと伝えられている。 手がけたのはアメリカの食品会社ゼネラルフーヅの研究者、ウィリアム・ミッチェル。1950年代半ば、砂糖の結晶の中に二酸化炭素を閉じ込められれば、水に溶かした瞬間にガスが出てそのまま炭酸飲料になるはずだ——という発想で実験を進めた。結果としてできあがったのは、飲み物ではなく、炭酸入りの砂糖の破片だった。ガスの量が飲料として成立するには全然足りず、代わりに口に入れるとパチパチ鳴る妙な固体が残った。 1961年に特許は取得された。ただし、誰もこれを何の商品にすればいいのか思いつかなかった。書類は棚に置かれたまま20年近く眠り、ようやく引っ張り出されて「ポップロックス」の名で発売されたのが1975年である。発見から商品化まで、ほぼ一世代ぶんの時間が空いていることになる。 ちなみにミッチェルという人は、粉末飲料の「タング」やホイップクリーム風の「クールホイップ」、すぐ固まるゼリーの素なども手がけたと紹介される。台所の風景をいくつも変えた研究者が、本命の企画ではこけて、その副産物が世界中の子どもに知られている、という構図になっている。 ※ 開発年・特許年・発売年および開発者の経歴は、報道や企業の公表資料でくり返し語られている一般的な説明にもとづく。細部は資料によって差がある。 もう少し詳しく 41気圧というのがどのくらいか。自動車のタイヤの空気圧はだいたい2気圧強、炭酸飲料のペットボトルの中も、常温ならせいぜい数気圧である。41気圧はそのはるか上で、水圧に置きかえるとおよそ水深400メートルに相当する。しかも相手は冷えた液体ではなく、150度前後まで熱して溶かした砂糖だ。高温と高圧が同時にかかった釜の中で、二酸化炭素がぶくぶくと吹き込まれている——というのが、あの袋の中身ができるまでの光景ということになる。 順番が肝で、「泡立ててから固める」のではない。圧をかけたまま冷やして飴を固め、そのあとで外側の圧力を下げる。すると内側に閉じ込められたガスが膨らもうとして、飴は自分から細かく砕ける。こうしてできた数ミリの粒の内部には、無数の小さな空洞が高圧のまま残っている、と説明されている。袋を開けたときにすでに粉々なのは、砕いてから詰めているのではなく、作る過程でそうなるからだ。 口の中で起きていること。唾液が砂糖を溶かしていくと、泡を囲っていた壁がだんだん薄くなり、耐えきれなくなって破れる。閉じ込められていたガスが飛び出し、その衝撃が音と、舌の上のあの刺激になる。乾いた手のひらに載せているあいだは何も起きないのに、水に落とすと一斉に鳴り出すのも同じ理屈だとされる。溶けるものがそこにあるかどうか、それだけの違いということになる。 「炭酸飲料と一緒に食べると胃が破裂する」は、事実として確認されていない。1970年代の終わりから80年代にかけて、アメリカでこの噂が爆発的に広まった。シリアルのコマーシャルに出ていた男の子が、パチパチキャンディと炭酸飲料を一緒に口にして胃が破裂し、死んでしまった——という筋書きまで付いていた。当のコマーシャルに出演していた子役は死んでおらず、成人後の消息もふつうに知られている。 発売元は否定に相当な力を注いだ。全米の主要紙に全面広告を出し、学校の校長宛てに5万通ともいわれる手紙を送り、開発者のミッチェル本人まで説明に回ったと伝えられる。米食品医薬品局が問い合わせ用の電話窓口を設けた、という話も残っている。一袋に閉じ込められているガスの量は、炭酸飲料一缶に溶けている量よりずっと少ないとされ、噂が語るような事故は報告されていない。 それでも噂の勢いは止まらず、商品は1983年にいったん市場から姿を消している。のちに別の会社の手で復活し、現在も売られている。事実の方は最初から出そろっていたのに、四十年以上たった今でも「あれ、危ないんじゃなかったっけ」と口にする人がいるあたりが、この話のいちばん厄介なところかもしれない。 ※ 上記は当時の報道および企業側の説明として伝えられている内容の紹介であり、個別の体質や持病について何かを保証するものではない。 海外の反応 1. 海外の名無しさん こういうのって誰が最初に見つけるんだ。溶けた砂糖に高圧のガスを吹き込んでみよう、と言い出した人の頭の中を一度のぞいてみたい。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) たぶん戦争中に爆薬か何かを作ってた人だろ。工程の物騒さが完全にそっち側の発想だ。 3. 海外の名無しさん(>>2への返信) 「すみません部長。時間差で顔が溶ける化学兵器の代わりに、やたら楽しいお菓子ができてしまいました」報告書の一行目はきっとそれだ。 4. 海外の名無しさん(>>3への返信) パチパチ? 本来は口の中で顎を砕く予定だったんだが。それがなぜか子どもに大人気の商品になってしまった。 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) 実際「ジョーブレイカー(顎割り)」って名前の、石みたいに硬い飴が普通に店で売られてたんだから、その路線もそんなに遠い話じゃない。名前に偽りはなかった。 6. 海外の名無しさん 失敗した炭酸飲料の話が正解だよ。ゼネラルフーヅのウィリアム・ミッチェルが、水に溶かすだけで炭酸になる粉を作ろうとして、できたのが炭酸入りの砂糖の破片。1961年に特許は取ったものの誰も商品の形を思いつかず、20年近く棚で眠っていた。それを引っ張り出して1975年にポップロックスとして売った。ついでに言うと、同じ人がタングとクールホイップも作ってる。打率がおかしい。 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) ヒットどころか、どれも食卓の風景そのものを変えてるんだよな。加工食品部門に生涯功労賞があるなら、ビル爺さんは文句なしの受賞者だと思う。 8. 海外の名無しさん 粉末でコーラが作れていたら、これは食品史上でも指折りのヒットになっていた。シロップもソーダファウンテンも要らなくなるんだから、世界中の食料品店とレストランが一斉に客になる。それを狙って手に入ったのが、そこそこ売れるお菓子だったわけだ。 9. 海外の名無しさん(>>8への返信) 水に入れるだけで炭酸になる粉って、実現してたら化学というより手品の領域だよな。 10. 海外の名無しさん(>>9への返信) 一応あるにはある。アルカセルツァーがだいたいそれだ。ただ味は良くないし炭酸も弱いし、底に塩っぽい澱が溜まる。しかも食べて安全な材料だけで組んだうえで、人が金を払う味にしないといけない。圧をかけて二酸化炭素を水に押し込むか発酵させるか、その二つの代わりになるものは結局まだ出てきていない。 11. 海外の名無しさん 41気圧って水深400メートルの圧力だぞ。それを砂糖の中に閉じ込めて、袋に詰めて、レジ横で百円ちょっとで売ってるという事実の方が、製法よりよっぽど驚きなんだが。 12. 海外の名無しさん 化学系のYouTuberが製造工程を全部見せてる動画を出してて、あれで初めて「そんな力技でやってたのか」と分かった。空気からアルコールを作ったり、世界一強いエナジードリンクを作ったりしてる人。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) あの動画を見て以来、こぶし大のパチパチキャンディを口に入れてみたいという欲がずっと消えない。しかも自分でもちょっと怖いと思ってるのが、また良いんだよな。 14. 海外の名無しさん(>>13への返信) クルミくらいの塊を上あごに貼りつけて死ぬのが、俺の理想の最期だ。葬式でその話をされたい。 15. 海外の名無しさん(>>12への返信) その人のことは知らなかったけど、これは家で真似していいやつじゃないな。溶けた砂糖と高い圧力って、組み合わせてはいけないものの見本みたいなものだ。 16. 海外の名無しさん 鼻から吸うのだけは本当にやめておけ。高校のとき友達がノリでやらされて、笑い話から全員が真顔になるまで五秒だった。あれは楽しい成分ではない。 17. 海外の名無しさん 例の「炭酸飲料と一緒に食べると胃が破裂する」ってやつ、うちの小学校では全員が信じてた。しかもコマーシャルに出てた男の子が死んだ、という尾ひれまで付いてきて。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) 全部作り話だよ。その子役はちゃんと生きてる。会社の方は主要紙に全面広告を出して、学校の校長宛てに何万通も手紙を送って、開発者本人まで説明に回ったらしい。そこまでやってもなお噂の方が強かったというのが、この件のいちばん怖いところだと思う。 19. 海外の名無しさん(>>18への返信) 一袋に入ってるガスの量は、炭酸飲料一缶に溶けてる量よりずっと少ないらしいしな。破裂を心配するなら、コーラを一気飲みする方がまだ理屈としては通る。 20. 海外の名無しさん 正直に言うとあの食感が苦手だ。味はただの砂糖なのに、口の中だけ別の生き物が入り込んだみたいで落ち着かない。一粒で十分。 21. 海外の名無しさん(>>20への返信) わかる。痛いわけじゃないのに、脳が「これは食べ物として処理していいのか」で毎回一瞬止まるんだよ。子どもが平気で口に流し込めるのが不思議でしょうがない。 22. 海外の名無しさん 偶然の発見といえば、スコッチブライトも研究員が薬品を靴にこぼして、そのままテニスをしに行って帰ってきたら、こぼれた部分だけ汚れていなかった、という話だったはず。 23. 海外の名無しさん(>>22への返信) それスコッチガードの方じゃないか。スコッチブライトは台所で鍋をこするたわしの名前だぞ。話は面白いから細部だけ直しておく。 24. 海外の名無しさん そもそも炭酸水自体が実験の副産物なんだよな。ジョゼフ・プリーストリーが、ビール醸造所の隣に住んでいて、発酵槽から上がってくる気体を水に当ててみたのが始まり。当時はまだ酸素という概念すらなくて、彼は最後まで別の理屈で説明しようとしていた。動機と結果が噛み合ってない発明は、思ったよりずっと多い。 まとめ 舌の上ではじけているのは香料でも仕掛けでもなく、およそ41気圧で押し込まれたまま砂糖の中に取り残された二酸化炭素だった。しかもそれは炭酸飲料の粉を作ろうとして失敗した副産物で、商品になるまで20年近く棚で眠っていた。海外のコメント欄は「誰がこんな工程を思いつくんだ」という驚きから始まり、失敗の経緯を丁寧に解説する人、あの食感がどうしても苦手だと言い出す人、例の胃が破裂する噂を持ち出す人と、話題があちこちに散っていった。噂の方は当時から作り話で、会社が全面広告まで打って否定に回っている。それでも40年以上語り継がれているのを見ると、「小さな爆発を口に入れている」という感覚の方が、事実よりずっと人の記憶に残るのだろうと思う。 元ソース: パチパチはじけるキャンディは、溶かした砂糖に約600psi(大気圧の約41倍)で二酸化炭素を吹き込み、加圧したまま冷やして作られる。固まった飴の中には小さな二酸化炭素の泡が閉じ込められたまま残り、口の中で唾液が砂糖を溶かすと、加圧されたガスが解放されてはじける The post 「溶かした砂糖に、大気圧の41倍で二酸化炭素を押し込む」パチパチキャンディの作り方が力技すぎた appeared first on みんな知ってた?【海外の反応】.…