
どぶ川から「龍」が生まれる社会は嫌いだ【寄稿】=韓国(ハンギョレ) もしも人生で何かひとつだけ変えられる「魔法のカード」が手に入ったとしたら、あなたは何を変えるだろうか。学歴、職場、マンション…。想像はいろいろとできるかもしれないが、現在の大韓民国で最も残忍で現実的な答えは唯一つ。親を変えることだ。この悲劇的な想像は、努力という神話が破綻した私たちの時代の自画像だ。 若者がどれだけ努力しても、どぶ川(貧しく、恵まれていない環境)から運良く名門大学に進学したとしても、有能な親に出会えなければ、ソウルでまともな住まいを手に入れるのは容易ではない。 2024年、韓国銀行はソウルと非ソウル地域のソウル大学進学率の格差のうち、学生の潜在力の差で説明できるのはわずか8%で、92%は居住地域の違いに起因すると発表した。だから韓銀は、各地域の学齢人口の割合に応じて大学の新入生を選抜しようと提案している。非ソウル地域からも「龍」を輩出できるようにしようというのだ。ソウル大学10校設立も趣は異なるが、その意図は韓国銀行の提案と類似しているようにみえる。 もはやどぶ川から龍が出てくることはないと嘆かれる現実にあって、このような代案が説得力を得るのは当然だ。不平等なスタートラインの是正を試みるものだからだ。しかし、もう少し考えてみよう。地域の学齢人口に応じて名門大学に進学すれば、親の社会経済的地位による格差は解消され、不平等も緩和されるのだろうか。どぶ川から龍が生まれさえすれば、労働市場に良い仕事が増え、賃金格差も縮小し、中小企業や非正規労働も良い仕事になるのだろうか。 運良くどぶ川から龍が生まれる社会が実現したとしても、現在のような政治経済構造と穴だらけの福祉国家を放置するなら、労働市場に良質な雇用が増える可能性はほとんどない。地域比例入学制度は教育機会の不平等を多少緩和するかもしれないが、良質な雇用の総数を増やすことはできない。どぶ川から天に昇ったごく少数と、どぶ川にとり残された絶対多数との格差は変わらない。競争が緩和されるわけでもない。 (中略) どぶ川から龍が生まれる社会は良い社会ではない。そのような社会では、ごく一部の人は宝珠を抱いて生まれるし、どぶ川は住むに値する場所ではないからだ。だから、良い社会とはどぶ川から龍が生まれるのを待つ社会ではない。誰も龍になるために一生を終わりなき競争に縛られない社会だ。良い社会とは龍にならなくても済む社会、特権を保証される龍がいなくてもいい社会、そしてどぶ川のない社会だ。 (中略) 「多くの人が私について、どぶ川から龍が生まれたと言うが、これ以上この成功ストーリーが韓国社会の模範となってはならない」。李在明(イ・ジェミョン)大統領の2022年の大統領候補時代の言葉だ。もう「龍」を語るのはやめよう。「どぶ川」のない社会について語ろう。 (引用ここまで) 韓国人が、もし「人生でひとつだけなにかを変えられるカード」を手に入れたとしたら「両親を変えたい」と思うだろう……とするコラム。 まあ、言いたいことは分からないでもないんですが。 実際には「韓国以外の場所で生を受けたい」ってなるんじゃないですかね。 さて、ちょっと面白い話でもしましょうか。 パク・ウォンスン元ソウル市長 ムン・ジェイン元大統領 ノ・ムヒョン元大統領 韓国を代表する左派政治家です。 この3人には大学に関して共通点があります。 それは「ソウル大学を卒業できていない」こと。 そして、3人が3人とも「ソウル大学を潰そう!」って言い出していることです。 ノ・ムヒョンは貧乏で高卒。 ムン・ジェインはソウル大学の受験に失敗して一浪後、他の大学に入学。 パク・ウォンスンはソウル大学に入学できたものの、学生運動に関わったために除籍。 3人が三様でソウル大学に対して「恨」があるのですね。 そして、3人ともに「ソウル大学を廃止しよう」、もしくは「ソウル大学と同じ教育を地方でも受けられるようにしよう」って話をしています。 要するに「ソウル大学を頂点とした教育体制」を壊そうとしていたのですね。 かつて自分が入ることができなかったソウル大学をぶっ壊そうとした、っていうのは穿ち過ぎな見方かな。 どちらにせよ、「そのくらいのインパクトのあることをやらなければこの社会構造は崩せない」って認識があったのは間違いないところです。 この記事がいうところの「ドブ川から龍が生まれるのではなく、ドブ川そのものをなくしたい」ってのもよく理解できるところ。 韓国が世界に冠たる少子化社会であるのは、記事中の「龍」でなければまともな生活ができないからです。 「龍でなくともそれなりに暮らせるようになりたい」ってのは、韓国人の念願でもあるのですが。 「龍と雑魚は区別されるべき」って社会を作り上げてきたのも韓国人なんだよなぁ。 在韓日本大使まで務めたエリートである人物に「韓国人に生まれなくてよかった」(あそこまでの競争を抜け出せる気がしない)まで言わせるほどの競争社会ですからね。 まあ、こうして「ドブ川をなくせ!」と言いつつ、競争社会はそのままってオチでしょうね。 ノ・ムヒョンが「ソウル大学をなくせ」っていってから四半世紀が過ぎようとしているのになにも変わっていない、なんなら競争そのものが激化しているくらいですから。 韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談社現代新書)金敬哲講談社2019-11-13 note.comで楽韓noteを開設しています。中味は楽韓Webを濃厚に仕立てた長編記事。最新の記事は「 「日韓協力は可能なのか」との話題を安保面から見てみる 」となっています。 また、楽韓noteメンバーシップを開いています。月に6〜800円くらいになる有料記事が全部読めて月額500円。だいぶお得になってます。 マガジンから移行していただけるようお願いします。 Twitterで更新情報をお伝えしています。フォローはこちらから→Follow @rakukan_vortex…