
国土交通省が、宅配のルールを見直し、「置き配」を標準サービスにする方向で動き始めた。人手不足や再配達の課題を背景にした制度改革だが、早くも問題点が指摘されている。 これまで当然のように行なわれていた“対面での手渡し”は、今後、追加料金がかかる“オプション扱い”になる可能性もあるという。 背景にあるのは、深刻な宅配ドライバー不足と、高い再配達率だ。国は再配達率を6%以下に抑えることを目標に掲げているが、2024年4月時点では8.4%。年間で約5億個が再配達となっている。このような非効率を減らすために、物流の仕組みを見直す必要に迫られている。 とはいえ、今後、国が進めようとしている“置き配の標準化”についての見解を尋ねると、「現時点での回答は差し控えさせていただきます」との返答だった。 一方で、置き配の実際の運用に関しては、気になるトピックもある。たとえば最近では、「Nintendo Switch2は置き配禁止になっている」と一部メディアで報じられた。これについてヤマト側は、個別の事案へのコメントは控えるとしながらも、置き配を実施できない主なケースとして以下のような判断基準を示した。 ・悪天候によりお荷物の安全が確保できないと判断する場合 ・受け取り場所にお荷物が収まらないと判断する場合 ・受け取り場所への立ち入りができないと判断する場合 ・マンションなど集合住宅の建物管理規程などより、置き配できないと判断する場合 ・受け取り場所をお知らせすることができないと判断する場合 ・建物内受付/管理人預けの場合にお荷物の受け取りを拒まれた場合 ・建物内その他、置き配の実施が適当でないと判断する場合 つまり、置き配はあくまで「選択肢の一つ」であり、今の段階では少なくとも、すべての荷物を自動的に玄関前に置けるわけではない。 「まず、盗難被害(いわゆる“置き配泥棒”)や、荷物へのいたずらなどのリスクが高まります。玄関先に荷物が可視化された状態で放置されると、素人の泥棒でも持ち去ります。不景気の影響もあり、高額な商品だけでなく、水や食料品といった生活必需品も盗まれているのが実情です」(京師氏、以下同) さらに、荷物が放置されていることで「この家は留守かもしれない」と空き巣に目をつけられる危険性もあるという。 京師氏が相談を受けたケースの中には、「配達から数分のうちに盗まれた」「液体をかけられた」といった被害もあったそうだ。配送完了後に荷物が盗まれた場合、配送業者と受取人の間で責任の所在が曖昧になり、トラブルが複雑化する傾向も見られる。 「ニセの配達員を装って侵入を試みた不審者の例もあります。集合住宅では、住民以外が入りやすく、防犯カメラのない物件では証拠が残らないため、被害の立証が困難です。 また『在宅中にインターホンを押さずに置き配されることで、不審者かどうかの判断ができない』といった声もあります。置き配を導入するなら、居住者のライフスタイルに応じた防犯対策と、業者側の意識改革の両立が不可欠です」…