1: muffin ★ /B/Iuvet9 2025-11-23 19:44:50 『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「ビートルズの邦題 (パート2)」について語る。 前回から、ビートルズの曲につけられた邦題を掘り下げてます。 ちなみに前回紹介したのは、昭和の時代感たっぷりの『涙の乗車券』(原題『Ticket to Ride』1965年。イギリス発表年。以下同)や、謎に雑な『こいつ』(原題『This Boy』63年)。あとは、原題は『Youʼre Going To Lose That Girl』(65年)=「君はその娘を失うぞ」という警告なのに、邦題になると『恋のアドバイス』と、なぜか優しくフォローしてあげたりするものも。 ほかにもまだまだ興味深い邦題があります。それでは、ビートルズ日本語文化圏トークの続きを。 まずは、アメリカのロカビリーミュージシャン、カール・パーキンスが56年に発売し、ビートルズが64年にカバーした『Everybodyʼs Trying to Be My Baby』。「みんな俺のものになろうとする」という、モテ自慢ソングっぽい原題なのに、なぜか邦題は『みんないい娘こ』。まるで教育番組か、道徳の時間みたいである。リードボーカルはジョージ・ハリスン。Eテレで『ジョージおにいさんといっしょ』という番組があったら、ジョージが「みんな仲良く、いい娘になろうね!」って言ってそう。 続いては『Think for Yourself』(65年)。直訳すれば「自分の頭で考えろ」だが、邦題はなぜか『嘘つき女』。説教くさいタイトルが、一転してワイドショーの修羅場へと変貌します。「哲学」から「離婚届」にまでジャンプしている。もしかしてこの邦題をつけた人の私情? 「『自分で考えろ』なんて甘い! 世の中、嘘つきばっかり!」という翻訳者の情念が聞こえてきます。ビートルズが恋愛哲学を語る間に、人生の泥を見ていた。なんかいい話に思えてきました。 (中略) ちなみに、ビートルズのオリジナル曲は約200ありますが、日本独自の題(原題をカタカナにしただけ、ではない邦題)は約20曲あるようです。全体の1割以上の曲に、こうした翻訳者たちの魂が宿っているとも言えます。 今は「原題のままでいいじゃん」と言われがちな時代だが、昭和の邦題は翻訳ではなく〝解釈〟だった。英語を訳すというより、「日本人にどう響かせるか」を考え抜いた文化の翻訳。だからこそ、意味のズレすら味になるんですよね。 次回は、「原題のまま日本で発表されたけど、これはオリジナルの邦題が欲しかった!」なビートルズの曲について! パート1…