ベトナム政府が打ち出したガソリンを燃料とする二輪車の首都ハノイへの乗り入れ禁止計画について、日本政府や二輪車メーカーが業界を混乱させ雇用喪失につながるとして見直しを求めたことが文書や関係者の話で分かった。 ファム・ミン・チン首相は7月、ハノイの大気汚染対策として2026年半ばからガソリン二輪車の乗り入れを禁止すると発表。28年から規制区域を拡大する方針。 ベトナムの二輪車市場は、ホンダが8割のシェアを握る。 ハノイの日本大使館は、ベトナム当局に宛てた書簡で、突然の禁止令は二輪車販売店や部品メーカーなど「関連業者の雇用に影響する」恐れがあると指摘。準備期間や段階的な規制実施を含む電動化の「適切なロードマップ(行程表)」を検討するよう求めた。大使館は、書簡をいつ送付したか明らかにしなかった。日本政府関係者は、9月に送られたと述べた。 ホンダ、ヤマハ発動機やスズキなどの外国二輪車メーカーの団体は7月、禁止令はサプライチェーンの企業に「生産一時停止や倒産のリスク」をもたらす可能性があると警告する書簡をベトナム政府に送った。 禁止令は数十万人の労働者に「波及効果」をもたらし、約2000のディーラーと約200の部品メーカーを混乱させる可能性を指摘。電動化に向けた充電インフラの整備や安全基準の策定を進める間に、メーカーが生産ラインを調整できるよう、最低2─3年の移行期間を設けるよう求めた。 協議に詳しい複数の関係者によると、ベトナム政府はこれまでのところ、日本政府やメーカーの要請に応じていないという。 ホンダのベトナムでの8月の販売台数は、禁止令がだされた7月から約22%減少。8月と9月は前年比で2桁のマイナスだった。 ホンダは、状況を注視しているが、工場を閉鎖する計画はないとしている。ただ同社のある担当者は、非公式にベトナムでの生産縮小を検討する可能性を示唆したという。 電動化の恩恵が予想されるのが国内勢のビンファストだ。同社の電動二輪は第2・四半期の販売が約7万台で前期から55%増加した。…