元スレ 全てのレス 1: ◆TZIp3n.8lc:2017/01/05(木) 19:13:38.30 :hreo+brV0 モバマスのSSです 地の文多めです 講談社文庫 北村薫著『紙魚家崩壊』内の『蝶』を参考にしています 《》で囲われた文は『蝶』からの引用になります 2: ◆TZIp3n.8lc:2017/01/05(木) 19:14:19.60 :hreo+brVo エレベーターから降り、エントランスにある喫茶店へと向かう。夕食の時間を軽く過ぎているとあって、並んだテーブルに座っている客はまばらだ。 その中に目的の相手を見つけ、近づいていく。革のブックカバーのついている文庫を読んでいる彼女は、集中しているのか、すぐそばまで寄っても気づく気配がない。 「悪い、遅くなった」 そう言うと、ようやく鷺沢文香が文庫から顔を上げた。 こちらを見上げたものの、長い前髪が彼女の目を隠してしまっている。細い指先で前髪をすっと避けると、文香はようやくおれを認識したようだった。 「プロデューサーさん」 栞を挟み、文香は文庫を閉じる。机には空になったティーカップが置かれていた。 脚本家との意見交換は、やはり思った以上に時間がかかっていたらしい。…