1 名前:煮卵 ★:2026/08/24(月) 11:29:09.28 ID:NMGyw+Ex9.net 高市早苗首相の「存立危機事態」発言をきっかけに、日中関係は緊張を増した。発言の内容そのものに誤りがなくても、外交では「正しいことを言う」だけでは十分ではない。 かつて「対中強硬派」と見られながら、中国との関係を管理した安倍晋三元首相との違いから、元駐中国大使の垂秀夫氏が、対中外交に求められる「戦略」の重要性を説く。 (略) ● 安倍氏の対中外交にあった 「戦略の逆算」とは何か 安倍氏の対中マネジメントには、明確な「戦略の逆算」があった。 つまり、中国が安倍氏に対して抱いていた「保守・対中強硬派」「日米同盟を軸に中国を封じ込める指導者」という警戒イメージを、あえて正面から否定せず、その緊張を管理可能な水準に保ったまま、関係改善のカードを限定的かつ計算された形で切っていく外交であった。 対中関係を過度に緊張させれば中国は対日包囲を強め、逆に過度に融和に傾けば日本の戦略的自由度が失われるという現実を踏まえ、安倍氏は「警戒されているからこそ、対話の窓を自らの手で管理する」という“逆張り”とも言える発想で、中国を自らの戦略構想の射程内に引き留めようとしたのである。 つまり、対中関係を自身の大戦略――のちのFOIP(自由で開かれたインド太平洋)構想やQUAD(日米豪印戦略対話)へとつながる構想――を実現するための基盤として位置づけ、必要以上に日中対立を先鋭化させないよう、関係を冷静に管理していくことを考えていた。 一方、政権発足時の高市首相の対中対応は、長期的な外交シナリオに基づく設計は必ずしも十分に考慮されているとは思えなかった。 韓国APECでの首脳会談の実現そのものが目的化しているように見える一方で、その先に日中関係をどこへ導くのかというロード・マップが曖昧なまま、最初の危機を迎えてしまったのである。 もし対中関係をまず管理し、その上で長期戦略を展開する構想があったのであれば、国会答弁のタイミングや表現には、より慎重な配慮が必要であったはずである。 逆に、当初から対中対峙を軸に据えるのであれば、靖国神社参拝を封印する必要もなかった。 いずれにせよ、外交の方向性と個々の行動の間に、一貫した戦略的整合性が見えにくいことが問題なのである。 (略) ● 強い言葉を発するだけでは 外交の主導権は握れない 結局のところ、高市政権の課題は、「中国をどう扱うか」という対中戦略を深く考慮していなかったことに尽きる。支持率の高さや世論の追い風がある局面ほど、戦略なきまま放たれた何気ない発言や強い言葉が先行しやすく、陥穽に嵌まる危険はむしろ高まる。 すなわち、日本が自らの戦略を明確に持たないまま、その場しのぎの局面対応を繰り返すとき、外交の主導権は相手に移り、結果として事態は日本の意図しない方向へ動いていく。 高市首相の存立危機事態に関する発言に対し、中国はその撤回を求めるとともに、国際社会において「日本は戦後秩序を破壊している」「日本では軍国主義が復活している」との情報戦を展開している。 米国に対しても、高市首相の発言後、習近平主席自らがトランプ大統領との電話会談において、日本の動きを問題視する認識を伝えるなど、一種の認知戦とも言える働きかけを行っている。 同時に中国は、国家を挙げた経済的威圧を段階的に強めてきた。文化交流や人的往来の停止・延期といった措置が相次ぎ、水産物の輸入停止に象徴されるように、中国は国内法の恣意的解釈と政治判断を組み合わせ、経済を外交の道具として用いている。 さらにレアアース輸出の制限やデュアルユース関連リストの発表など、経済安全保障を直接外交圧力に転化させる措置も講じられてきた。加えて、中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射など、軍事的威圧行動も見られるようになった。 こうした一連の対応は、中国共産党が指導する国家がどのような性格を持つのかを、日本社会が改めて冷静に見極める契機ともなっている。このような状況の下では、従来のように「戦略的互恵関係」という言葉を掲げて日中関係を再構築することは、もはや容易ではない。 いま日本に求められているのは、相手の時間軸に振り回される外交から脱却し、日本自身の時間軸に基づく対中戦略を再構築することである。 戦略とは、強い言葉を発することでも、安易に関係改善を唱えることでもない。何を目指し、何を避け、どの順序で行動するのかをあらかじめ定め、その設計に沿って外交を運用していくことである。 (垂 秀夫) 全文は↓ [DAIAMONDO online] 2026/8/21(金) 17:30 引用元:…