全国の警察官の採用を巡り、30以上の都道府県警で、予定数の8割半ばまでしか採用できていないことが28日、警察当局への取材で分かった。予定数を上回る内定を出しているが、辞退率が3割前後と高止まりしていることなどが背景にあるとみられる。 警察官のなり手不足は深刻で、ある警察本部の担当者は「志望者が減ってしまうと治安の維持にも影響してくる」と危機感をあらわにしている。 時事通信は警察庁への取材に基づき、2021~23年度に都道府県警が実施した高卒・大卒対象の採用試験について、採用予定数や内定者数、採用者数などを独自に集計した。 集計によると、全国の受験者は21年度の約6万2900人に対し、23年度は約4万8300人と2割以上減少した。同年度の採用予定者計約8200人に対し、警察当局は約1万1000人に内定を出したが、3割が辞退。実際に採用できたのは約7300人にとどまった。 採用者数が予定者数を下回る「定員割れ」となった警察本部は、21年度と22年度は32、23年度は31だった。平均で予定者数の約15%が足りない状態で、30%超の警察本部もあった。 警視庁や大阪府警などの大規模警察では、辞退率が3年間の平均で4割程度と高い水準で推移。北海道警は23年度に5割を超えた。 警視庁の担当者によると、受験者は合格しても、併願する出身地の警察や消防、自治体などへの就職を選ぶ人が多い。特にコロナ禍以降は、地元志向が顕著といい、「試験の時期が早いため、『お試し受験』の人も多いのでは」と分析する。 地方の警察本部は、都市部と比べ辞退率は低い傾向にあるが、人材獲得の厳しさは変わらない。中国地方のある県警の担当者は「県庁や市役所、消防との間で奪い合いとなり内定を辞退されてしまう」と嘆く。 採用枠が大きく変わらないのに、受験者は減少しているため、合格倍率は総じて低下している。23年度は全国平均の約4.4倍に対し、主に東北や中部、中国地方の10以上の警察は2倍台にとどまった。 警察庁の楠芳伸長官は5月、採用担当幹部を集めた全国会議で「情勢は極めて厳しい。あまりアプローチしてこなかった中高生にも情報発信し、採用活動の抜本的強化を図られたい」とハッパを掛けた。ある幹部は「警察はつらくて厳しいというイメージが定着しているが、『温かみもある』と訴えていかなければ」と気を引き締めている。…