1 名前:仮面ウニダー ★ 2025/05/12(月) 13:12:23.01 ID:d2II9Z0j.net ■自国第一主義はEUも同じ 米トランプ政権は「相互関税」の名の下で一方的な追加関税を世界各国に課そうとしたが、投資家が国債・株式・通貨の「トリプル安」という強烈な冷や水を浴びせたことで、トーンを引き下げている。一方で、わが国もさることながら、米トランプ政権が殊更に敵視する中国や欧州連合(EU)も、米国に対して自由貿易体制の堅持を訴える。 とはいえ、EUが本当に自由貿易体制の旗手であるかというと、果たしてそれは疑わしい。経済力で米国と中国に劣るEUは、グローバルに政治力を行使するため、規制の輸出にまい進してきた。電気自動車(EV)シフトがその端的な事例となるが、一方で域内のEV市場が中国製EVの脅威に晒されると、一転し追加関税を課す始末である。 こうしたEUの態度は、典型的な「ムービング・ゴールポスト」である。自らに有利なようにグローバルなルールを定めようとし、それが自らに不利となった場合に、その修正を試みる。確かにEUはトランプ政権下の米国よりは自由貿易体制を重視しているが、だからといって保護主義でないかといえば、中国への対応は保護主義そのものだ。 それに、日系メーカーが圧倒的なシェアを持つ炭素繊維について、EUがその利用を禁止することを検討していることも保護主義の動きと見做されて仕方がない事例だ。EUは現在、廃棄車のリサイクルを規定する「ELV指令」の改正を目指しているが、立法府である欧州議会は、4月上旬に示した改正案で、炭素繊維を有害物質に指定した。 自動車に用いられる炭素繊維は、日系メーカーが世界で5割以上のシェアを持つとされる。自動車向けに用いる炭素繊維は用途全体の一割程度であるようだが、近年ではEVを軽量化するために炭素繊維を利用するケースが増えている。 結局のところ、EUが炭素繊維に強みを持つ日系メーカーを潰しにかかっているという疑念が湧いてくる。 ーここから中略ー ■インドに接近する思惑 ■自らの都合でルールを変えてきた ■EUを「自由貿易の旗手」とは言えない そもそも自由貿易体制は、戦間期のブロック経済の取り組みが第二次世界大戦を招いたことへの反省から、米国が主導して作り上げたものだ。その米国もまた、世界の自由貿易体制に組み込まれている。トランプ大統領の問題は、その仕組みを理解しないまま一方的な見直しを図っている点にある。ゆえに大統領の思惑通りには事が進まない。 自由貿易体制を維持することは、日本のみならず世界経済にとっての最優先事項だ。その意味で、日本は中国やEUを含めた諸外国と協力する必要があるが、一方で各国にはそれぞれ思惑があることも事実である。中国が自由貿易体制を重視する最大の理由は、過剰生産能力を抱えていることにある。その解消のためには輸出が欠かせないからだ。 EUはEUで、貿易にその価値観を反映させる傾向が強い。一般的には貿易障害だと考えられることも、自らが普遍的だと定める価値観に基づき、それを正当化する。EVシフトしかり、今般議論されている炭素繊維の取り扱いなどが、そうしたEUの姿勢を端的に物語っている。 EUが自由貿易の旗手であるという評価は必ずしも当たらない。 確かに米国への対応で日本を含めた世界各国が連帯する可能性も意識されるが、同時に各国の利益誘導に向けた動きも加速するのではないか。外需産業に支えられている日本としては、そうした各国の思惑が先行する中で不利益を被ることがないように、米国のみならずEUや中国に対しても粘り強い働きかけが求められるところである。…