転載元: それでも動く名無し 2025/12/04(木) 12:11:11.42 ID:Fm9y4wHI0 電話をかけると、開口一番、こんなことを口にするようになった。 「耳が遠くて、よく聞こえない。ワーッとしゃべられても、何を言っているのかはまったくわからない。だから大きな声で、ゆっくりと丁寧にしゃべってくれますか」 それまでは携帯電話でのやり取りが主だったけれど、電波の問題なのか、「よく聞こえないから、自宅の電話にかけ直してほしい」と、固定電話での通話を求められるようになった。 妻を亡くした広岡達朗の“異変” 続いての「異変」は、急激に足腰が弱くなったことだった。 「足が悪いので、外に出ていくことができない。だから、一日中テレビを見て、本を読んで生活していますよ」 そんな言葉をよく聞くようになった。 その後、広岡は妻を亡くした。 長年連れ添った愛妻に先立たれてしまったことによって、精神的な張りを失ってしまったことも影響しているのだろうか、この頃から、会話がほとんど噛み合わなくなっていく。例えば1時間の取材の場合、40分程度は質問とは関係のない内容が語られることが多くなった。まさに広岡の独演会である。しかも、そのエピソードは、以前に聞いたことがあるものばかりだった。 耳が遠いため、何度も同じ質問を大声でしなければならないこと。 同じ話を何度も聞かされること。 こちらが知りたいこととは無関係なやり取りが延々と続くこと。 いつの間にか、広岡への取材は多大な忍耐力を要求されるものとなっていた。関根と同様、広岡もまた「時間ならいくらでもあるから、いつでも電話をかけておいで」と言ってくれていたので、いつでも連絡をすることはできた。けれども、「また今日も、同じ話を延々と聞くことになるのか……」と考えると、電話をかけることにためらいを覚えるようになった。…