
1: 名無しのがるび 2025/11/20(木) 23:07:53.05 ID:OrY/KnGC9 デイリー新潮編集部 視聴率好調「ばけばけ」、滅多に他人のドラマを誉めない「テレビマン」の間でも評判が高い理由 プロも讃える理由 「ばけばけ」は滅多に他人のドラマを誉めないテレビマンの間でも評判高い。その理由は主に斬新な演出、カメラワーク、照明だ。たとえば第36回はトキのヘブン邸での初仕事だった。トキが邸宅の木戸をくぐるとき、カメラは横顔のアップを撮り、次に後ろ頭のアップを押さえた。 トキの正面の顔はなかった。こういうとき、トキの表情をアップで映し、初仕事前の緊張や熱意を表情で視聴者に伝えるのが定番だが、この朝ドラはそんな凡百の撮り方は捨てている。 また、カメラの中に複数の人物がいるとき、特に理由がない限り、並ばせない。花田旅館の内部のシーンを観ると、よく分かる。主人の花田平太(生瀬勝久)、女将のツル(池谷のぶえ)、使用人のウメ(野内まる)の立ち位置にはまとまりがない。 カメラと照明の都合を考えると、人物は並んでいるほうがいい。けれど、それでは現実から離れてしまう。 チーフ演出の村橋直樹氏(46)は制作会社で報道系の番組をつくったあと、2010年にNHKに途中入社した。 その後、俳優の動き方から映像の色まで違って見えた「透明なゆりかご」(2018年)で文化庁芸術祭大賞を受賞する。腕利きなのだ。 テレビマンたちが特に唸っているのが照明。建物はセットだから、通常は昼も夜も光は均一になる。室内のどの場所も基本的に明るさは同じ。ところが、この朝ドラは昼も夜も室内の位置によって明るさが違う。だから陰影もある。昼は自然光に近い。 昼の屋内は窓や戸に近い方が明るい。建物の内側に入ると、徐々に暗くなる。夜の屋内はろうそくからの距離によって、明るさが変わる。光に関する不自然さがほとんどない。 制作者はかなり面倒くさい作業を余儀なくされるが、怪談対策でもあるのだろう。トキがヘブンの前で怪談を語るとき、照明は極めて重要となる。 毎回のお楽しみは脚本・ふじきみつ彦氏(51)のギャグ。早稲田大学在学中からNSC(吉本総合芸能学院)でお笑いを学び、のちに大物劇作家・別役実氏に師事したから、レベルが高い。 大ネタには共通点がある。勘違いを巧みに利用している。トキの父親・松野司之介(岡部たかし)が第9回、トキの2回目の見合いを前にマゲを落とした。1回目がマゲのせいで破談になったためだ。武士を引きずっていると思われた。 司之介の姿はまるで落ち武者。笑えた。ところが、マゲを落とす必要はなかったのだ。相手の山根家も武士の心を忘れず、マゲを残していた。司之介の勘違いだった。トキは山根銀二郎(寛一郎)との結婚が決まる。 トキは第17回、東京・本郷の下宿屋にいた。松野家の借金に嫌気が差し、出ていった銀二郎を連れ戻すためだ。トキは銀二郎の部屋の前に座り込み、戸板越しに呼び掛けた。 「突然すみません。来てしまいまして」。しおらしかった。だが、戸は開かない。返事すらない。トキは再度、声を上げる。「お会いさせていただけませんでしょうか?」。やっぱり無反応。トキは逆ギレする。「お返事だけでもいただけませんでしょうかね!」。 やっと戸は開くが、中から出てきたのは初対面の錦織友一(吉沢亮)。トキは「ひゃーっ!」と驚声を上げる。笑えた。これも勘違いだった。 放送から間もない第36回、トキはヘブンから「ビア」がほしいと言われたものの、何のことやら。困った末、語感が似ていると思った琵琶、ゴマ、駒、カマなどを用意する。幼なじみのサワ(円井わん)まで連れてきた。全部ハズレ。これも勘違いだった。 勘違いは誰にでもあるから、親しみやすい。多くの人の笑いが望める。ふじき氏の笑いには人を蔑んだり、誰かを傷つけたりするものがないことで知られる。今後も期待できそう。 高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ) 放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。 (全文はソースでご確認下さい)…