502: 可愛い奥様@ 2017/06/04(日) 23:47:24.03 ID:LmBiUWBq0 自分がまだ小さかった頃、両親に連れられて親戚宅にお邪魔したことがあった。 大人同士が客間で話している間、私は縁側で、その家の飼い犬に相手をしてもらっていた。 そっとなでて、話を聞いてもらって、雑草で編んだ花環をプレゼントして。犬もリラックスしてくれたのか、私にカフッと牙を当ててきた。 今思えばあれは親愛の甘噛みだった。そっと触れるための「手」をもたない生き物が、最大限の注意をもって、まだものの道理もわからない人間の幼児にしたこと。 だが幼児の私は「犬の牙が当たった」時点で恐怖で泣き叫んだ。思えば、出血どころか牙痕のひとつもなかった。 その犬はそのゴタゴタのせいで、飼い主が手放した・・・と、親に聞かされた。 長じて社会人になり、「手放した」の意味するところに思い至った。よくて放逐、最悪は保健所。 あの優しい犬は、私の誤解とパニックを契機に生きる場を追われ、最悪は命を奪われたのだ。 「悪いのは私を連れてった親だし。些細な理由で手放した飼い主だし」と思いながら、何かが澱んでいた。 その矢先、退勤途中に弱った子犬を見つけた。見捨てられず、連れて帰った。 帰った先は勤め先借り上げのペット不可物件で、子犬がいることは程なく発覚して退去となった。 しかし無問題。なぜなら私は命を奪われたわけでなない。家探しに奔走の末、割高ながらペット可物件もみつかった。 楽勝楽勝と思いながらも、駅遠割高家賃にブーたれながらも、守った子犬=今は立派な成犬と暮らしている。 この犬で生活が激変したことは、因果応報であり、贖罪であったのだと思う。…