
2025年6月、日本証券業協会の指針により、楽天証券やSBI証券など主要証券会社で二段階認証(多要素認証)が全面必須化された。背景には、フィッシングやマルウェアによる不正アクセス被害の急増がある。2025年上半期だけで、不正アクセス件数は1万2758件、被害総額は5700億円超と過去最悪を記録。著名投資家テスタ氏の口座乗っ取り事件(2025年5月)も話題となり、セキュリティ強化は待ったなしの状況だ。しかし、この二段階認証がユーザーにとって一つの壁となっている。認証コードのメール受信に1~2分かかったり、楽天証券の絵文字認証(10種+数字5種から4種選択)が煩雑だったりで、ログインの手間が増えたとの声が上がる。Xでは、投資家@cissan_9984さんが「ログインの認証中に株価が上がって出遅れまくり」と不満をポスト(2025年8月15日)。こうした手間から、証券アプリへのログイン頻度を減らす投資家も出てきているようだ。具体的なデータはないものの、セキュリティ強化と引き換えに利便性が低下したと感じるユーザーは少なくない。一部では、認証アプリやFIDO認証を採用するSBI証券などへ乗り換える動きも見られる。では、この「ログイン離れ」は投資家にとって本当にマイナスなのか? 特に、長期保有を基本とするインデックス投資家にとっては、意外なメリットがあるかもしれない。 インデックス投資の鉄則「放置」とログイン減少の相性インデックス投資は、S&P500や日経平均に連動するインデックスファンドを長期間保有し、市場の成長に賭ける戦略だ。歴史的に、S&P500の年平均リターンは7~10%と安定しており、短期の市場変動を気にせず「放置」することで、複利効果を最大化できる。これが、インデックス投資の鉄則として「ほったらかし」が推奨される理由だ。では、二段階認証によるログイン頻度の減少は、インデックス投資家にどう影響するのか? 実は、以下のようなメリットが考えられる。 1. 過剰な取引を防ぐ毎日アプリをチェックしていると、株価の上下に一喜一憂し、衝動的な売買に走りがちだ。実際、頻繁な取引は手数料や税金を増やし、リターンを圧迫する。ログインが面倒になれば、こうした「いじりすぎ」を防ぎ、長期保有の原則を守りやすくなる。 2. 心理的ストレスの軽減市場の短期変動は、投資家のメンタルを揺さぶる。ログイン頻度が減れば、値動きに振り回されるストレスが減り、冷静な投資判断を維持できる。「見ないことで心の平穏が保てる」と語るインデックス投資家も多い。 3. 時間の有効活用投資に割く時間が減れば、仕事や趣味、自己投資に時間を充てられる。インデックス投資は「時間を味方につける」戦略。アプリに張り付く必要がないのは、むしろ理想的だ。 放置しすぎの落とし穴とバランスの取り方~(略)~…