[ 1 ] ベビーカー蹴飛ばし「黙れ」 子どもを敵視する大人たち 見ず知らずの他人に「邪魔だ」とベビーカーを蹴られ、つばを吐かれた――。毎日新聞が全国の子どもの保護者を対象にアンケートを実施したところ、回答者の6%が外出先で子どもに危害を加えられたり、加えられそうになったりした経験があると答えた。また、子どもの声が「うるさい」と言われたことがある人は2割に上った。大人が無邪気な子どもを「敵視」する背景に何があるのか。 ハトを追いかけて蹴飛ばされそうに 「ベビーカーを押しているやつはむかつくよなあ。抱っこしろよ」。横浜市の30代女性は2019年4月、横浜中華街で当時1歳だった長男(5)を乗せたベビーカーを押していた際、すれ違った大柄の男性にそう吐き捨てるように言われた。 その半年後にはほとんど人がいない同市内の私鉄の駅前広場で、ハトを追いかけていた長男が、無言で歩み寄ってきた中年男性に蹴飛ばされそうになった。急いで手を引いて事なきを得たが、女性は「日本はすさんでいる。理不尽な目に遭うことが多く、子育てがしづらい」とため息をつく。 子育てに関する価値観を一方的に押しつけられ、怖い思いをしたこともある。女性が夫と次男(2)を含む家族4人で21年9月に同市内のスーパーに出掛けた時のことだ。長男が店内で走り出し、夫が追いかけた瞬間、「なんでお前が行かないんだ」と背後から怒声を浴びた。振り返ると、80代くらいの男性がこちらをにらみつけていた。 隣にいた妻とおぼしき人物は笑みを浮かべながらこう言い放った。「私は子育てを全部一人でやった。主人に手伝ってもらうことなんてなかったわ」 女性は「嫌がらせをしてストレス発散をしているのだと思う。子どもやママたちは弱い立場だからターゲットにしやすいのでは」と悔しさをにじませる。 子どもを敵視する大人「増えている」4割 子どもを敵視する大人は実際に増えているのだろうか。その点もアンケートで聞いてみたところ、40.7%の人が「増えている印象がある」と答えた。 考えられる理由として、「新型コロナウイルス禍などさまざまな理由でストレスを抱え、子どもに寛容になれない人が増えている」「国民生活が苦しくなってきたことで疲弊し、弱者へのいじめや八つ当たりにつながっている」「近所付き合いなどが減り、子どもと接する機会が減った」などの声が上がった。…