[ 1 ] クレームに違和感 注意そらす特殊詐欺 機転利かせたコンビニ店員 パンの袋に穴が開いていて、虫が入っていた。息子がおなかを壊した――。 4月1日正午ごろ。昼食の買い物客らでにぎわう「ファミリーマート茨木鮎川五丁目店」(大阪府茨木市)に、男性の声で1本の電話がかかってきた。 対応したパート従業員の長戸愛咲(あさき)さん(26)は「異物混入」と言われ、ドキリとした。 男性はさらに続けた。 「警察に通報した。パンの入荷時間を調べてほしい」 長戸さんは折り返すから連絡先を教えてほしいと頼んだが、男性は電話番号を教えてくれなかった。 10分後に電話が鳴った。相手は同じ男性で、会話が途切れそうになると「エコバッグに店員が商品を入れるのは正しいのか」 「学生がバイトに入る時間帯はいつか」など関係なさそうな話を続けてきた。 次第に何の電話か分からなくなった。 違和感を覚えた長戸さんは電話を切り、店のオーナーに相談。 オーナーが本部に確認すると、でたらめなクレーム電話で店員の注意をそらしている間に、 高齢者に電話で指示して店の現金自動受払機(ATM)で金を振り込ませる特殊詐欺の手口が横行していることが分かった。 「もしかして本当に高齢者が店に来ているのかも」。3度目の電話は別の店員に任せ、長戸さんは店内を確認した。 ちょうど80代の夫婦が来店し、妻は携帯電話を耳に当てながらATMを操作し始めたところだった。 「おばあちゃん、詐欺や!」。 説得を試みたが、妻は「大丈夫やからほっといて」と話を聞いてくれない。 「店員が詐欺だと言っているけど違いますよね?」と電話の相手に確認し、操作を続けようとする。 長戸さんは110番通報し、警察官が来るまでの間、相手からの指示を妻が聞いてしまわないように 「あかん、あかん」と妻の隣で大きな声を出して操作するのを防いだ。 夫婦は市役所職員を名乗る相手から「高額医療費の還付金がある」と電話でだまされ、この店のATMを使うよう指示されて来たという。…