教習所で「ハンドルは10時10分」と教わった人は多いはずです。ところが海外の掲示板で、その握り方だとエアバッグが開く事故のとき、跳ね返された自分の手で顔を強打するおそれがある、と伝える2012年のカナダの報道が話題になりました。米国の道路交通安全局(NHTSA)の資料も、「2時と10時」は勧めないと書いています。日本ではどう説明されているのかも、あわせて調べました。 ※注:英語圏でいう「10時と2時」は、日本でいう「10時10分」と同じ位置です。「9時と3時」は「9時15分」にあたります。この記事は握り方を指導するものではなく、各機関の説明と海外の反応を紹介するものです。ハンドルの形やエアバッグの位置は車によって違うので、ご自分の車については取扱説明書や教習所の指導を確かめてください。 今日の知ってた? 🚗 話題の元は、カナダのテレビ局CTVブリティッシュコロンビアによる2012年8月の報道。ブリティッシュコロンビア州の公営自動車保険会社ICBCの運転指導員の説明として、「手がハンドルの上のほうにあると、エアバッグが開いたときに跳ね返され、自分の顔を殴ることになる」と伝えた 📄 米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が公開している資料は、「2時と10時は勧めない」と明記している。理由は「小さめのハンドルとエアバッグを備えた車では、危険になりうるから」 ⏱️ NHTSAの解説によると、エアバッグがふくらむのにかかる時間は20分の1秒未満 🔧 「10時と2時」が勧められてきたのは、パワーステアリングが無かった時代に、高い位置から引き下ろすほうがハンドルを回し始めやすかったから、と米国自動車協会(AAA)は説明している 🗾 日本でも、JAFの会員向けメディアが「9時3時(9時15分)が基本」と紹介している。ただし、JAF会員約6万人へのアンケートでは「両手10時2時」が46.2%でいちばん多かった 背景:「10時と2時」とは ハンドルを時計の文字盤に見立てて、左手を10時、右手を2時の位置に置く握り方です。日本の教習所でいう「10時10分」にあたります。米国でも長いあいだ、運転を習うときの定番でした。2012年3月の米NBCニュースは、何十年ものあいだ、ハンドルは10時と2時で握るよう教えられてきた、と書いています。 なぜこの位置だったのか。米国のファクトチェックサイト「スノープス(Snopes)」が2014年の記事で紹介しているAAAの説明によると、昔の車にはパワーステアリング(ハンドルを軽い力で回せるようにする装置)が無く、高い位置から引き下ろすほうがハンドルを回し始めやすかったためです。パワーステアリングが行き渡って、この考え方は変わった、とAAAは説明しています。日本でも同じ説明がよくされます。自動車メディアのベストカーWebは2024年の記事で、「パワーステアリングの無かった時代は、いちばん力を入れやすい10時10分がよかった」という話が多い、と紹介しています(筆者はパワーステアリングの無い軽トラックで試し、この説明に疑問も示しています)。 そこに加わったのがエアバッグです。NHTSAがサイトで公開している資料「効率のよいハンドル操作の技術」(Using Efficient Steering Techniques)は、ハンドルの大きさや切れ方、回すのに要る力が大きく変わり、握る位置についての勧めは「より柔軟になった」と述べています。そのうえで、「2時と10時は勧めない。小さめのハンドルとエアバッグを備えた車では、危険になりうるからだ」と書いています。片手を離して別の操作をするときも、もう一方の手は「通常の運転位置である8〜9時、または3〜4時」(ハンドルの設計による)に置いておくように、という説明です。 2012年のNBCニュースは、AAAやNHTSA、多くの運転指導員が「9時と3時」を勧めるようになった、と伝えました。エアバッグをできるだけ避けるために、もっと下の「8時と4時」を勧める人もいるものの、公表されている研究を見るかぎり、車を操る力が落ちるかもしれない、とも書いています。 もう少し詳しく 元の報道は何と言っているのか。スレッドのタイトルの元になったCTVの報道に出てくるのは、ICBCの運転指導員ジェリー・ボール(Jerry Boal)さんと、カリフォルニアの自動車クラブの担当者の2人です。報道はボールさんの説明として、衝突のときに手がハンドルの上のほうにあると、エアバッグが出てくる勢いで跳ね返され、ドライバーは高速で自分の顔を殴ることになる、と伝えています。ボールさん本人の言葉として引かれているのは、「手が正しい位置に無ければ、大けがをしかねない」です。報道は、AAAとNHTSAが、エアバッグの力による鼻や指、腕の骨折、さらには切断の例まで報告している、とも書いています。国境の両側(カナダと米国)の警察機関が、手をハンドルの上のほうから離して、「9時と3時」か、さらに低い「8時と4時」で握るよう勧めている、という内容でした。 知らなかった人は多かった。同じ報道が紹介している世論調査(アンガス・リード社)では、ブリティッシュコロンビア州のドライバーの10%が「いつも」10時と2時で握っていると答え、50%が「ときどき」そうしていると答えました。「9時と3時で握ると、エアバッグが開いたときのけがのリスクを抑えられる」ことを知らなかった人は、63%にのぼったそうです。 「命に関わる」という言い方について。掲示板のスレッドのタイトルは、「命を落としかねない」という強い表現でした。これは、CTVの報道の地の文をそのまま引いたものです。ただ、報道の中で指導員本人が口にしているのは「大けがをしかねない」で、具体例として挙がっているのも、骨折などのけがです。NBCニュースの記事も、NHTSAが報告しているけがとして指や手の切断と骨折を、AAAの説明として、手が頭にたたきつけられて鼻の骨折や脳しんとうが起きうることを挙げていますが、亡くなった例には触れていません。コメント欄にも、「出てくる専門家は2人だけ」「研究がひとつも引かれていない」と疑う声が並びました。 エアバッグはどのくらいの速さで開くのか。NHTSAの解説によると、エアバッグは中程度から激しい衝突のときに作動し、「まばたきをする間、つまり20分の1秒未満」でふくらみます。展開がとても速いため、開き始めのエアバッグに近すぎたり、じかに触れていたりすると、重いけがや、ときには命に関わるけがが起こりうる、とNHTSAは説明しています。そのためNHTSAは、ハンドル中央のエアバッグのカバーと胸骨のあいだを10インチ(約25センチ)以上あけ、シートベルトを締めるよう勧めています。同じ解説によれば、前面のエアバッグは30年間で5万人を超える命を救ってきました。 ハンドルの回し方にも触れている。先に挙げたNHTSAの資料は、腕を交差させず、左右の手で送るようにハンドルを回す方法を「望ましい方法」としています。理由のひとつに挙げているのが、手がハンドルの上を横切らないので、エアバッグが開いたときに、自分の手や腕で顔などをけがしにくいことです。腕を交差させる回し方は、見通しの悪い交差点を低速で曲がるときや、駐車のときなどに使う方法として説明されています。 日本ではどう説明されているか。警察庁の『交通の方法に関する教則』は、運転姿勢について、シートの背は「ハンドルに両手を掛けたとき、ひじがわずかに曲がる状態に合わせる」ことが大切だと書いています。握る位置を時計の文字盤で示した記述は、2024年11月時点の版には見当たりません。 JAF(日本自動車連盟)の会員向けメディア「JAF Mate Online」は、2024年5月の運転レッスンの記事(講師はモータージャーナリストの菰田潔さん)で、「ハンドルの持ち方は9時3時(9時15分)が基本」と紹介しています。かつて教習所などで「10時10分(10時2時)」と教わった人も多かったようだが、その持ち方ではエアバッグが開いたときに腕をけがするおそれがある、という説明です。 同じJAF Mate Onlineが2023年11月に載せたアンケートでは、回答したJAF会員6万240人のうち、「両手10時2時」が46.2%でいちばん多く、「両手9時3時」が27.5%、「片手で持つ」が12.3%でした。「10時2時」と答えた人の理由で多かったのは、「教習所でそう習ったから」だったそうです。 教習所の教え方も、一様ではないようです。自動車ニュースサイト「くるまのニュース」の2025年1月の記事では、東京都内の教習所の指導員が、昔ほど「10時10分」とは指導していない、と話しています。教えているのは「ハンドルの中心より上の部分を持つこと」で、中心より下を握ると技能試験で減点の対象になる、という説明でした。米国に「8時と4時」まで下げる勧めがあるのとは、事情が違います。握る位置の説明は、国や教習所、車のつくりによって分かれているようです。 海外の反応 1. 海外の名無しさん だから自分はいつも、膝でハンドルを操作してるんだ。これまで何度も事故を起こしてきたけど、自分の顔を殴ったことは一度もないよ。 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) 「何度も事故を起こしてきた」のところで、握る位置より先に見直すものがあると気づいてほしい。 3. 海外の名無しさん(>>1への返信) 自分も10時と2時では握らない派だね。おかげで両手が空くから、運転中のメールも打ち間違いが減って助かってるよ。 ※注:1と3は、わざと危ない運転を並べてみせた皮肉の冗談です。このスレッドでは、こうした書き込みが上位に並びました。走行中にスマートフォンを手に持って通話したり、画面を注視したりすることは、日本では道路交通法で禁じられています。 4. 海外の名無しさん この記事、14年も前のものだし、一人の意見にしか聞こえないな。エアバッグはハンドルの中央から手前へ、外へとふくらむんだから、10時と2時でも9時と3時でも8時と4時でも、当たるのは前腕だろう。自分の顔を殴ることになるとしたら、クラクションを押してるとき、つまり手がエアバッグの真上にあるときじゃないの。この記事が本当なら、エアバッグなんてとっくに外されてるはずだよ。 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) 2012年のその記事に出てくる専門家は、保険会社の運転指導員と自動車クラブの人だけなんだよね。それに記事が挙げてるけがは、自分の手で殴るというより、エアバッグそのものが体に当たって起きるものだよ。 6. 海外の名無しさん(>>4への返信) まさにそれをやったことがある。10代のころ、こっちを見ずに曲がってきた車の横っ腹に突っ込んだんだ。最後の瞬間にクラクションを鳴らそうとしたところでエアバッグが開いて、自分の手で自分の顔を殴り、そのまま気を失ったよ。 ※注:コメント主が自分の体験として書いているものです。 7. 海外の名無しさん エアバッグが理由で9時と3時が勧められるようになって、もうずいぶん経つよ。今さらニュースでもないし、怖がったり怒ったりするような話でもない。 8. 海外の名無しさん(>>7への返信) 変だな。自分はわりと最近、「エアバッグがあるからこそ10時と2時だ」って教わったんだけど。 9. 海外の名無しさん(>>7への返信) 自分は10年以上前の運転教習で、もう9時と3時だと習ったよ。腕を交差させてハンドルを回すのもやめるように、と言われた。 10. 海外の名無しさん 9時と3時が、自分には昔からいちばん楽で自然なんだよね。誰かに教わる前から、気づいたらそこを握ってた。 11. 海外の名無しさん(>>10への返信) 今どきの車なら、たいてい9時と3時のほうがいいよね。少なくともオーストラリアでは、そう教えてるよ。 12. 海外の名無しさん 専門家は9時と3時を勧めるのに、多くのメーカーはその位置に、スイッチだらけの幅の広いスポークを付けるんだよ。あれじゃ指をしっかり回して握れない。事故でぶつけられたあとも避ける操作は要るのに、手が外れやすくなる。設計のほうの欠点だと思う。 ※注:スポークは、ハンドルの輪と中央部分をつなぐ腕の部分のこと。 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) 10時と2時が多かったのは、昔のハンドルがもっとつるっとしていたり、ぐるりと一周、指をかける溝が付いていたりした頃の話だと思う。今は9時と3時に握りやすい形が付いてるから、そこを外して握ると落ち着かないんだ。片手で11時あたりを握ってる人は別だけどね。あれこそ本当に、手のひらで自分の顔を打つことになるよ。 14. 海外の名無しさん 前に配車アプリで呼んだ車の運転手は、2時と4時を握ってた。両手ともハンドルの右側で、左腕は胸の前を横切ってるんだ。あれは驚くべき技術だったね。 15. 海外の名無しさん 10時と2時を握ってて、どうやったらエアバッグが手に当たるの? まさかみんな、右手で10時、左手で2時を握って運転してるわけ? 16. 海外の名無しさん(>>15への返信) 腕を交差させたまま走る流派は初めて聞いたよ。それはそれで、一度うしろの席から見てみたい。 17. 海外の名無しさん 自分は5時と7時を握る派だね。真の紳士というのは、そういうものだよ。 18. 海外の名無しさん(>>17への返信) 正直に言うと、自分は片手で6時。両手でちゃんと握ってたのなんて、教官が隣に座ってた日だけだよ。 19. 海外の名無しさん 自分は手をひざの上に置いたまま、親指1本をハンドルの下に引っかけてるだけ。パワーステアリングさまさまだね。 20. 海外の名無しさん(>>19への返信) 専門家じゃないけど言わせて。エアバッグが開いたときの心配より、そもそも事故を起こしにくい握り方をしておくほうが、ずっと大事だと思うよ。 21. 海外の名無しさん そもそもこのルール、エアバッグより古いんだよね。誰も更新する暇がなかっただけなんじゃないかな。 22. 海外の名無しさん(>>21への返信) 親に運転を教わったとき「10時と2時!」って何度も言われたけど、あの親も、自分の親に同じことを言われただけなんだろうな。 23. 海外の名無しさん どうも信じきれないな。記事は研究をひとつも引いてないし、話を聞いてる相手は自動車クラブだ。事故現場に駆けつける仕事を20年以上やってきたけど、エアバッグのせいで記事にあるようなことが起きた形跡は、一度も見たことがないよ。 24. 海外の名無しさん(>>23への返信) 昔、検証番組の『怪しい伝説』がこれを試してたはず。記憶が正しければ、危なくないっていう結果だったと思う。 ※注:『怪しい伝説』(原題 MythBusters)は、うわさや都市伝説を実験で確かめる米国のテレビ番組。番組の内容をまとめたファンサイトによると、2007年放送の回で確かめたのは「10時と2時で握っていると、エアバッグで親指がもげる」という説で、模型の手を使った実験では、親指に目立った損傷は出なかったそうです。手が顔に当たるかどうかを確かめた実験ではありません。 25. 海外の名無しさん 「なんで自分を殴ってるの? ねえ、なんで自分を殴ってるの?」って、エアバッグに言われるわけだ。 ※注:相手の手をつかんで本人の顔に当てながら「なんで自分を殴ってるの?」とからかう、英語圏の子どものいたずらの決まり文句をもじった冗談です。 まとめ 「10時と2時」の握り方は、エアバッグが開いたときに手や腕が跳ね返されてけがをするおそれがあるとして、米国のNHTSAの資料が「勧めない」と書いている位置でした。日本でも、JAFの会員向けメディアが「9時3時が基本」と紹介する一方、2023年のJAF会員へのアンケートでは「両手10時2時」が最多で、教習所の教え方も一様ではないようです。コメント欄は、とっくに知られた話だという声、記事の根拠を疑う声、片手運転をめぐる冗談に分かれました。握る位置の説明は車のつくりによっても変わるので、気になった人は、自分の車の取扱説明書や教習所の指導を確かめてみてください。 参考:CTVブリティッシュコロンビア「Steering at ’10 and 2′ dangerous say experts」(2012年8月)、NHTSA「Using Efficient Steering Techniques」(ウェブアーカイブの保存版)、NHTSA「Air Bags」、NBCニュース「Get with the times: You’re driving all wrong」(2012年3月)、スノープス「Is 10 and 2 O’Clock the Best Spot to Place Hands on the Steering Wheel?」(2014年4月)、警察庁『交通の方法に関する教則』、JAF Mate Online「菰田潔の運転レッスン」(2024年5月)、JAF Mate Online「JAFMate総研」(2023年11月)、くるまのニュースの記事(2025年1月)、ベストカーWebの記事(2024年1月)、MythBusters Results「Episode 87」 元ソース: 運転の専門家によると、ハンドルを10時と2時の位置で握っていると、エアバッグが開く事故で手が跳ね返され、自分の顔を殴ることになりかねない The post 「2時と10時は勧めない」教習所で習った“10時10分”の握り方に、米国の道路交通安全局がそう書く理由とは? appeared first on みんな知ってた?【海外の反応】.…