プラスチック容器の底に刻まれた、三角形の矢印と数字のマーク。「リサイクルできます」の印だと思っていた人は多いはずだが、実は違うらしい。あれは「樹脂識別コード」といって、どの種類のプラスチックでできているかを示す番号にすぎない。海外の掲示板では「何十年も信じてたのに」という声を皮切りに、じゃあ何のためのマークなのか、プラスチックのリサイクルは実際どこまでうまくいっているのか、という話に広がっていた。 ※注:この話の舞台は主に米国。米国には、びん・缶・紙・プラスチックなどの資源ごみを種類で分けず、ひとつの回収箱にまとめて出す方式の地域があり、どのプラスチックを回収するかも自治体ごとに違う。日本の「プラ」マークやPETボトルのマークは別の制度にもとづく表示なので、後半で触れる。 今日の知ってた? 🔎 プラスチック製品に付いている「三角形の中に1〜7の数字」のマークは、樹脂識別コードと呼ばれるもの。1988年に米国のプラスチック業界団体が導入した。示しているのはプラスチックの種類であって、リサイクルできるかどうかではない。 コードを管理している規格団体ASTMインターナショナルの規格にも、これは「リサイクルコード」ではないと書かれている。もとの図柄はリサイクルのマークによく似た「3本の矢印」の三角形だったが、2013年の規格改定で、矢印のない実線の三角形に改められた。 背景:樹脂識別コードとは コードの番号は1から7まであり、それぞれ次の樹脂を指している。 1:PET(ポリエチレンテレフタレート) 2:HDPE(高密度ポリエチレン) 3:PVC(ポリ塩化ビニル) 4:LDPE(低密度ポリエチレン) 5:PP(ポリプロピレン) 6:PS(ポリスチレン) 7:その他 導入したのは米国プラスチック産業協会(SPI、現在のプラスチック産業協会)。リサイクルに取り組む自治体が増えるなかで、回収したプラスチックを樹脂の種類ごとに見分けやすくするのが目的だったとされている。2008年からは、規格団体のASTMインターナショナルが管理を引き継いでいる。 そのASTMの規格は、このコードを「製品に使われている樹脂を識別するためだけのもの」と位置づけている。樹脂識別コードは「リサイクルコード」ではなく、コードが付いていても、その製品がリサイクルされることや、再生処理の仕組みが整っていることを意味しない。「リサイクル可能」といった環境に関する表示を、コードの近くに置いてはならないという決まりもある。 誤解のもとになったのは図柄だった。当初のマークは、数字を「3本の矢印が追いかけ合う三角形」で囲んだもの。1970年に生まれたリサイクルのシンボルマーク(3本の矢印の輪)とよく似ていたため、多くの消費者が「リサイクルできる印」と受け取った。そこで2013年の改定で、矢印のない実線の正三角形に変更された。 ただし、古い図柄がすぐに消えたわけではない。改定後の規格が適用されるのは新しく作る金型だけで、古い図柄が入った既存の金型は作り直さなくてよいとされた。さらに米国では、少なくとも36の州がこのコードに関する法律を持っていて(2021年時点)、その多くは新しい規格より前に作られたものだ。そのため、矢印の図柄と実線の三角形は今も混在している。 もう少し詳しく 米国の当局はどう見ているか。連邦取引委員会(FTC)が環境に関する広告表示の考え方を示した指針「グリーンガイド」は、このコードを容器の底のような目立たない場所に付けるだけなら、「リサイクルできる」という主張にはあたらないとしている。逆に、商品名のそばのような目立つ場所に置けば、リサイクル可能だと主張しているとみなされる。その場合、販売地域の消費者や自治体の大多数(60%以上)がリサイクル施設を利用できる状況でなければ、但し書きが必要になる。 環境保護庁(EPA)はもっと踏み込んでいる。2023年4月、この指針の見直しにあたってFTCに出した意見書で、矢印のマークと樹脂識別コードの組み合わせは「リサイクルできるかどうかを正確に表していない」と指摘した。とくに3〜7番のプラスチックの多くは、再生した素材の買い手がなく、採算が合わないという。EPAはこの組み合わせを消費者の誤解を招くものだとして、指針の例示を、ASTMが2013年に採用した実線の三角形に合わせて改めるよう求めた。 カリフォルニア州の規制は、裁判で止まっている。カリフォルニア州では2021年10月、州が定めるリサイクル可能の基準を満たさない製品や包装に、矢印のマークを使うことを禁じる州法(SB 343)が成立した。樹脂識別コードも、基準を満たさないかぎり矢印の三角形で囲めなくなる内容で、2026年10月4日から適用されるはずだった。しかし食品や包装の業界団体が、事業者の正当な表示を制限するうえに基準もあいまいで、合衆国憲法に反するとして提訴。2026年7月、連邦地方裁判所が州による執行を一時的に差し止めた。2026年9月末の時点で裁判は続いていて、決着はついていない。 実際にどれくらいリサイクルされているのか。EPAが公表している2018年の統計では、米国でごみとして出たプラスチックのうち、リサイクルされたのは8.7%だった。ただし種類による差が大きく、PETのボトルや容器は29.1%、HDPEの無着色ボトルは29.3%となっている。「プラスチックはまったくリサイクルされていない」わけでも、「マークがあれば大丈夫」なわけでもなく、樹脂の種類と地域の仕組みによって事情がまるで違う。 日本のマークは、制度が別。日本の容器に付いているマークは、資源有効利用促進法にもとづく「識別表示」で、事業者に表示が義務づけられている。飲料・酒類・しょうゆなどのPETボトルには、三角形に「1」と「PET」を組み合わせたマーク(1993年6月から)。それ以外のプラスチック製の容器や包装には「プラ」マーク(2001年4月から)。経済産業省は、識別表示の目的を「消費者の分別排出を容易にし、市町村の分別収集を促進すること」と説明している。つまり日本のマークは、分けて出すための目印という位置づけだ。 PETボトルリサイクル推進協議会によると、PETボトルの「1」は米国のコードから取られたもの。一方、2〜7番の数字が入った三角マークは、日本では法律で定められた識別表示ではなく、材質を示すためのマークで、同協議会は「現在、日本ではあまり使用されていません」としている。プラマークに材質を書き添える場合は、「PP」「PS」のようなアルファベットの略号を使うことが推奨されている(材質の表示そのものは法的な義務ではない)。なお、同協議会の集計では、対象となるPETボトルの2024年度のリサイクル率は85.1%。実際の分け方や出し方は自治体によって違うので、お住まいの自治体のルールを確認してほしい。 海外の反応 1. 海外の名無しさん え、あれって「リサイクルできます」の意味じゃなかったの? じゃあ何のためのマークなんだ。何十年もそう信じて、容器をひっくり返して三角マークを確かめてから分別してきたのに。どう見てもリサイクルのマークだし、わざと紛らわしくしたとしか思えない 2. 海外の名無しさん(>>1への返信) そこが狙いだったんだと思うよ。業界の外にいる普通の人が見ればリサイクルマークと取り違えるような図柄を、わざわざ選んだわけだから ※ 図柄について、業界側は「コードはリサイクル施設がプラスチックを選別しやすくするためのもので、混乱させるつもりはなかった」と説明している。一方、米公共ラジオNPRと公共放送PBSの番組『フロントライン』は2020年の共同調査報道で、石油・プラスチック業界が1989年から40近い州に働きかけ、採算の合うリサイクル方法がないものも含めて、すべてのプラスチック容器にこのマークを付けるよう義務づけさせた、と報じた。 3. 海外の名無しさん(>>1への返信) 本家のリサイクルマークは、1970年に23歳の学生がデザインコンテストに出した作品なんだよね。商標登録されてなくて、誰でも自由に使える。樹脂の番号のほうは2013年に、規格上は矢印なしのただの三角形に変わったそうだけど、うちの台所の容器をひっくり返してみたら、いまだに矢印のやつばかりだった 4. 海外の名無しさん いや、ある意味ではちゃんと目印として役に立ってるよ。マークがあれば何でもリサイクルできるわけじゃないけど、うちの市を含めて、回収できるプラスチックを番号で案内している自治体は多い。うちの場合、回収に出していいのは1番と2番だけ 5. 海外の名無しさん(>>4への返信) 1番と2番は、たいていの回収プログラムが受け入れてる種類だね。1番は飲料のボトル、2番は洗濯洗剤のボトルなんかに使われてるやつ。ただ再生業者からすると、新品の原料がタダ同然の値段で出回っているのが厄介で、それより安く作れないと商売にならないんだ 6. 海外の名無しさん もうひとつ厄介なのが、リサイクルできる種類のプラスチックでも、ひとつの製品の中で別の種類と組み合わされていることが多い点。たとえばボトルに巻いてあるフィルムは、それ自体はリサイクルできる素材でも、ボトル本体とは種類が違う。再生する前に分けなきゃいけなくて、その手間がとんでもなく大きい 7. 海外の名無しさん(>>6への返信) さらに言うと、再生したプラスチックは、もう一度はリサイクルできない形になることが多い。ガラスやアルミと違って、プラスチックは繰り返せる回数に限りがあって、最後はごみになる 8. 海外の名無しさん(>>7への返信) ガラスと、とくにアルミはその点で優秀だよね。ほぼエネルギーをかけるだけで新品同様に戻せる。プラスチックは再生の工程を通すたびに質が落ちていく 9. 海外の名無しさん(>>8への返信) プラスチックも、化学的に分解して原料の状態まで戻すこと自体はできるんだよ。問題は、それにエネルギーが大量に要ること。熱で分解する方法は何十年も前から知られているけど、原油を汲み上げて精製するよりもエネルギーを食ってしまう 10. 海外の名無しさん(>>8への返信) だから自分は、コーラを買うときに缶とペットボトルを選べるなら、必ず缶のほうを買うようにしてる。アルミならちゃんとリサイクルされるからね 11. 海外の名無しさん 要するに、プラスチックはリサイクルできるものだと、みんな誰かにうまく信じ込まされてたってことでしょ 12. 海外の名無しさん(>>11への返信) リサイクルできるプラスチックはたくさんあるよ。やっていないのは、やらないほうが安いからであって、技術的にできないからじゃない 13. 海外の名無しさん(>>12への返信) 言ってくれてよかった。ネットだと「リサイクルなんて全部インチキ」という話にすぐ持っていかれがちだから 14. 海外の名無しさん(>>13への返信) でもさ、回収箱に入れればリサイクルされると誰もが教わってきたのに、実際には埋め立て地に行っていたのだとしたら、それはやっぱり騙されてたことにならない? 15. 海外の名無しさん(>>12への返信) 用途によっては、もう再生材のほうが安いよ。自分の勤め先は、再生プラスチックを米国でも指折りの量で使っている会社で、水道まわりのインフラ部品に作り替えてる。リサイクルにまだ課題が多いのは確かだけど、すでにきちんとやれている現場もある。それに「プラスチック」とひとくくりに言っても中身は種類ごとにまるで別物で、再生しやすさも違う。あの番号があるのはそのためなんだ 16. 海外の名無しさん 環境にやさしいと見せかける宣伝としては、史上最大級の成功例だと思う。正しい箱に入れさえすればプラスチックはリサイクルされるんだと、何十年も思い込まされてきたんだから 17. 海外の名無しさん(>>16への返信) 一時期は本当にリサイクルされてたんだよ。選別も洗浄も再生も、ごみごと中国に送ってやってもらっていたから。それが止まってからは、行き場をなくして埋め立てに回る分が一気に増えたと聞く ※ 中国は2018年1月、生活ごみ由来の廃プラスチックなどの輸入を禁止した。 18. 海外の名無しさん(>>16への返信) リサイクル施設で設備の保守の仕事をしていた時期がある。やり方は施設ごとに全然違うよ。資源ごみを分けずにまとめて集める方式のところは、選別できるものだけ選別して、残りのかなりの量が埋め立てに行く。レジ袋も発泡スチロールも、きれいなガラスも、リサイクル自体はできる。ただ、たいてい汚れているか、機械を壊すかで、施設には嫌がられるんだ。当時よくリサイクルされていたのは、紙、段ボール、スチール缶、アルミ缶、飲料のボトルあたり。結局のところ、買い手がつかないものはリサイクルされない。何年か前の話だから、今は変わっているかもしれないけど 19. 海外の名無しさん 個人的にいちばん笑ったのは、どの番号がどのプラスチックなのかを正式に定めた規格書が、数十ドル払ってダウンロードする有料のPDFだってこと 20. 海外の名無しさん(>>19への返信) 規格の世界へようこそ。最近、試験で架空の機械を設計して、欧州向けの安全認証(CEマーク)の書類を書く課題が出たんだけど、ISO規格を10個くらい、確かめもせずに「準拠しています」と書くしかなかった。本当に合っているか確かめようとしたら、規格書を買うだけで数千ドルかかるから 21. 海外の名無しさん(>>20への返信) さすがにそれは言いすぎかな。無料で使える国際規格もたくさんあって、自分は仕事で普通に使ってるよ 22. 海外の名無しさん プラスチックのリサイクルって、使う量そのものを減らすという本筋から目をそらすための方便になってる気がするんだよね 23. 海外の名無しさん(>>22への返信) 3つのRのうち、最初の2つが忘れられがちなんだよ。リデュース(減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル。この並びは、そのまま大事な順番でもある。ガラス瓶だって、溶かして作り直すより、洗ってそのまま使い回すほうがいい 24. 海外の名無しさん 「ウィッシュサイクリング」って言葉があるんだよね。リサイクルできるか分からないけど、できたらいいなと願いを込めて回収箱に入れてしまうこと。自分はまさにそれで、油の染みたピザの箱を回収箱に入れたら、回収の人に注意書きを貼られたことがある 25. 海外の名無しさん(>>24への返信) うちはヨーグルトの容器を毎回きれいに洗って回収に出してたのに、市のサイトをちゃんと読んでみたら、回収対象じゃない番号だった。10年分の水道代を返してほしい まとめ 容器の三角マークと数字は、プラスチックの種類を示す「樹脂識別コード」で、リサイクルできる印ではない。リサイクルされるかは、樹脂の種類と地域の仕組みしだいだ。コメント欄は「何十年も信じてた」という驚きに始まり、リサイクルは見せかけだったのか、機能している現場もあるのかという議論を経て、規格書が有料という脱線まで広がった。日本のマークは分別のための別制度なので、出し方は自治体のルールで確かめたい。 元ソース: 樹脂識別マークはリサイクルマークではなく、そのプラスチックがリサイクルできるという意味でもないと知った。 The post 「容器の三角マークの数字は、リサイクルできる印ではなかった」1988年に米国の業界団体が作った”樹脂の番号”の正体とは? 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